【雑感】2019年J2リーグ 第34節 対柏レイソル~やりたいサッカーを再現される~

柏レイソル 3-0 東京ヴェルディ

完敗だった・・・予想とおりオルンガの高さにやられた。永井監督にとって現役時代の恩師ネルシーニョ監督との楽しみな一戦であっただろうが、個の力の差を見せつけられただけではなく、組織としてのプレーの質でも大きな差を痛感する結果となった。ヴェルディがやりたいサッカーをものの見事に再現したと思う柏のサッカーとはどんなものだったのかその差を比較しつつこの試合を振り返ってみたい。

スタメン

 前節大宮相手に0-2と完敗を喫したヴェルディは怪我人の離脱が止まらない。ジャイルトンパライバ、レアンドロ、井上潮音の3トップ全員が負傷のため欠場して小池、河野広貴、新井の3トップと苦しい台所事情。システムはいつもどおりの1442。かつて柏の主将を務め数多くのタイトルに貢献してきた近藤にとっては凱旋試合となる。一方の柏、シーズン序盤こそ躓いたものの十分すぎる選手層が徐々に力を発揮して連勝を重ね、単独首位に躍り出てJ1復帰目前に迫っている。前節愛媛戦からはボランチ小林に代えて大谷がスタメン起用され、ここのところ不動になっている中盤Wボランチの1442システム。

守り方の違いが影響する両チームの攻撃

 試合序盤から攻撃の主導権を取ろうとしたのヴェルディだった。最終ラインからボールを丁寧に繋ぎ、全体を押し上げながらフィニッシュを目指す。ボール非保持時の柏は2トップオルンガと江坂が縦関係(オルンガが2CB、江坂が山本理仁をマーク)、SHクリスティアーノとサヴィオは奈良輪とクレビーニョ、DH大谷と三原は梶川と森田晃樹へプレスをかけてしっかりと人に突く守備を見せる。2CBにオルンガ1枚と数的優位により内田がボールを持ち運ぶ場面が何回も見られたが理仁には江坂がマンツーマンすることで中央は封じられて、サイドへ誘導される仕組みになっていた。

 左ワイドに入った新井が積極的に仕掛け、攻撃の糸口を見出そうとするがPA付近にしっかりとブロックを敷かれ中へ進入出来ない。高い位置まで上がった奈良輪、クレビーニョがミドルシュートを放つが枠外。右サイドの小池がマッチアップする古賀を振り切りクロスを上げようとするが、ストライカー不在の穴が大きくPA内で迫力が出ない。20分、クレビーニョのクロスから相手クリアがPA内にこぼれ、広貴がトラップから反転シュートを放つがGK中村の好守に阻まれ得点を奪えない。

 対する柏はヴェルディのボール非保持時のシステムをよく理解した上で攻撃を仕掛ける。右ワイドの小池が下りてSH化する14422であるが、トップの広貴と新井の両者にはプレスやパスコースの制限といったビルドアップをする相手選手に脅威を与えるプレーがあまり見られず、柏最終ライン+ボランチへのプレスは無力されており2対6の状況になる。ここでWボランチが縦関係になる。大谷がするすると自由な立ち位置を取りはじめヴェルディの守備4-4の間に入る。三原は引き気味になることで、ボールを受けること、クリスティアーノの守備軽減、ネガトラ時の守備と3役を担えた。前線2トップ+2SHが圧倒的な個を全面的に攻撃を仕掛けるが、ヴェルディ守備陣も集中を切らさず、ゴールを割らさない展開。しかし、守備構造の違いが徐々に試合の流れを傾ける。主導権を手にしたのは柏だった。守備時2トップ広貴と新井の動きが効果的ではないため柏がセカンドボール回収、すきあれば最終ラインの攻撃参加とだんだんと押し込み攻撃ターンが増えていく。ヴェルディ4-4の守備ブロックがコンパクトであることから両サイドを大きく揺さぶり特に右サイドのクリスティアーノと瀬川からの攻撃が牙をむき始める。

