【雑感】2022年J2リーグ 第41節 対アルビレックス新潟~解き方を変えた再試験~

東京ヴェルディ 1-0 アルビレックス新潟

 1万人を超える観衆を集めた一戦、試合立ち上がりから集中力高く、プレー強度維持して首位・新潟を見事に撃破。J1昇格を決めた新潟は敗れはしたもののその練度は高く、ヴェルディがどう立ち向かっていったか振り返ってみたい。

スタメン

 前節・岩手を2-0で下し、目下4連勝中のヴェルディ。この日のスタメン11名は前節と同じ顔触れ。控えには主将の平と石浦が復帰した。
 一方の新潟は前節・仙台に3-0で勝利して6年ぶりのJ1昇格を果たす。この試合に勝てばJ2優勝となり、前節からトーマスと堀米の2名を入れ替えて臨む。

前半

 秋晴れにも恵まれ、4連勝のヴェルディ対J1昇格を決めてJ2優勝のかかる新潟という好調同士の一戦は1万人を超える観衆を集め、緊張感も張り詰める良い雰囲気で迎える。

 エネルギー溢れ、鋭い前への推進力を見せたのはヴェルディだった。新潟からボール奪取すると、河村やバスケスバイロンの力強い走力を活かし一気に敵陣へ入りこみ積極果敢にミドルシュートを放つ。J2優勝のかかる新潟に挨拶代わりに、高いアスリート能力を見せて行く。

 アルベル前監督時代から築き上げたパスサッカーでJ1昇格を決めた新潟は開始早々からシュートを浴びるものの確かな自信を胸に90分をかけて試合を仕留めようとするかのように緩急をつけてじわりじわりと主導権を握って行く。

 ボール保持時、自陣では5レーンを意識した立ち位置を取り、敵陣へ侵入すると選手同士の距離感を近づけて連動性の伴ったパスワークで崩して行く攻撃を見せる。距離感が近いことでボールを失った後も複数名で挟み込み即時奪回出来る強み、徹底さが仕込まれておりこれがJ1昇格の所以であるのだろう。

 この日CBに入ったトーマスと千葉に加えてGK小島がPA外まで上がり横並びになる形も見せて数的優位を作ってビルドアップを行なう。ヴェルディは1442で構え、2トップ河村と染野がトーマスと千葉を、2DH森田晃樹と馬場晴也が高と島田をみる形を取る。CBがボールを持つと、SB藤原と堀米が大外へ開き大外に構えるSH三戸と小見が内へ絞る動きを見せてDH高と島田が捕まえられていても斜めと縦のパスコースを確保する。1トップ谷口は前線で張りトップ下の伊藤が左ハーフスペース周辺を浮遊する。

 右サイドは奈良輪が小見、バイロンが堀米をついていたが左で梶川が藤原と三戸のどちらをみるのか曖昧な部分あり走らせてる印象があった。三戸が加藤蓮のマークを避けるように大胆に内へ絞ることもその要因だったのかもしれない。左右に揺さぶりながらヴェルディのプレスとマークがズレたタイミングで縦パスを通していく。

 縦パスを通されて新潟が敵陣へ入っていくと選手たちの距離感を近づけてコンビネーションで崩していく。ただ、ヴェルディも馬場中心にフィジカルを活かしてボールホルダーへ身体を寄せてボール奪取する場面も多く、フィジカル的な優位性を見せる。ドリブルを積極的に仕掛ける小見に対しては年齢がひと回り以上も上の奈良輪がベテランらしい予測の速さと球際の強さを披露しとても見応えあるマッチアップであった。

 一方でヴェルディがボールを握った時はSBは特に高い位置を取らずに4バックのままで横幅を使う。新潟は伊藤を谷口と横並びで1442で守っていくもボールホルダーへ走っていくような追い方で特にパスコースを絞るようなものではなかった。後列の選手も連動してプレスするわけでもなかったため馬場晴也、森田晃樹の2DHはフリーでボールを受けて、染野も下がってボールを貰うことが出来た。そんなに上手い守り方では無くボールを持たれるとシュートまで持って行かれる展開であった。ヴェルディはここ最近で上手く機能しているハーフスペース攻略をこの日もみせて大外を使ってからインナーラップの形があった。

