【雑感】2020年J2リーグ 第26節 対愛媛FC~鬼門の地で雪辱を晴らす~

東京ヴェルディ 4-1 愛媛FC

前回対戦時に完封負けを喰らった愛媛相手に、過去8敗と苦手意識ある鬼門・ニンジニアスタジアムでのまさかまさかの快勝劇。中2日でメンバーも入れ替えて臨んだにもかかわらずゴールラッシュになった理由を考えながら試合を振り返ってみたい。

スタメン

 前節・岡山に完封負けを喫したヴェルディは5枚入れ替えて臨む。右SBにクレビーニョ、中盤構成は山本理仁、森田晃樹、澤井直人のアカデミー卒のトライアングル、そして左ワイドには今季初スタメンとなる新井が起用。小池にとっては古巣との一戦になった。
 対する愛媛は前節・徳島との四国ダービーに敗れて最下位に沈むチーム状態。この日は西岡大志、田中、横谷、丹羽と4枚入れ替えて臨む。

画像1

守備ブロックをこじ開けるダブルフリーマン

 前回対戦時に愛媛のフルコートでのマンツーマン守備というまさかの対応に苦戦を強いられて敗北した。その時のリベンジに燃えるヴェルディイレブンがどのように挑むのかが注目された。この日の愛媛は、前回対戦時とは異なり、ボール非保持時に1442でブロックを敷く形を採用した。
 DAZN中継で試合前の注目点として、解説者からは愛媛はCBとDHのスペースをどういう風に守るのかという事を挙げていたが、この予感が当たってしまう。

 ヴェルディは、理仁と晃樹のダブルボランチ気味になり、1列前で直人と潮音がダブルフリーマンのように交互に上下動で縦関係になり愛媛守備陣の間で受けたり、斜めに走る動きでサイド攻撃をフォローする。愛媛のDHとCB付近で二人が動きまわることで相手を引き付けてスペースを作ることに成功する。

画像2

 試合はいきなり動いた。愛媛の最終ラインのクリアを丹羽が収めて横谷へバックパスをするがこのボールが大きく逸れて、ぽっかりと空いた中央のスペースにこの日、初先発した新井がボールカット。井上とのワンツーでPA内へ入っていくとファーサイドを左足で狙いすましたシュートを放ち幸先よく先制する。

 いきなり出鼻をくじかれた愛媛。ボールをしっかり握って崩す姿勢は変わらず、ボール保持するとDH森谷が最終ラインに下がり両SBが高い位置を取る。2トップ丹羽と吉田が縦関係気味になり、吉田が下りてポストになることもあり13151といったシステムを取る。これに対してヴェルディは潮音と直人の2トップ化、小池と新井がSHになる1442で守る。2トップ+ボールサイドのSHがプレス、それにDHやSBが連動して高い位置から嵌めに行く。愛媛はボール保持するものの自陣でのパス回しが多くなりなかなかシュートチャンスを作れない。

画像3

 1点リードするヴェルディはボール保持時に1424になり前線へ厚みをもたせてさらに攻撃を畳みかける。2CBの祥平と平には2トップ丹羽と吉田がマーク、理仁には森谷、晃樹には田中がマークと前から前からプレッシングをかけることでボール奪取を試みる愛媛であったが、ヴェルディはGKマテウスからクレビーニョや福村へのミドルパス、潮音や直人が下がって数的優位確保することで愛媛守備陣形を崩し、ボールを前線へ運ぶ。また、最前線右ワイドの小池がロングボールのターゲットになりボールを収めてくれることで一気に陣地回復をする。敵陣へ進入したヴェルディは小池・クレビーニョ、新井・福村の両サイドが連携から崩してクロスボール供給する場面が続く。

画像4

 新井、クレビーニョ、小池とサイドからのドリブル仕掛けでチャンスを作り、フリーマンの潮音と直人が合わせるなど攻撃の時間帯が続くなか、愛媛は長沼が23分にこの日2枚目のイエローカードを貰い、前半途中から10名で戦う苦しい展開になる。

 攻撃の手を緩めないヴェルディは継続してサイド攻撃からPA内でのシュート、こぼれ球や繋いでのミドルシュートで愛媛ゴールを脅かしていく。
 30分、CKから二次攻撃で右サイドからクレビーニョのクロスを岡本がパンチングミス、平がループ気味にヘディングで狙いポストの跳ね返りを祥平が押し込み2点目を挙げる。
 前半ATには左サイドで福村からのパスを受けた新井がドリブルでPA内深い位置まで抉りクロスを入れると、ファーサイドで待ち構える小池がヘディングシュート、これもポスト直撃するも自身がすぐに左足ボレーシュートで押し込み前半を3-0と大きくリードする。

心理状態を利用した攻撃

 予想外の大差で折り返したヴェルディは3点ビハインドで積極果敢に前がかりになる愛媛心理状況をうまく利用するかのように自陣に引き付けてスペースを作り、圧倒的に攻め込む展開が続く。

 サイド大外~ハーフレーンで上手く連携して選手がローテーションするかのように立ち位置を取り、選手の距離感やパステンポ良く崩していく攻撃が左右両サイドで見られる。上述のとおり、愛媛は背走での守備対応に追われるため、バイタルエリアに広大なスペースを与えてしまい、直人や晃樹が中央から進入して決定的なチャンスを迎える場面が目立つ。

画像5

 攻撃を仕掛けながらも4点目が奪えないまま時計の針が進み、試合の終わらせ方にモヤモヤ感が募り始める。
 試合終盤に差し掛かった85分、縦パスが途中出場の大久保へ渡るとGKとの1対1。並走してきた優平へ丁寧に横パスを入れると、落ち着いて流し込みようやく追加点を決めて試合を決定づけた。

 そのあと、後半ATに愛媛が途中出場の川村が1点を返すものの、主導権を終始握る続けたヴェルディが4-1で勝利を挙げて、前回対戦の雪辱を晴らした。

まとめ

 前節・岡山戦で為す術も無く完封負けを喫した次の試合だけあってどうやって崩していくのかということに注目した。相手のスペースをよく見極めて攻撃を仕掛けていった結果として、開始早々の得点で流れを掴み、精神的にも優位になれたことも功を奏してサイドで人数をかけた連携からの攻撃、セカンドボールを積極的にミドルシュートと猛攻を仕掛けて33本のシュート放つことが出来た。
 初スタメンとなった新井は、先制点の場面で左足でファーサイドへ流し込むシュートを決める。これまでならカットインして右足に持ち替えていくことも想像した場面であったが綺麗に左足で決めきるのは試合後の永井監督コメントのように練習の賜物なんだろうと思えた。
 中盤底でフル出場を果たした理仁も本人コメントのように、フィジカル面での成長を感じられ、着実に成長していることが窺い知れる。
 快勝したものの前半途中で相手が1名退場したこと、シュートチャンスでモノに出来なかったことも多くて(直人には1点決めて欲しかった)、この勝利で次節に勢いづくのかどうかと言われたら難しい。新井、理仁・・・と活躍した選手たちの継続した活躍がカギを握りそうだ。