【雑感】2020年J2リーグ 第34節 対ザスパクサツ群馬~完勝劇~

東京ヴェルディ 3-0 ザスパクサツ群馬

 90分通してみると、ほぼワンサイドゲームになった。立ち上がりこそ群馬にチャンスがあったが時間が経つにつれて上手く攻撃を仕掛けていき、相手のミスにも漬け込み3得点を挙げて前半戦のリベンジを果たす。

スタメン

 前節・京都に試合終了間際の得点で7試合ぶりの勝利を挙げたヴェルディ。左ワイドに山下起用された以外の10名は連戦だが、そのままスタメンに名を連ねる。
 一方の群馬は前節・金沢戦から3枚変更して臨む。昨年までヴェルディに在籍していた内田がDHでスタメン。期限付き移籍の林は契約上出場不可のためベンチ外となった。

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うまく嵌まったポジティブトランジション

 この日、ヴェルディの両翼に起用されたのは小池と山下だった。スピードを活かしたサイド突破からのチャンスメイクを狙うのは、まるで北九州戦のようだった。

 群馬のボール保持時、非保持時のシステムを踏まえた上で、ヴェルディの攻撃を考えていく。

 群馬は基本的にSHとSBを絡めたサイド攻撃が主になる。ボール保持時にSB舩津と小島はDHと横並びあるいはそれ以上高い位置を取り最終ラインには2CBのみが残る。ここにDH内田や岩上がサポートに加わったり、トップの大前が下がってきて組み立てに参加する。そこから右へ左へ展開してサイド攻撃にトップの選手がフィニッシュする攻撃が多い。この形は前回対戦時と同じような形であり、その時は大前を上手く捕まえきれず、徐々にプレー精度が上がってきた結果3アシストと圧倒的なパフォーマンスをされて逆転負けを喫した。

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 立ち上がり3分、右サイドからボールを繋ぎ、中央の大前へ。大前は左サイドへ展開して最後は加藤がPA内へ走り込みシュートを放つもマテウスに防がれる。決定的な形を作るも決めきることが出来なかった。ここが決まっていれば、また違った展開になっていたかもしれない。

 群馬の決定機を防いだヴェルディは相手の動きを見ながら、次第に主導権を掴む。上述のような攻撃に対して、ヴェルディは1442で守り、ボールを動かす群馬に速いプレスをかけてサイドへ追い込んでいく。例えば、端戸が岡村へプレスをかけてサイドへ誘導していくと川上には左SH化した山下、舩津には福村が高い位置まで縦スライドしてプレスをかける。田中には井出とプレスバックした山下が挟み込むと言ったようにハイプレスが効果的であった。

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 一旦、ボールを落ち着かせてビルドアップに転じることもあった。基本的には若狭、高橋祥平、平が最終ライン構成して左SB福村は状況に応じて高い位置を取ったり、下りてきて4バックになる。一列前は藤田譲瑠チマ+佐藤優平もしくは井出で2枚が並ぶことが多かった。これに対して群馬は14132でプレッシングをかける(DH内田と岩上は縦関係)。2トップ大前と青木が2CBへ、2SH田中と加藤が2SBへプレス、内田がDHへといった形であった。しかし、群馬2DHが縦関係になっていたことで中盤が2対3と数的不利になりヴェルディ中盤3枚の誰かが楽にボールを持てる場面が目立ち、フリーな状態で最前線3枚へパスが出来た。

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 最前線の3枚は群馬最終ラインが高ければ、空いたスペースを突いてそのままフィニッシュまで持ち込み、低ければサイドでボールを受けてクロスやカットインシュートを魅せる。
 クロスを上げる時はだいたいサイド深い位置まで抉り、群馬最終ラインと中盤の間にマイナスのボールを入れる。上手く行かなくても二次攻撃でミドルシュートを放ちフィニッシュする攻撃が多く見られた。

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 先制点の場面、中央から福村が思い切りよくミドルシュートを放ちそのこぼれ球をヴェルディが拾い、一度後方まで戻して再び組み立てて右サイドへ展開。若狭はタッチライン際に立ち、幅を取り、SB小島の裏へ抜け出した小池へスルーパス。小池は折り返しのグラウンダーのクロスを入れて最後はファーサイドから山下が中へ切れ込みながら右足でシュートを決める。

 見事に先制点を挙げたヴェルディはその後も攻撃の手を緩めず、何度も群馬ゴールへ迫ると、40分に思わぬ形で追加点が入る。
 小池が裏抜けする形で飛び出すも川上が清水へバックパス。清水は味方DHへパスを通そうとしたところ、端戸がパスコースを読んでおりボールカットしてこのまま清水との1対1を冷静に決めて追加点。端戸はこの直後に足を痛めたことにより大事を取って井上潮音と交代する。

ジョエルの成長が止まらない

 前半を2-0でリードしたヴェルディは後半開始から優平に代えて山本理仁を投入してそのままの位置に入る。 
 前半から継続する形でボールを持てたヴェルディ、特にジョエルは状況を上手く見極めてドリブルで持ち運んでからのパスやダイレクトパスという判断が良く、加えてこの日はパス精度が抜群に優れており右へ左へ縦へボールを供給していき、攻撃のかじ取りをしていく。2点ビハインドの群馬が敵陣へ入っていくことも増えて、間延びすることで前半以上にスペースが生まれると、サイドを深く抉ってクロスを上げるサイド攻撃に加えて、ジョエルの縦パスに抜け出してシュートへ持ち込む場面が出てくる。パススピード、コントロールと緩急強弱をつけたジョエルのプレーは圧巻であった。

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 群馬は3枚替えなどで人と配置を替えて反撃を試みるが、精度を欠き、なかなか脅威を与えられない。
 70分過ぎ、左サイドから山下がクロスを上げてファーで理仁が折り返すとPA内で小池と清水が競ったこぼれ球が潮音へ落ちて来て、豪快に左足でボレーシュートを決めて3点目を挙げる。

 その後、森田晃樹、松橋優安を投入して最後まで追加点を目指して攻撃的なプレーを続けたヴェルディが前回対戦の雪辱を果たす3-0完勝で2連勝を飾った。

まとめ

 相手のミスを逃さずに確りと得点を挙げることが大量得点差での勝利へ繋がっただろう。群馬選手たちの立ち位置をよく見極めて冷静にプレーが出来ていた。両翼に起用された小池、山下も期待通りの活躍を魅せて勝利に貢献と監督も選手も手ごたえがあった試合だっただろう。
 守備陣も一方的な戦いになりながらも最後まで集中力を切らさずに完封して12戦ぶりの完封勝利。
 ボール支配率は60%くらいと永井監督が日頃口にする数字には届かなったが、ある程度は相手にボール持たせることはカウンターにも繋がり、攻撃の幅が広がることで得点力も向上するのでは無いだろうか。前節の久しぶりの勝利からこれで2連勝となり、連戦最後を良い形で締めくくることが出来た。