【雑感】2022年J2リーグ 第26節 対大宮アルディージャ~見えてきた城福サッカーの骨格~

東京ヴェルディ 2-2 大宮アルディージャ

 主力選手を大幅に欠く状況の中で行われた一戦。逆転を許し劣勢になるも何とか追いついてドロー。選手と配置を試合中に頻繁に変えてやり繰りするなかで見えてきた城福サッカーの定義を考えていきたい。

スタメン

 ヴェルディは前節・栃木に1-0で勝利。2連勝中であるがコロナ陽性判定などで離脱者が多く6名変更して臨む。システムは14123。
 一方の大宮は前節・岡山に2-4で敗戦。7名を入れ替えて臨み、右SB貫はJリーグデビューとなる。こちらのシステムは相馬サッカーの代名詞である1442。古巣対戦になった泉澤はベンチスタートになる。

前半

 コロナ陽性判定、怪我人と離脱者続出のヴェルディ。スタメン、ベンチのメンバー構成が苦しく、左ワイドには本職SB山口が起用されマテウス、ンドカ、加藤弘堅、佐藤凌我と言ったセンターラインの主軸は全員ベンチ外とかなり苦しい台所事情である。

 立ち上がり、大宮がアバウトなボールを蹴り入れて2CB馬場晴也と谷口栄斗の背後を狙っていく。5分、山口のプレスが曖昧になり貫からのロングボールに抜け出した富山がシュート、こぼれ球を奥抜が詰めるもいずれも高木和がファインセーブで防ぐ。決まっていたらこの日の流れは決まってしまっていたかもしれないくらい大ピンチに久しぶりの出場となった高木和がビッグプレーが対抗。

 いきなりピンチを招いたヴェルディ。アンカーに入る西谷亮に対して富山と菊地がパスコースを消して大山と栗本が身体を寄せて潰しにかかり中央を封鎖されることでショートパスを繋ぐ本来のリズムが作れない。

 大宮は相馬色が出るように選手を密集させて狭く守る傾向は変わらず、ヴェルディは中がダメならばと外循環のパスとロングボールでのサイドチェンジと1列2列を超すパスでピッチを広く使うようになる。そうすることで両翼の小池と山口がビルドアップの出口になってフリーでボールを受けると仕掛ける場面が出てきて、大宮陣地に入って行けるようになる。シュートこそないもののサイド抉る攻撃が出来始める。

 左右からの攻撃のうち、次第に梶川と奈良輪がハーフスペースか大外を取ってボールを収めることで山口がスピードを活かした仕掛けに迫力が出て左サイドの攻撃にリズムが生まれてくる。

 すると、16分に試合が動く。大外で山口がボールを受けると梶川との連携から抜け出し速いクロスを入れると河村がダイビングヘッドで合わせてヴェルディが先制する。

 先制したヴェルディがしばらくは主導権を握る時間帯になる。ボールを持つと選手を密集させ、フリーになっているサイドへ展開する。サイドからのクロス、仕掛けで追加点を目指すが、ミスが増えて行く。一方の大宮もボールを持ってもミスが出て、蒸し暑さもあってからか試合の強度が落ちて行く。

 大宮がボールを持ち始めると1442で守るヴェルディの守備強度が落ちて行きじわじわと攻め込まれていく。小池と久しぶりの出場になった山口のSHのプレス強度の甘さとポジショニングの曖昧さが目立ち、大宮のサイドからの攻撃を受け始める。

 この状況を受けてたまらず河村と山口の位置変更したヴェルディ。前線の守備は捨ててもサイドをやられまいと河村の走力を活かす采配を見せる。30分すぎから押し込まれながらも何とかゼロで終えて前半を1点リードで折り返す。

後半

 ハーフタイム明け、ヴェルディは山口と小池に代えて宮本と新井を投入する。アシストを記録した山口は久しぶりの出場ということもあり45分間のプレーで退いた。守備時は試合勘の部分で少し後手に回ることがあったが、攻撃面では持ち前の思いっきりの良さが表現されており次回の出番も期待したいパフォーマンスであった。

