【雑感】2020年J2リーグ 第22節 対ギラヴァンツ北九州~バッチリだった対策~

東京ヴェルディ 1-0 ギラヴァンツ北九州

 前半戦で圧倒的なパフォーマンスを魅せつけられた相手に、2連敗は出来ないという強い意気込みが感じられるプレーを選手たちがピッチで示してくれた。相手を上手く分析して臨んだことが窺い知れる内容を考察しつつ、試合を振り返っていきたい。

スタメン

 前節・金沢にスコアレスドローで3試合ぶりに勝ち点を挙げたヴェルディ。チームアシスト王福村が左SBで復帰。中盤底を藤田譲瑠チマ、フロントボランチに山本理仁、佐藤優平。前線はワイドに小池と山下、中央に出場停止明けの井上潮音を起用してシステムも前節から変更していつも通りの14141で臨む。
 対する北九州は前節・水戸に0-3で完敗。主軸のディサロも怪我で欠場して2トップには町野と鈴木が入り。左SB永田は契約上出場不可のため福森が務め、1442システムでスタートする。

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お株を奪うプレッシング

 1か月前のリベンジに燃えるヴェルディ、北九州対策をしっかりと練ってきたことが試合開始早々からピッチ上で表現された。

 攻守においてアグレッシブにプレーする北九州相手にボール非保持時はいつもの1442システムではなくて、1433システムにした。前線を2枚では無くて3枚にして2CB(河野、村松)とDH加藤or國分をマンツーマン気味に抑え込む。

 その代わり中盤はいつもよりも枚数を減らして3枚になっているが、サイドを捨てて中央を締めて3トップに連動する形で縦スライドや相手の縦パスをカットする狙いがあった。あとは、この日の試合会場である西が丘が他会場に比べてピッチサイズも狭く枚数を減らして多少は何とかなるという部分もあったのかもしれない。

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 前線からのプレッシングは早速効果を発揮した。高い位置でボールを奪うと小池、潮音、山下の3トップや2列目の優平、理仁が加わりショートカウンターから前半立ち上がりから何度もシュート場面を作り出す。

 北九州にボールを握らせていてもパスコースを限定するプレスや複数人で挟み込みボール奪取といった積極的なプレーで手数をかけない攻撃から良い入り方が出来た試合序盤であった。

狙うは、北九州SBの裏

 前回対戦時に苦しめられたのが、ビルドアップ時の北九州の出足鋭いプレッシングであった。基本的にボール非保持時に2トップが縦関係になる北九州。1枚はリベロの位置に入るジョエルをみて、もう1枚+SHが最終ラインへプレッシングかけながらGKマテウスにまでチャージしていく。SHのスライドに合わせるようにSBが縦スライドで1列上がる形になることが多い。

 このやり方に対して、ヴェルディは最終ラインに2CB高橋祥平と平のみ残して両SBは少し高い位置を取るようにした。(前回は2CBと2SBが横並びに近いことが多かった)

 2CBとGKにはいつものように勢い良くプレスをかけていき、特にマテウスには利き足である右足でキックをさせないようにプレスをかけていき、その結果、セーフティにタッチラインへ逃れるということもあった。

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 祥平、平はマテウスよりも低い位置へ下りることもありサポート、マテウスも素早く前線へ展開するように心がけた。積極的な北九州のプレッシングに対してヴェルディのビルドアップの出口になったのが中盤でサイドへ張ったSBとフロントボランチであった。SHのプレスに連動する形でSBも縦スライドする北九州に対して、右サイドならば若狭と理仁、左サイドならば福村、優平の2枚がセットのようになりハイボールを競りこぼれ球を拾う場面が多かった。

 ヴェルディがボールを収めると、プレスしてきた北九州SBの裏(CBの横)のスペースを上手く使う。両ワイド小池、山下は守備時も高い位置に残っているためポジトラ時のスタート位置も高くこの空いたスペースを狙い、ボールを受けると仕掛ける場面が目立った。この展開から何度もチャンスを作る。

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 22分、ヴェルディの先制点も上記の形からだった。マテウスからのミドルパスを若狭が競り、理仁が山下へ繋ぐ。敵陣へ入っていく山下が一気に運ぶと、マイナスのパスを入れる。ボールを貰ったジョエルは帰陣で形が整わない北九州守備陣の間をよくみて、PA内中央の小池へ縦パスを入れる。小池が巧みなトラップから見事な反転シュートを放ち、ゴールネットを揺らしてここまで主導権を握るヴェルディが見事に先制する。

 そのあとも敵陣でボール奪取してからショートカウンターでチャンスを迎える場面を作り、追加点を狙うヴェルディであった。

 後半も立ち上がりの5分、最終ラインから左サイドへ展開。北九州のSHとSBを引き付けると福村が裏へ走る小池へパス。CBを釣り出したことで生まれたスペースに走り込む福村。ポストになる潮音へ繋ぐと、PA内へ進入する優平へスルーパス。優平はグラウンダーで速いクロスを入れて右ワイド山下が飛び込むもわずかに合わず追加点を奪えなかった。シュートすら打てなかったが、完璧に崩した場面であった。

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2パターンの攻撃

 持ち前の攻撃サッカーの要である2DH(加藤、國分)へのマークで抑え込まれていた北九州であったが、試合が進むにつれてヴェルディの動きを見極めながら仕掛けていく。

 前半は3トップに中央3枚で締められてなかなかうまく行かなかったが、ボールを落ち着かせると、SBが高い位置を取りSHがハーフスペースに位置するいつものサッカーが出来るようになる。SBにはヴェルディSBが食いつくため、その背後に空いたスペースへSHが走り込みサイド攻撃が機能し始める。

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 フロントボランチの理仁、優平がSB裏のケアをし始めて中央のジョエルとの距離感が開いてくると今度は町野や鈴木が下りてきて中央からの崩しを見せ始める。ただ、前半はゴールを割ることが出来なかった。

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 後半になって北九州サイド選手が高い位置を取ることでヴェルディの小池と山下も引っ張られてボール非保持時に1433から1451気味に両ワイドが引くことが出てきた。すると、加藤や國分へのマークが緩くなり、自由にプレー出来る時間が増えてきた。すると、ハーフコート気味になるくらい敵陣へ進入していきSBやSHもサイド深い位置を抉り、クロスを上げたり、CKを獲得する場面が増えていく。

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 池元、椿ら攻撃的な選手を入れて攻勢を強める。ヴェルディは山下や小池、途中出場した森田晃樹、松橋優安が陣地挽回のようにボールを持ち運びカウンターを仕掛ける。最後はCB近藤を入れて中央を固めてマテウスの好セーブもあり、虎の子の1点を守り切り、見事に勝利を挙げた。

まとめ

 好調で迎えた前回対戦時にやられたことに対しての対策が上手く嵌まった一戦だった。北九州の攻守における構造をよく分析して弱点をうまく突くような配置から再現性あるプレーが何度も見られたのは監督・コーチングスタッフ、選手たちのトレーニング成果だろう。プレッシング、プレスバックの役割から潮音を最前線中央に起用した采配も的中した。守備陣も身体張ったプレーで2試合連続で完封と再び勢いを取り戻してきた。
 相手を見て、自分たちのサッカーをすることで掴んだ勝ち点3は、ここのところの不調で沈みかけていた重苦しい雰囲気を脱却するような意味を持つ。勝負の後半戦緒戦を幸先よいスタートを切れた。