 ヴェルディは敵陣でボールを回すこともありチャンスを作れそうなことも多々あったが、パスミスやトラップミスで新潟へボールを渡す勿体ないことが続いた。

 データが物語るように新潟がボールを握る時間帯が多く、セットしてから最終ラインから繋ぐ。島田か高がCB間に下りて3バック化するとヴェルディの守り方も変化をつけた。はじめのうちは馬場と森田の2DHが横並びであったがこれでは伊藤がノーマークになってしまい、谷口栄斗が縦スライドで対応することもあったが2DHを縦関係にして伊藤を潰しに行くことが増えて行った。新潟がバックパスをするとンドカ中心にヴェルディ最終ラインは素早く押し上げて高いライン設定をして集中力高いプレーをしていたことが目についた。

 新潟にボールを持たれることが多かったが、カウンターから新潟最終ラインを下げて空いたスペース、こぼれ球を馬場や梶川、奈良輪が思いっきりよくミドルシュートを打って行き得点の可能性はヴェルディの方が感じさせる前半になった。

後半

 お互いにメンバー交代無しで後半を迎える。新潟の2列目三戸、伊藤、小見が裏抜け、斜めの動きを増やしていき人に付く守備をするヴェルディの選手たちのマークを混乱させていき、攻め込む。

 左サイドからのクロスに藤原がヘディングシュートを打つもマテウスが足で止めるファインセーブを見せる。このビッグセーブで新潟の波状攻撃を終わらせた。

 ここでヴェルディは梶川とバイロンに代えて平と佐藤凌我を投入する。平をCBへ入れて谷口栄斗を左SB、三戸に押し込まれていた左サイドは加藤蓮を一列上げて推進力を相手に意識させることで盛り返す狙いがあった。佐藤凌我はトップに入って河村が右SHへ回るここ数試合ではお馴染みになっているオプションを見せる。

 佐藤凌我には前線からの守備の特徴もあり、走り回り追い込むことでスタンドの雰囲気を変えて再びヴェルディが新潟陣地でプレーする時間帯を増やしていく。流れを手繰り寄せたヴェルディは左サイドからCKを獲得。蹴る前にンドカと森田が打ち合わせをして時間をかけて行なう。森田がインスイングで入れたボールを小島が上手く処理できず混戦からのこぼれ球を染野が押し込んで先制する。ヴェルディは4戦連続でCKから得点を挙げて、染野は3戦連発と好調である。

 先制点を挙げてスタジアムも熱狂に溢れ、選手たちの出足もさらに良くなる。新潟の縦パスに対して身体を寄せてボール奪取して縦に速いカウンターを見せてフィジカルの優位性を見せる。

 対する新潟は64分、縦パスに抜け出した小見がマテウスと1対1を迎えるも豪快にふかしてしまい超決定機を外してしまう。ヴェルディは加藤蓮に代えて加藤弘堅を入れてDHに起用して森田晃樹をSHへ移動させる。中央でのフィジカル的な強さを維持ましてや強度を増して試合を優勢に進めて行く。

 左サイドで森田晃樹、加藤弘堅ら絡み押し込む場面を見せながらも追加点を挙げるには至らない。J2優勝へ2点が必要な新潟はメンバーを代えて猛攻を見せるもンドカを中心にクロスボールを冷静に処理してPA内で決定的なシュートチャンスを与えない。

 最後まで高い集中力を見せたヴェルディがこのまま逃げ切り5連勝を果たした。

まとめ

 ここ数回の対戦では練度の差を見せつけられ大敗を繰り返していた新潟を相手に、高い集中力とフィジカルの強さを見せて完封勝利を果たした。相手を分析して粘り強くプレーしてここのところ好調のセットプレーで見事に仕留めた。これまでのような手数をかけてボールを回すような戦い方で真っ向勝負していたらどうなっていたことかと恐ろしい部分がある。
 シーズン最終盤になり組織力が上がってきたこと、メンバーの復帰で手持ちの駒の豊富さもありチーム力はだいぶ上がってきたことは安心して見ていられる強みでもある。監督のベンチワークも冴えて先制逃げ切りで勝利を掴み取った。パスサッカーの新潟をフィジカルで押し切った部分は現代の欧州サッカーにも通ずるように感じ、これがこれからのヴェルディのサッカーの基礎になっていくのだろう。他会場の結果によって昇格PO進出の夢は途絶えてしまったが、シーズン最終戦・岡山戦も勝利してよい形で締めくくって貰いたい。