 新井が左、宮本が右ワイドに入り守備強度を落とさないメンバー交代をするあたりは城福監督による前線の選手の物差しが守備プレッシングが出来る選手であることがうかがい知れる。

 ドリブル、クロス本数がリーグ上位の新井に質的優位を作ってもらいたいところであるが、ボールが足元に落ち着かない場面が続きなかなかヴェルディが思うようなサッカーが出来ないでいると、自陣でのミスから相手にボールを渡し、ピンチが続く。一旦は収まったかと思ったが、クリアが曖昧になり、高い位置で奪われるとサイドを崩されて最後は富山に合わせられ試合は振り出しに戻る。

 仕掛けられる選手が新井のみという状況もあり、新井頼みになるヴェルディ。左サイドからのクロスでチャンスメイクがあるもフィニッシュまでは行かず、同点で勢いづく大宮が左SH奥抜の仕掛けでゴールに迫る。

 ヴェルディは西谷亮に代えて加藤蓮を投入。中盤底に森田晃樹、IHに宮本と梶川を配置。加藤蓮が左、新井が右ワイドに回る。攻撃陣の駒不足が否めない構成になってしまっている。

 中盤底でタクトを振るう森田晃樹。左右へ散らしてサイド攻撃を試みるもクロス精度と中の選手の迫力に欠けたことでチャンスにはならない。本職ではない晃樹を中盤底に置いたことは諸刃の剣であり、ピッチ中央でのボールを大山と栗本にセカンドボール回収されて前を向いてプレーすることを許して次第に悪い流れが出始めた。

 大宮は山田と奥抜に代えて西村と泉澤をそのまま同じ位置に投入。泉澤はファーストプレーでの仕掛けからCK獲得。このCKをニアで富山が合わせて大宮が逆転する。それにしても富山にはしょっちゅうやられている印象がある。

 逆転を許したヴェルディは飲水タイム明けにこちらもJリーグデビューとなった稲見が奈良輪に代わってIHに入り、宮本が右SB、深澤大輝が左SBへ回る。明治大卒の稲見は期待されながらも怪我に泣かされシーズンの半分を過ぎてからようやくデビューを飾る。当たり負けしない屈強な身体とボックストゥボックスの動きが出来るプレーは現代サッカーを象徴するスタイルで今後どう化けるか楽しみなものであった。

 限られた戦力で選手を変え、配置を替えなんとか追いつきたいヴェルディは最終盤にCB長身の佐古真礼を最前線に入れるパワープレーに出る。昨季所属していた藤枝で起用されていたがヴェルディでは初めての起用になる。さすがに190㌢超えの高さは迫力があり、何とか同点にと祈るばかりであった。90分過ぎ、馬場晴也が最終ラインから右の河村へ斜めのパスを入れると河村が最後の力を振り絞り2名をドリブル突破してクロスを上げると、ファーへ流れて新井のもとへ。新井がふわりと浮かしたボールに佐古真礼とともに飛び込んだ加藤蓮がヘディングシュートを叩き込み、再び同点に。試合は2-2の引き分けでタイムアップ。離脱者続出で苦しい状況であるがヴェルディは勝点1を持ち帰ることに成功した。

まとめ

 主軸選手を多く欠き試合を通しても厳しいやり繰りがあった。先制しながらもというゲーム運びや失点場面などの守備面での課題は目立つもシーズンを振り返った時にここで負けずに勝点1を挙げれたことは大きな意味を持つだろう。限られた選手の起用法を見て行くと、前線の選手たちには守備力を要求していることが判る。アスリート能力の高さ、献身性、守備力・プレッシングが必須要素になるだろう。
 最前線で2戦連続スタメンになった河村はこの日1得点。最後まで走り抜き大きくチームに貢献し、城福サッカーにマッチする選手の1人だろう。ドリブル突破をする場面も見られてプロの強度に慣れてきて心身の充実がパフォーマンスに見られてきた。今後も活躍に期待したいがこの状況であるから怪我だけには気を付けてもらいたい。
 天皇杯の延期が発表され、間隔が一時的に空くものの、再びの過密日程にチーム一丸で乗り越えていってもらいたい。