【雑感】2020年J2リーグ 第2節 対町田ゼルビア~待望の瞬間~

東京ヴェルディ 1-1 町田ゼルビア

 約4か月の中断を経て再開された、俺たちのJ2リーグ。無観客試合(リモートマッチ)で行われたことは残念であったが、再び『サッカーがある週末』が戻ってきた喜びを改めて実感した瞬間でもあった。この中断期間、戦術的な情報は全くなかったため0-3で完敗した開幕戦・徳島戦からどう変わったのか期待よりも不安が大きかったのが本音だ。しかし、味スタのピッチを躍動する緑のイレブンは進化を遂げ、着実に力をつけていたように思えた。中断期間に落とし込まれた攻守における狙いや試合をしてみて明るみになった課題に触れながら『東京クラシック』を振り返ってみたい。

スタメン

 再開初戦、発表されたメンバー表を見ると、4バック?3バック?とも受け取れる守備陣、『え、FWに井上潮音って・・・大久保どこへ行ったのか』とよく分からない人選というのが第一印象だった。試合始まり改めてその布陣を整理すると、最終ラインには若狭と平を入れて4バック、中盤には井出(CBじゃなくて安心した)と井上潮音、前線には端戸を起用されて徳島戦からは5名入れ替えることになったヴェルディ。スタートシステムは1451でそこから可変システムを採用(詳細は後述)。キャプテンマークは佐藤優平が巻く。得点が期待されていた大久保、レアンドロはコンディション不良でベンチ外となった。
 対する、町田は開幕戦のメンバーからマソビッチとステファンを変えて、ジョンチュングンと中断期間にC大阪から加入した安藤が入った。こちらは練習試合がYouTube配信されるなど情報も出ていたように安藤をトップに構えて平戸がトップ下で自由に動く形の14411というシステム。

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失点で浮き彫りになった課題とは

 キックオフ時、ヴェルディの最終ラインには右から若狭、高橋祥平、平、奈良輪と4バックでピッチに立っていた。そこからボール保持時は奈良輪が上がり若狭がそのまま残る3バック化へ可変する形を取った。DHに藤田譲瑠チマと潮音の2枚が入り3-2の形でビルドアップの安定化を図る狙いが見えた。
 一方の町田は14411システムから入り、ボール非保持時は平戸と安藤が横並びの2トップ、それに加えてSHの片側もしくはDH佐野が前線までプレスをかける形で1433となった。2列目からのプレッシングのかけ方は基本的に縦方向であった。

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 試合はいきなり動いた。3分、右サイドでボールを奪った町田は左サイドのジョンチュングンへ大きく展開。対面する若狭とCBの間に生まれたスペースへ走り込んだ平戸へパスが渡る。平戸はボールを持ち直して少し遠い位置ではあったがプレッシャーが緩かったので思い切り右足を振りぬいて豪快にミドルシュートを決めて町田が先制する。平戸のシュートがお見事であることは勿論であるが、ヴェルディ側はジョエルや小池など周囲のカバーリングの遅さが失点を招いた。

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その後も何回か同じ形からピンチを招くことがあった。攻撃時に奈良輪が上がって3バック化することで横幅を4枚⇒3枚でみることになる。ボールを失った際のネガトラ時の位置取りの遅れから若狭が引っ張り出されると、祥平が平の2枚しか残っておらずスペースを多く空けることになる。ジョエル小池のカバーリングが間に合わないことで、町田の右サイドから逆サイドへ大きく展開されて左SHジョンチュングンへボールが渡ることになった。23分の場面では優平が前線から懸命に最終ラインまで戻ってカバーリングするなど約束事が曖昧に思えてしまう点を課題と感じる。

