【雑感】2021年J2リーグ 第26節 対栃木SC~トップ下・端戸はよかったというお話し~

東京ヴェルディ 2-2 栃木SC

 いきなりどうしたのかと2点リード奪うも、歯車が狂いだし、采配ミスから流れを失いまたしてもリードを守り切れず勝利を逃す。いつもと異なるシステムが選手の個性を活かし、特に端戸の使い方は見ていて面白かった。それを止めた途端に一気に形勢逆転を許し、その辺を踏まえて試合を振り返りたい。

スタメン

 前節磐田相手に先制しながらも逆転負けを喫したヴェルディ。梶川が9試合ぶりのスタメン。夏に加入した浜崎が右SB、杉本竜士を左SHでそれぞれ移籍後初スタメン。この日は端戸をトップ下に置くいつもと異なる14231システムで臨む。
 一方の栃木は前節群馬戦が延期になり、2週間ぶりの試合。直近の相模原戦から3名メンバー変更。左SBに溝渕、DHに西谷、右SHに畑が入り、1442システムで臨む。

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際立った端戸の存在感

 スタメンの顔触れを見てどういうシステムになるのだろうと注目した立ち上がり。試合後の永井監督のコメントによればワクチン接種の影響でメンバー編成が変わったとのことで、この日は右DH梶川左DH加藤の2DH、右SH山下で左SH杉本竜士、トップ下端戸で小池の1トップを敷いた。矢野、豊田、森、畑の前線4枚中心に全体的にプレスをかけてくる栃木相手にはスピードある選手たちを並べたことが都合が良かった。ピッチ中央でボールを持つと躊躇なく裏のスペースへ蹴りこみ小池を走らせていく。自陣左サイドからのスローインから端戸のポスト、スイッチしてボールを受けた梶川が前線へドリブルしつつ1トップ小池へスルーパスを通す。小池はGKオビを交わして流し込み開始早々にヴェルディが先制する。

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 直後の攻撃、ショートカウンターから端戸がボールを持ち左には竜士が駆け上がる。仕掛けていく端戸はPA手前で倒されてFKを獲得。この日ファーストプレーとなった浜崎がこれを直接、豪快に蹴りこんで開始わずか10分で2点を挙げる。

 トップ下起用された端戸のプレーは光っていた。これまでは最前線で屈強な相手CBを背負いながらポストプレーしていたが、この日は少し下がり目で相手のパワーも少ない中盤でボールを収めることにだいぶやり易さを見受けられた。また、ボール収めてもその先には自動的に1トップ小池が配置されて両SHも裏抜けすることでシュートチャンスが広がる。そして、相手DHに対する守備もこなされていて、端戸の強みがトップ下で遺憾なく発揮されていて今後の可能性も感じさせるオプションであった。 

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  出鼻をくじかれた栃木であったがまだ80分残っていると落ち着いた様子で自らが得意とする空中戦の強みを出そうとセットプレー、ロングスローを果敢に取り入れていく。これに持ち味のハイプレスを交えてシュートチャンスが増えていった。ボール保持すると右SB黒崎が積極的に攻撃参加していきクロスを上げていく。立ち上がりから何度かクロスを許す場面を作ってしまったことからヴェルディは左SH竜士が最終ラインまでプレスバックして対応をし始める。竜士はボールホルダーに対しても周りの誰よりも猛烈にプレスをかけていき気迫あふれるプレーでチームを牽引していく。凄いと思わせる一方で最低でもこれくらいやらないとJ1基準にはならないと痛感させられた。

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 ボール奪取すると、猛烈なスプリントで裏抜けして栃木ゴールへ迫るヴェルディが2点リード後も何度かシュートチャンスを作り、試合を優位に進めていた。そんななか、42分、自陣でパス回しから不用意なボールロスト。これを畑が見逃さずカットするとそのまま持ち上がりマテウスの動きをよくみて流し込み1点を返す。技術的なミスからの失点という長期的な課題が一向に改善されない。

形勢逆転を許した理由

 ヴェルディは後半開始から、良い動きを見せていた竜士に変えて佐藤優平を投入する。疑問の残る交代であったが、試合後の永井監督のコメントでは、時間制限があるためとその理由を明かした。投入された優平は中盤に入りシステムをいつもの14123へ変更した。

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 しかし、これが試合の流れを完全に変えてしまった。その理由は大きく4つあったと振り返る。
 1つ目は栃木のプレッシング強度が上がったこと。もしかすると、前半は想定していたシステムで無かったことに栃木が戸惑い、プレスの基準がはっきり出来なかったのだろう。後半になりいつものヴェルディになったことで想定していたようにプレスが嵌まり始めて結果としてギアを一つも二つも上げたように激しくなりこれによってヴェルディの選手たちのミスが増えていき、次第に重心が低くなり防戦一方となった。

 2つ目は左サイドの守備であった。上述のとおりに前半は竜士が最終ラインまで戻って福村の守備フォローするなど懸命な守備を見せていたが後半のシステム変更で小池と優平の役割も曖昧になり、その強度が目に見えて落ちてしまい攻め込まれることが増えていった。

 3つ目は前線のシステム変更だ。端戸がポストプレーをすることに変わりはないのだが前半は小池がその先に居たことでボールを繋いで前進出来ていたが、後半になり、端戸の先に選手が不在になり、その結果として重心を低くする原因にもなってしまった。

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 そして4つ目は交代出場した優平が相手に脅威を与えるプレーが出来なかったことだ。プレス、球際の激しさ、ゴール前への顔出しと前半の竜士に比べて質が明らかに落ちてしまっていた。

 このようなことが重なり、後半は自陣でプレー時間を長く強いられることになったヴェルディ。陣地回復が出来ずに苦しい時間帯を何とか耐え、貴重なセットプレーからンドカのヘディングシュートなどでチャンスを作るも追加点が奪えない。わずかなチャンスをモノに出来ず、依然として主導権を握っていた栃木の攻撃がついに実を結ぶ。72分、懸念された左サイドを突破されてクロスを上げられる。ファーサイドで折り返されて最後は中央で佐藤が蹴りこみとうとう同点に。悪い予感が当たってしまった。その後、反撃に出るべく佐藤凌我、安在和樹、戸島と投入するも勝ち越し点は奪えずに2-2の引き分け。これで6戦未勝利となった。愛媛、群馬、水戸、磐田に続き5戦連続でリードする時間帯がありながら勝ち切れずゲームコントロールの弱さが露呈されるアウェイ連戦となった。

まとめ

 メンバー構成の都合もあっただろうが久しぶりに導入した14231システムは上手く機能していた。4月の水戸戦以来の採用だっただろうか?中盤2DHが真ん中を固めて、トップ下がボール収める。360°周囲に味方選手がいるため次の動きにも繋がりやすく攻撃に厚みが出た。元々が中盤の選手でもあった端戸はワントップとしてのチームへの貢献度は計り知れないが、トップ下起用がその個性が活きる使い方である事がよく判った。また観たいオプションでもあった。また、初スタメンの浜崎は持ち味のプレスキックの精度の高さを示し、今後にも期待を持たせる。ボールに絡んでいないときの攻守での位置取りなどはまだまだ伸びしろはあるだろう。
 幸先よく2点リードしながらも流れを渡し結果的に引き分けに終わった。後半以降の選手交代、配置替えの采配は結果として完全に失敗だったことが大きく響いた。監督の采配が冴えなかったことと選手の頑張りが足りなかった。6戦未勝利で勝ち点を伸ばせていない状況、残留を確実に手繰り寄せるためにも奮起が求められる。