【雑感】2019年J2リーグ第42節 対FC岐阜~心を込めて戦う~

東京ヴェルディ 5-1 FC岐阜

攻撃陣そろい踏みの5得点大勝でシーズン最終戦を締めくくった。なかでも小池の活躍は今季の活躍ぶりを象徴するかのようなパフォーマンスであった。そして、この日をもって現役引退する田村直也。クレビーニョとのワンツーやジャイルトンパライバへのロングフィードなどプレーのひとつひとつは、後を継ぐ若い選手たちへ丁寧かつ心を込めたメッセージだった。最終節、大勝劇になった理由を考えていきたい。

スタメン

 ここのところ勝ち点3から見放されているシーズンヴェルディは現役引退する田村直也がスタメンでCBに入る。リベロには二種登録の藤田譲瑠チマが抜擢され、控えには同じく二種登録の石浦大雅が入った。山本理仁は累積警告により出場停止。フリーマンにはレアンドロが入りキャプテンマークを巻く。システムは中盤ダイヤモンド型でいつもどおりの1442。対するFC岐阜は前節甲府に敗れて22位が確定した。前節から藤谷がスタメンに復帰してそれ以外は同じメンバー。中盤はダブルボランチの1442システムを採用。

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主導権を握るヴェルディ

 試合は一方的な展開になった。岐阜は2トップに入る馬場と川西が縦関係になることが多く14411気味であり川西が若干下がりボールを貰い組み立てる。ボール非保持時は2トップになるためヴェルディは奈良輪を残して3枚の最終ラインで数的優位を確保する。岐阜の前線からのプレッシングが効果的ではなくヴェルディの最終ラインは楽々ファーストラインを突破してセンターサークル付近までボールを運ぶ。時には2枚のCBだけで2トップの脇から持ち上がる場面が見られた。
 2分ジャイルトンパライバが左カットインしてシュートをGKビクトルにセーブされるも開始早々からジャブを打つ。中盤以後がコンパクトに守る岐阜に対して小池とパライバの両ワイドが大外でフリーになって中央突破からの展開や大きなサイドチェンジから攻撃を形成してチャンスを作る。クリアされるも岐阜の前線と中盤のスペースを初スタメン起用のリベロ・ジョエルが抜群のポジショニングで埋めることでボール奪取して二次攻撃へ転じる場面も見られた。

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 対する岐阜は川西にボールを集めてドリブル、ボールキープから攻撃を仕掛ける。10分にはドリブルシュート、そのあともポジトラ時にジョエルの周囲に生まれるスペースに川西、柳澤、村田が走り込みミドルシュートを狙っていく。

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 岐阜がゴールへ迫る場面もあったものの圧倒的に攻めるのはヴェルディだった。24分、直也がボールを運びフリーマンのレアンドロへ縦パスを通す、ワンタッチで捌いて抜け出した梶川がループシュートを放つも枠外へ。平が持ち運ぶこともありいずれも岐阜のボールホルダーへの寄せの甘さが目立つ。38分、試合が動く。低い位置から繋ぐ岐阜のボールをジョエルがカット、そのボールを拾った梶川がハーフライン付近から前線の小池へスルーパスを入れてDFを振り切りビクトルとの1対1をしっかりと決めてヴェルディが先制する。

ハーフスペースを制する

 森田晃樹、梶川がハーフスペースでうまくポジション取りすることで岐阜のSBを引きつける。そのことにより大外のパライバ、小池がフリーになってさらに攻撃に拍車がかかる。

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44分、平のヘディングクリアから晃樹がボールを持ち運び左ワイドパライバへ展開、クロスボールにPA内で飛び込んだ梶川がスルー、フリーの小池が左足で流し込みこの日2点目を挙げる。

 45分+1分、岐阜の攻撃時に自陣深い位置でボール奪取したパライバが長い距離をドリブルで運び、PA右のレアンドロへパス、パスを受けたレアンドロがしっかりとシュートを決めてあっという3点目を入れる。
 後半になっても勢いが止まらない。サイドアタッカーの奈良輪が大外~ハーフスペースをアップダウンを繰り返してさらに畳みかける。左サイドパライバ、奈良輪から攻撃を仕掛けるヴェルディに対して岐阜は前田と塚川を投入。馬場を左サイドへ回すことでポジション変更する。前田がプレッシングのスイッチになることで前線から守備が機能し始める。ヴェルディもクレビーニョに代えて佐藤優平を入れる。晃樹が右サイドへ回り、中盤の右が優平、左が梶川となる。ポジショニングの良さ、キープ力のある晃樹を右サイドに入れることでさらに攻撃力を増す狙いがあった。
 岐阜が前線からプレッシングをかけることが仇となり、DH脇にスペースが生まれる。そこを見逃さないパライバは持ち前のスピードを活かしたプレーを披露して対面する藤谷は体力の限界を迎え、三島が右SBへ下りて中島がDHに入る。

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 73分、パライバが個人技でハーフスペースを攻略してPA内の深い位置からの折り返しに小池が詰めてハットトリック達成でヴェルディがリードを4点に広げる。

 ヴェルディはレアンドロに代えてプロデビューとなる石浦大雅をピッチに投入する。キャプテンマークは引退する直也にわたった。フリーマンに優平が入り、大雅は右フロントボランチへ。
 デビューとなる大雅はいきなり才能の片りんを見せた。85分、ボールを貰った大雅はパライバへパス。パライバはドリブルで持ち上がりPA付近でカットインするタイミングで大雅が斜めに走る動きで岐阜DFを引き付けてシュートコースを開け、パライバがシュートを流し込み5点目を挙げた。
 直後の攻撃、岐阜は前田が抜け出して右サイドへ流れ、馬場のクロスに左サイドへ回った塚川がヘディングシュートを決めて1点を返す。右サイドに入った晃樹は不慣れな守備に塚川を完全に見失っていたように見えた。
 しかし、反撃はこれだけに抑えて、最終節を5-1でヴェルディが勝利を飾った。

まとめ

 岐阜の出来という部分もあるが、前線の守備が緩いのであれば最終ラインは押し上げる、コンパクトに守るのであれば大外でフリーを作るといった具合に相手を見てうまくスペースをつくことが大勝へつながった。ワイドストライカーの小池とパライバを活かすためにフロントボランチを中心にうまくデザインされた攻撃が見事にはまった。小池は今季の好調さを象徴するような活躍ぶりでハットトリックを達成し、パライバも持ち前のスピードを活かした素晴らしいパフォーマンスを見せて最終節を締めくくった。難しいシーズンになったが、引退する田村直也の花道を飾ることが出来た。