【雑感】2021年J2リーグ 第6節 対水戸ホーリーホック~死に物狂いでつかんだ勝利~

東京ヴェルディ 2-1 水戸ホーリーホック

 まるでW杯優勝をかけたかのような選手、ベンチの雰囲気からは凄まじい気持ちが感じ取れた。まさに死に物狂いで戦う選手たちの姿を見たのはかなり久しぶりだった。サッカーとはメンタルがものをいうことが良く分かる。気迫は勿論のこと、勝利につながった相手の出方をよく見て修正を図ったことを振り返りながら試合考察したい。

スタメン

 前節・新潟に0-7とクラブワーストの大敗を喫したヴェルディはCBに平、左SBに福村、中盤に山本理仁が復帰。前線中央には佐藤凌我がプロ初スタメンを飾る。スタートシステムは通常と異なりDHを2枚横並びするようにして14231といった配置になった。
 対する水戸は前節・松本に快勝して2試合連続3-0と目下絶好調である。今季から取り組んでいる1433システムで臨む。

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挨拶代わりの一撃

 プロ初スタメン起用された凌我がいきなり魅せる。立ち上がりから水戸最終ラインの背後を狙う動きを見せて深みを作ると陣地を押し込む。
 2分、右サイドでボールを繋ぐと梶川からの浮き球をヘディングで折り返すと優平もすぐさまヘディングで前へ繋ぐと抜け出した凌我が左足でボレーシュートを放ち、ゴールネットを揺らす。

 そのあとも攻撃を仕掛けるヴェルディ、この日はこれまでとは異なる配置を敷いていた。ビルドアップ時に従来は中盤底を1枚にしていたが、梶川と理仁の2DH化にして3-2の形を取る。水戸はボールサイドのインサイドハーフがトップの中山が横並びのようにプレスをかけにいくため、アンカー平塚の脇が空き、そのスペースで優平や凌我がボールを受ける狙いが見られた。右ワイドの小池が大外に張り、左の山下が中へ絞り柳澤を引っ張り出して、空いたスペースを福村が使い、サイド攻撃をする狙いがあった。

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水戸の攻撃陣の真骨頂

 しかし、立ち上がり早々に1点リードされた水戸は慌てていなかった。ヴェルディにボールを持たれて押し込まれても、守備時に右SHになる松崎が最終ラインまで下がり、柳澤の脇でフリーになる福村をマークする5バック化で蓋をして攻撃を鎮静化することに成功した。

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 ヴェルディから主導権を取った水戸はボール保持時にSBが高い位置を取り、最終ラインに中盤から1枚下りてきて13241といったシステムになる。繋ぐ時はサイドへ展開、ロングボールならば最前線の中山をターゲットにシンプルに攻める。

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 ボールを前進させると同時に選手も追い越す動きを見せて徐々にヴェルディ守備陣を乱し始める。特に、左SB温井が若狭の脇を突き始める。この時に、水戸の松崎に比べると、小池の帰陣が遅く、フリーにする場面が目立ち、まるで金沢戦と同じようになっていく。

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 同点に追いつくのも時間の問題だった。18分、自陣でクロスをキャッチした牲川が素早く前線へ展開。カウンターから深堀がドリブルで運ぶと中山がポストとなり長い距離を走ってきた奥田がしっかりと決めきり試合は振り出しへ。

 水戸のプレスも嵌り出して、ヴェルディ陣地でゲームが進むと、持ち前の攻撃力が絡み合い、シュート数でも圧倒して何度もチャンスを作っていく。ヴェルディは小池や凌我が裏抜けを試みるも最終ラインと息が合わずに思うような攻撃が出来ず、配置を変えて梶川に高い位置を取らせて従来のようにハーフスペースを攻略させようとするもこちらも効果的な攻撃にならず1-1で前半を折り返す。

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本領発揮、石浦大雅

 後半開始からヴェルディは小池と山下の左右入れ替える。ギアを上げてかなり高い位置からプレスをかけに行き、ボールを奪うと、手数をかけずに水戸最終ラインの背後を狙う場面が増えていき縦に速い攻撃を仕掛けていく。

 負けじと水戸も3トップ+中盤3枚の6名が敵陣へ入ってプレスをかける状況を作ったが、ヴェルディ快速トリオを気にしてしまう水戸最終ラインは難しいラインコントロールを迫られた結果、中盤と間延びする事態を起こしてしまった。最終ラインの加藤からミドル、ロングパスが冴え渡りスペースでボールを上手く受け始めると流れはヴェルディへ。

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 たまらず水戸ベンチが先に動く。前半からかっ飛ばしていた両翼を入れ替えてプレス強度を保ちながら勝ち越し点を目指す。

 すかさず、ヴェルディも疲れが見え始めた梶川に替えて永井監督の秘蔵っ子・石浦大雅を投入。ライン間でのボールを受けることとボールテクニックに優れたレフティが大いに存在感を発揮する。水戸の中盤の背後でボールを受けると、持ち運び、スルーパスを出してチャンスメイクして攻撃にアクセントをつける。

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 完全に試合を支配したヴェルディはあとは決めるだけという雰囲気がスタジアムを包む。

 すると、72分、右サイドからのCKの二次攻撃で福村がPA内へ浮き球を入れると若狭が落として最後は凌我が豪快に蹴りこみ、ヴェルディが勝ち越す。念願の勝ち越し点をついに挙げる。

実った勝利への執念

 勝ち越し点を奪ったヴェルディの気迫、執念、集中力は凄まじかった。高い攻撃意識を持ち、さらに追加点を取るために何度も水戸ゴールへ迫る。2得点の凌我は背後を取る攻撃的なプレーに加えて最後までプレス、プレスバックを繰り返し前線から守備でも貢献する。中盤の理仁も高い位置から球際の激しい泥臭いプレーをする。コンパクトな陣形を保つことでセカンドボールを回収して二次攻撃へ転じることで水戸にほとんど攻撃をさせることもなかった。

 後半ATには、水戸から移籍してきたンドガが初出場。CBに投入されてハイボールを跳ね返して守備固めの起用に見事にこたえて、開幕戦以来の2勝目を挙げる。試合終了のホイッスルが鳴り響くと、マテウス、平、若狭、加藤と守備陣は大きく喜びを分かちあい、この試合に懸けた気持ちが伝わる勝利となった。

まとめ

 金沢戦からの悪い部分が目立った前半、気持ちを入れ替えてメンタルの充実から盛り返した後半と両極端の内容であった。後半によく持ち直して、得点が取れそうな雰囲気で確りと得点を奪い、最後まで集中は切れずに見事に逃げ切った。
  前半終了時にはたった3本だったシュートも終わってみれば21本と水戸の14本を大きく上回り、リーグ屈指の攻撃を誇る水戸を黙らせる後半の戦いぶりには驚きがあった。まさに『攻撃は最大の防御』となった。相手陣地でプレーする時間が長くなればなるほど得点の可能性は高くなり、失点の可能性は減る。就任3年目を迎える永井体制のなかでもこれほど縦に速い攻撃を何度も見せた試合はあまり記憶に無い。その攻撃を牽引したのルーキーの佐藤凌我は深さを作る動き出し、ゴールへの嗅覚はまさにストライカーの要素を兼ね備えており、小池や山下との連携が深まっていけばかなり面白い3トップになりそうだ。次節・山口戦ではどういった攻撃を繰り広げるか注目していきたい。