中断期間の成果

 開始早々から出鼻をくじかれたヴェルディ。自分たちのペース、主導権を握ろうとボールを回してリズムを作ろうとする。ここからは圧倒的にヴェルディがボールを握り、町田が守備に回る展開になる。上述のようにボール保持時に3-2の形でビルドアップを行ない、奈良輪がSB⇒WB化して13241となる。3バックで5レーンを形成して攻撃を仕掛けるのはロティーナ政権時を思い出す。
 そんなヴェルディは中央からとサイドからの2パターンで攻撃を仕掛ける。最終ラインの若狭と平は同じレーンにいる優平、井出への縦パスを入れようとしたり、町田2トップの脇からドリブルで運ぼうとしたり積極的に攻撃に絡む。中盤でフリーマンになった潮音もボールに多く絡み、8分には最終ラインと駆け引きして裏抜けを狙った小池へのスルーパスからチャンスメイク、21分には井出、端戸と繋ぎ潮音がGK秋元の前でわざとワンバウンドさせるようなミドルシュートを放つ。 
 また、両翼の小池と奈良輪はタッチライン際まで大きく張ってそこへボールを預けてIH優平や井出、トップの端戸が絡んでサイドでの崩しから中で仕留めようとする場面があった。しかし、両翼の位置取りが低いことで対人する小田や奥山は裏を取られる心配が無く、町田のSHを引き付けることでその後ろのSBを1対2にするなど工夫も無く単調なプレーからクロスを上げられず苦労して前半を0-1で折り返した。

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根拠があった積極的な采配

 裏抜けをする動きが少なかったからか、後半開始からヴェルディは小池と井出に替えて、快速ドリブラー山下と大怪我から復活した主将・藤本寛也を投入した。スルーパスが得意な寛也から山下が裏抜けてサイドからクロスを抉ってチャンスを作ろうとする狙いが感じ取れた。
 49分、決定的なチャンスが訪れる。町田のCKからGK柴崎がパンチングでクリアしてそのボールを拾った優平が右サイドの山下へ繋ぐ。山下は寛也へパスを繋ぎそのままサイドを全速力で駆け上がっていき、寛也もそのスピードを活かす絶妙なスルーパスを通す。山下はゴールラインぎりぎりからクロスを上げて中でがら空きの端戸へボールが渡る。後は流し込むだけなのに『何でだ!!!』と疑ってしまう超決定機をふかしてしまう。
 寛也と優平がハーフスペースに君臨すること、平と若狭が持ち運ぶ距離が長くなることで町田SHには二択を与えることになる。すると、大外の山下と奈良輪が高い位置を次第に取れるようになって、斜めの動き出しも増えて攻撃が活性化する。寛也のボールキープ力、パスセンス、存在感も際立っており流石という印象を受けた。

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 端戸も身体を張ったポストプレーに加えて、最終ラインの裏を取る動きが徐々に出てきて、チームに連動性が生まれる。前半は眠っていた左サイドが生き生きとしてきて奈良輪がPA内へ入るくらい攻撃参加が目立ってくる。76分に奈良輪、優平、端戸のマリノスアカデミー出身トリオ上手く連携してサイドを崩し、PA内に入っていった奈良輪がシュートを放つもGK秋元に防がれる。
 78分、潮音に替えて河野広貴が入り、1433とする。左サイドに山下を回して奈良輪と2枚で縦に仕掛ける狙いを感じた。町田も吉尾に替えて中島を入れて活性化するサイドのケアを図ろうとしていた。

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 ヴェルディがボールを握るも得点を奪えないまま終了へ近づいていた91分に試合が動いた。最終ラインに回った奈良輪からのロングフィードを端戸が落とし、ボールを受けた山下がPA内へ走り込んだところを高江と交錯してPKを獲得。このPKを復帰した主将の寛也が右隅へ蹴り込んでヴェルディの今季初ゴールで同点に追いついた。その後、攻防はあったものの試合動かず1-1でタイムアップ。再開初戦は引き分け、ヴェルディは今季初の勝ち点を獲得した。

まとめ

 長い中断期間もあったからか、試合中盤からはバテてくる選手も目立ち、コンディションは両チームともにまだまだという印象が残った。そんななかでもサイドの奈良輪のシュートが多い事など戦術面での落とし込みから、組織として機能している部分が窺い知れたことはプラスに捉えたい。裏抜けが出来る山下、パス能力の高い寛也を後半頭から投入して状況打開を図った采配は上手く機能したと考える。相手が居て初めて成り立つだけにピッチ内の選手たちの強引さやアドリブなど状況判断力の向上を期待していきたい。
 ネガトラ時の守備に課題を覚え、次節ではどういう風に改善されるか注目される。ボールを圧倒的に握り、さほど出番はなかったが、2CBから3CBへ変えたことで対人が強い平、祥平、若狭の守備陣の良さが出ていた。近藤、福村、山本理仁、馬場晴也とCBも控えているだけに上手くローテーションが出来れば面白くなってくる予感がする。
 サッカーがある週末が戻ってきた喜びに感謝して、シーズンを楽しんでいきたい。