【雑感】2020年J2リーグ 第35節 対レノファ山口~満点回答を魅せた端戸仁~

東京ヴェルディ 2-1 レノファ山口

 低迷する対戦相手にリードしながらも追いつかれて時計の針だけが進んでしまった。試合運びに課題を感じ始めながらも選手たちは前回の敗北へのリベンジに燃えていた。前半から何度も同じような形を作って相手を揺さぶり、試合終盤の劇的ゴールで3連勝を飾った試合を振り返ってみたい。

スタメン

前節・群馬に勝利したヴェルディは2連勝で迎える。左SBに奈良輪、左ワイドには出場停止の山下に代わって井上潮音が入る。
 一方の山口は3連敗で最下位。前節から4名入れ替えて臨む。安在、高井は古巣との一戦となる。

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前回対戦からの延長戦

 試合立ち上がりからの山口のプレーぶりを観ると、前回対戦と同じものであった。ボール非保持時に14231システムになりトップ下の池上がジョエル、DH高が優平、田中が井出へマンツーマンでマークする。4バックでビルドアップするヴェルディの中央を封じてサイドへ誘導する狙いがあった。

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 山口もボールを握り崩して得点を奪いたい志向であり、最終ラインから繋ぐことが多い。CB+高の3枚でビルドアップ形成して両SBがサイドへ張り、田中と池上が中盤といった構造である。これに対してヴェルディは端戸と優平が2トップ化で高のマークを受け渡ししながら、CBへプレッシャーをかける。SH化する小池と潮音がSBへプレスをかける守り方をしていく。

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 中盤同数でマンマークを強いられることになり、個の力が要求されていた。しかし、両チームともに中盤での技術的なミスが目立ち、ミスから相手チームへチャンスをプレゼントするかのような立ち上がりとなった。これを嫌うかのように中盤での繋ぎを省略してラフなボールを蹴り込み、ヴェルディは古巣対戦となった安在の背後を小池が狙うことが何回か見られた。対する山口も高井が左サイドでボールを収めて切れ込んでのシュートや攻撃参加してきた安在を使ってそこからのクロスといった攻撃。

 3連勝を目指すヴェルディであったが、相手のプレースピードにお付き合いするかのような悪い癖が出てしまい前半序盤の内容は決して良いものでは無かった。攻めあぐねていたヴェルディであったが、上述の通りに14231で守る山口1トップ河野に対して両CB(高橋祥平と平)が数的優位を活かしてボール持ち運んだり、フリーで縦パスを入れることで押し込んでいく。

 端戸がボールを受けてサイドへ散らす。ボールサイドで人数を偏らせると、反対サイドへ大きくボールを展開する。例えば左サイドで井出、潮音らが関わりながら人数を集めると右SB若狭が右ハーフスペースへ駆け上がり攻撃参加ということがあった。(山口SHの帰陣が遅くれていたこともある)

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 先制点は前線からの積極果敢な守備を披露していた端戸のプレーからだった。山口最終ラインからDH高へパスを繋いでトラップがわずかに大きくなったところを端戸が見逃さず、後ろからインターセプト。このボールを収めたジョエルが潮音へ繋ぎ、潮音から前線へ抜け出す端戸へスルーパス。パスを受けた端戸がGK吉満との1対1を落ち着いて決めてヴェルディが先制する。

 その後の飲水タイムを挟み、山口が押し上げて行くと敵陣へ入りプレーする時間が増えてくるも技術的なミス、ヴェルディの出足鋭いパスカットでボール奪取するとショートカウンターから山口ゴールへ迫る。山口の重心を後ろへ下げさせることに成功したヴェルディが再び押し込むとSB背後を取り、サイド攻撃から何度もPA内へ入っていきクロスボールを供給するもフィニッシュまでもっていけず、1-0で折り返す。

勝負の縦パス

 後半開始から山口がメンバー変更(浮田⇒森)、ヴェルディはそのまま。山口はそのままの配置のように思っていたが、交代出場した森は最終ラインまで戻り5バック化してトップ下に居た池上が右SH化することも見られた。田中は右から左DHへ回る。
 森が意図的に下がってきたのか、ヴェルディの攻撃圧に負けて下りてきたのか真意は不明だが、結果として奈良輪の攻撃参加を許すことになった。

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 前半よりも積極的に高い位置へ入っていき、オーバーラップする奈良輪が勢いをつけて攻勢に出るがなかなか追加点を奪えない。

 すると、一瞬のスキを突かれてしまった。左サイドをドリブルで駆け上がった高井をPA内で小池が倒してしまい、PK献上。このPKを左ポストに当てながらも高井がしっかりと決めて試合は1-1の振出しへ。

 ここのところ勝てていない本拠地味スタで何としても白星を挙げたいヴェルディは立て続けに選手を変えていく。システムはそのままもより球際を激しく、流動性を高めていきスペースを作り作られ、山口守備陣を乱しながら反撃に出る。対する山口も前線を入れ替えて活性化を図ると、森が右大外へ張り空いたスペースを池上が使いチャンスメイク。交代出場の田中パウロが決定的なシュートを放つなど一進一退の攻防が続く。

 途中出場の森田晃樹は持ち前の高いボールコントロール力をみせて推進していくとPA内へ進入する。松橋優安は左サイドへ張り、裏抜けやカットインから何度もチャンスを作る。何としても勝ちたいヴェルディは残り10分ごろから両CBもかなり押し込みハーフコート気味になる。CB祥平から端戸へ縦パスを入れてそれをジョエルへ落とす。そこから右に左に散らしてフィニッシュを目指す。

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 すると、83分に執念が実った。またも同じように端戸へ縦パスを入れるとジョエルへ落とす。ここから右ハーフスペースの若狭へ繋ぐと迷いなくPA内へクロスを上げる。ファーサイドで晃樹が懸命に折り返すと、ゴール手前でドフリーの端戸が左足を振りぬいてゴールネットを揺らす。前半から見られていた縦パス、若狭の攻撃参加、そして選手たちの勝利への執念が勝ち越し点を生み、3連勝を飾った。

まとめ

 フリーマンとして完璧な仕事をこなした端戸だった。前線からの守備でインターセプト、ポストプレーヤーとして縦パスを貰う、数的優位を作るべくサポート、そしてフィニッシュ。ゴールに一番近い位置に居る選手が確りと結果を出すことが勝利に近づくことを体現してくれている素晴らしいパフォーマンスだった。
 前半から全員攻撃、全員守備が機能しており、端戸と優平が縦パスのコース切ってそれに加えてジョエルが池上をマンツーマンしてることでほとんど池上にボール触れさせず、山口の攻撃を沈静化出来た。後半に事故的な失点から同点に追いつかれるも、チーム一丸となって最後まで諦めずに勝利へ拘る姿勢が結果として現れた一戦となった。