【雑感】2021年J2リーグ 第34節 対ギラヴァンツ北九州~チームを救う凱旋弾~

東京ヴェルディ 2-2 ギラヴァンツ北九州

 後半途中までは完全に勝てた試合だったが、そこから不可解な采配で自滅。ここまでかと思われた試合終了間際に起死回生の同点ゴールを決めた救世主は故郷・福岡での試合となった佐藤凌我だった。ヴェルディ対策バッチリだった北九州の振る舞いも踏まえつつ試合を振り返ってみたい。

スタメン

 前節岡山に1-2で敗れたヴェルディ。古巣対戦となる加藤弘堅がCBに入り、若狭が本職のSBへ回る。中盤には森田晃樹が久しぶりのスタメン復帰、3トップは山下、小池、杉本竜士で臨む。
 対する北九州は前節磐田に1-4で大敗。この日は前節から吉丸、河野、針谷、斧澤、佐藤颯太の5名を抜擢とガラリとメンバーを入れ替えた。左SB永田にとっても古巣との一戦になる。

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前半

 試合前のインタビューで北九州・小林監督が語ったようにヴェルディにボールを持たすことを容認する形で試合は進む。ボール保持すると中盤底の佐藤優平の脇にSB若狭or山本理仁が寄って、3-2を形成。その前にIHが入り、両ワイドがタッチラインぎりぎりまで開き幅を取り、前線の小池が中央で構える。これに対して北九州は1442で構えて2トップが最終ラインへのプレスと佐藤優平へのマークを受け渡し、ボールサイドのSHがプレス、IHにはDHがプレスとオーソドックスな対応で立ち上がりの守備をしていく。

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 ヴェルディはプレスをかけてくる北九州のSHの裏スペースである大外をビルドアップの出口としてIHとワイドの選手が立ち位置を変えながらボールを受けてサイドから攻撃を組み立てていく。ただ、ボールを貰う位置が低いことやPA外で北九州がブロックを敷いていることで効果的なクロスボールを供給することがなかなかできずフィニッシュへ持ち込むことが少なかった。

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 これが北九州の狙いであり、ボール奪取すると選手の立ち位置が動きスペースだらけのヴェルディ陣形の空いているところを見ては手数をかけずに攻撃していく。4バック→3バックと可変していたヴェルディは慌てて4バックへ戻すも両SBが中へ絞りすぎていることも多く脇が空き、そこを突くようにクロスボールを入れてPA内で左右に揺さぶって崩そうとしていく。

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 また、ボール保持時はDH西村が最終ラインに下りて針谷の1DH化して両SBが高い位置を取り13142のようなシステム。サイドを捨てて人海戦術的に中央固める1442システムで構えるヴェルディを崩すのは容易で、サイドで起点を作り、ワンツーや3人目の動きで守備陣形を乱すと深い位置まで入っていき決定機を作っていった。最後尾の西村がスルスルと上がっていく場面は試合を通じて何度も見られた形でもあった。 

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 背後を取るようなロングパスや思いっきりよいミドルシュートが少なく、サイドから崩そうとする攻撃一辺倒になり単調になっていくことで北九州の選手たちは自分たちの前でボールを回されることだけになり次第に守備がハマリ始めてリズムを握っていく。前半は0-0スコアレスで折り返すも試合は北九州ペースであった。

後半

 後半開始からヴェルディは杉本竜士に変えて佐藤凌我を投入して3トップ真ん中に起用、小池が左ワイドに回る。早い時間帯で得点奪えずにいるとやられるだろうという雰囲気がプンプンに漂う立ち上がり。CKやクロスに先に触られてヒヤリとする場面が連続して矢先、試合が動く。

 自陣でGK柴崎からボールを繋いで行き、左サイドから攻撃を仕掛けて行き、セカンドボールも回収してしばらくマイボールの時間が続く。再び、左サイドから攻めて行き、敵陣に押し込んで行くと佐藤優平が遠い位置から身体をひねりながらミドルシュートを打ち、吉丸が弾いたところを途中出場の佐藤凌我がプッシュしてヴェルディが先制点を挙げる。

 ビハインドになった北九州は前線のメンバーを入れ替えながら反撃に出る。これに対してヴェルディは守備に重心を置きつつもマイボールになると丁寧につなぎ、選手たちの連動性も良くなり、上手くゴール方向へ前進していく展開になる。

 互いに次の得点を奪えない状態が続くと北九州は立て続けに選手交代をして攻撃の再活性化を図る。一方のヴェルディは1点リードで迎えた70分過ぎ、CB加藤とIH石浦大雅に変えて、新井と梶川を投入。リードしている展開で最終ラインをイジルことは久しぶりの出場となった加藤に出場時間制限でもあったのかと試合中は考えてしまったが、試合後のコメントを読む限りそういうことはなく、単純に疲れが見えたから交代を命じたようだ。それであれば久しぶりにベンチ入りしたCB馬場をそのまま入れたら良いのではと思うのだが、本職SBに入った若狭はいつものCBへ回して森田晃樹をSBへ下ろしもはや「守備緩め」になり、ヴェルディサポーターの誰もが悪い予感しかしなかった。

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 その予感は当たる。この日、初めてだろうか、北九州に中央から攻め込みを許すと、誰がボールホルダーへ寄せるも無くズルズルと押されて、右大外から理仁の裏を取りPA内に侵入した藤谷へパス。藤谷が折り返し富山が合わせて同点。前半から再三見られていたSB脇の大外を突かれてとうとう失点をする。

 同点になり試合は両ゴール前をボールが行ったり来たりするオープンな展開に。後半ATに獲得した右サイドからの北九州のCK。ファーサイドで折り返し、混戦から最後は前川が押し込み、北九州が劇的な逆転弾を挙げる。

 これで勝負あったかと思われた。ただ、試合はまだ終わらない。ボールキープしながら時計の針を進めていた北九州であったが、敵陣深いところまで持っていくもキープかシュートか曖昧になり、最終的にシュートを選択してボールをヴェルディに渡してしまう。ここから左サイドを持ち運び、最後はPA内でトラップして反転しながら佐藤凌我が右足で蹴りこみ、試合終了間際に同点に追いつきタイムアップ。残り5分を切ったところから3点が入る目まぐるしい試合は2-2の引き分けに終わった。

まとめ

 ヴェルディとしては元々1点リードしていて選手交代で自ら苦しみ、勝ち点3を手放した試合内容であった。それでも、故郷・福岡での凱旋試合で佐藤凌我が挙げた2得点で最終的に勝ち点1を持ち帰ることが出来て残留に向けては大きな意味を持つだろう。これまでの触れてきたように守備での強度は脆弱であり何点取られてもおかしくない状態だ。それだけにどれだけ攻撃が仕掛けられるかがすべてになってくる。残り時間わずかのところから逆転した北九州も勝ち切れず、お互いにチーム状態の悪さを露呈する試合であったとも言える。
 この試合ではSBでスタートした若狭。不安定さが目立つCBに比べると本職になるだけに落ち着いてプレー出来ているように見え、あれだけの上背のある選手が後方から攻撃参加してくると迫力も感じられた。また、森田晃樹も本来の中盤起用によって持ち味のボールコントロールの高さ、運ぶドリブルとらしさが見えて及第点の活躍だっただろう。そして、古巣対戦になった加藤弘堅。本職の中盤ではなくてCB起用であったが、それでも守備意識の高さや展開力は随所に発揮されてチームに落ち着きをもたらせた。やはり途中交代させられたことが悔やまれる。この日のパフォーマンスが指揮官の目にどう映ったかは次節のメンバー表で分かるだろう。