25分ごろからCKの機会が増えてくる。先制点も試合前の予感通り、CKからだった。28分、サヴィオの蹴ったボールにオルンガがGK上福元を超える脅威的なジャンプから打点の高いヘディングシュートを決めて柏が先制する。

個の強さを見せ始めて・・・

 クリスティアーノがマッチアップする奈良輪の執拗なマークを避けるように左サイドに流れてくることが増えた。従来左サイドのサヴィオ、既述したように気が利くポジショニングを見せる大谷も関与することでクレビーニョのサイドに狙いを絞る。37分、ボール奪取してクリスティアーノが右サイドへ大きく展開、走り込んだ瀬川がダイレクトでクロスを入れて近藤がクリアしようとするところを後ろからオルンガが長い足を伸ばしてワンタッチボレーを決めて柏が追加点を挙げる。前半終了間際に小池がサイドを切れ込んで深い位置まで抉るものの中で合わせられず柏が2点リードでハーフタイムを迎える。

相手を見てサッカーをすることを体現化する柏

 リードする展開になった柏はまるで前節の大宮のようにブロックを敷き守備を固めながら追加点を狙う。ヴェルディは前半同様にボール保持して全体的に高い位置を取りながら崩すサッカーを試みる。江坂のマークを受ける理仁はたまらず中央を離れて左右から攻撃のタクトを振るう。フロントボランチ梶川と晃樹が高い位置をとり中盤がガラ空きになりネガトラ時のピンチを招きやすくなるばかりであった。試合後の柏選手たちのコメントにもあったが、ヴェルディは裏を狙わずにショートパスで崩そうとすることが多く守る側としては前向きな守備だけで済んだこともあり容易であったかもしれない。両サイドが高い位置をとって、2CBしか残らない傾向に強いにあることも織り込み済みでボール奪取したら前線のスペースを使うという戦術も機能した。

システムを変えつつ真っ向勝負を挑むものの

 被カウンターによって長い距離を走らせられるヴェルディの選手たちは60分ごろから足が止まり始める。怪我から復帰した若狭、平、リヨンジを投入してシステムを1325へ変更して攻撃的に出る。フリーマンの役割をヨンジが務めてサイドと絡みつつ反撃を目指す意図があった。持ち前のフィジカルを活かして強引にでもボールキープ出来るヨンジのおかげで陣地回復しつつ、右からのクロスには小池が飛び込み、左の奈良輪からのクロスにPA内のヨンジへ決定的なパスが渡るといったゴールへ迫る場面が増えた。

 あと一歩のところまで行きながらもゴールをこじ開けられず、80分、ヴェルディのCKからボールを奪い途中出場のサントスがドリブルで運び、フリーのクリスティアーノへパス、GK上福元の動きを見て冷静に決めて3点差勝負あり。その後、ヴェルディはCKのチャンスから若狭のヘディングシュートを小池が詰めてネットを揺らすもオフサイドで最後まで得点を奪えず0-3の完敗となった。

まとめ

 結果としては前節大宮戦と同じようなやられ方をして負けた。改善しようとしているとは思いたいが、なかなかピッチで表現が出来ていないという風に捉えておきたい。長所を伸ばすことも大事だが、短所をゼロまで引き上げることをしない限り、ずっと短所を突かれることになる。怪我人が少なくベストに近いメンバーで戦っていれば、局面で勝ることもありまた違った展開になっていたかもしれないが、戦術理解度・遂行力が柏の個々の選手の方が上手であった印象である。前回のまとめで書いたレアンドロ不在によるフリーマンはまるで機能しなかった(誰でも簡単に通用するほどJ2も甘くない)。また、上記でも触れたが、柏の選手たちの試合後コメントがすべてを物語っているように思えた。フロントボランチとフリーマンはPA横幅に制限したプレーをすることでボールサイドへの密集の解消、相手DFの背後を取る動き、ボールを失った後の取り戻し方やボランチやサイドアタッカーの片側残しでの立ち位置の見直しでファーストディフェンダーの明確化、ボール非保持時の相手最終ラインへのプレッシャーのかけ方など約束事を作ることが次の段階としては求められ、このクラブに根付く深刻な課題との戦いにもなる。