【雑感】2022年J2リーグ 第9節 対ロアッソ熊本~魔法が解けて、今季初黒星~
東京ヴェルディ 2-3 ロアッソ熊本
スコア以上に内容では完敗だった。熊本のサッカーが映像で見ていた以上に生で見ると強度が高く、素晴らしい出来であった。ヴェルディはスタメン変更で臨み、それが完全に裏目に出た部分もあり、試合を振り返りながら考えていきたい。
スタメン
前節・大分に1-0で勝利したヴェルディ。この日は中盤に石浦大雅を起用して森田晃樹をトップに配置。スタートは14123で臨む。
対する熊本。前節は新潟に1-2で逆転負けを許す。伊東に代わり田辺が起用。田辺は左サイドに入り、竹本をトップ下の伊東の位置に配置する。GK佐藤優也にとってはかつて守護神を務めていた古巣との対戦になる
前半
お互いに前節からメンバー変更があり、配置がどうなるか気になった立ち上がりであったが配置は同じままでだった。ヴェルディのビルドアップに対して熊本は竹本が高橋と並ぶ形で2トップ化してンドカと谷口栄斗をマーク山本理仁には河原が縦スライドで対応、トップに入る森田晃樹には菅田がしっかりとつく。河原の周辺のスペースでボールを貰おうとする石浦大雅にイヨハがつき、楔のパスにも身体を寄せて潰しにかかり、ボールキープさせない。序盤こそ、ヴェルディが熊本最終ラインの背後を取る動きが何回か見られたが前節大分戦同様に「まさに序盤こそ」であった。攻撃のタクトを振るう山本理仁に自由を与えず、外循環を誘発させることで的を絞り易くしていることがその理由でもあるだろう。
対する熊本はボール保持すると、1442で守るヴェルディのSHのところに3バックの左右CBやWBがボールを持ち運ぶ動きを見せる。そこでワイドの杉山や坂本も絡み、数的優位を作ってサイドを崩す手法を見せる。ヴェルディにとっては山形、琉球、大分と連戦でやられていた崩し方を再び見せられることになる。
ヴェルディはサイドで高い位置を取る山越にボールを預けて田辺にフィジカルの差で勝っていたくらいで、森田晃樹や石浦大雅は熊本3CBにほとんど歯が立たず、ボールキープが出来なく熊本に押し込まれていく。熊本はSB山越と加藤蓮に数的優位を作り、ユニットとしての崩しやワイドの杉山と坂本の個の仕掛けで何度もサイドの深い位置まで抉ってクロス供給していく。後方の選手たちも追い抜く動き、サポートを見せることでヴェルディの選手たちは捕まえ切れず主導権を握り熊本のターンがしばらく続くことになる。杉本、高橋、坂本の3トップの躍動感、ワクワク感は見ていてかなり面白く、J2を席巻する予感もする。
24分、ヴェルディは前半早々の相手との接触プレーで負傷した杉本竜士に代わり新井を投入する。新井はそのまま左ワイドに入る。投入されたばかりの新井であったが早速ドリブルを披露するとようやく前線で時間を作ることが出来て劣勢だったヴェルディも挽回し始める。
すると29分、ここまで押される時間が長かったヴェルディが先制点を挙げる。立ち上がり何回もマッチアップしていた山越と田辺のところで、山越がフィジカルを活かして強引に突破するとPA内へクロス。これを森田晃樹が流し込み先制に成功する。
先制に成功したヴェルディであったがこれまでスタメン起用が多かった佐藤凌我に比べて森田晃樹のプレス、プレスバック、二度追いの強度が低く、先制点を許したものの熊本は落ち着いて試合運びしていた印象がある。ヴェルディの最前線の選手に求められる守備時の役割がよく判ってしまった。
熊本のサイド攻撃に対してヴェルディはSHも下がってきて数的同数またはスペースを埋める守備が出来始めていた矢先、試合が動く。
36分、左から田辺のアーリークロスがファーサイドへ。右サイドの阿部が折り返すかのように蹴りこむとこれがそのままゴールイン。自分たちの時間帯で熊本があっさりと追いつくことが出来た。
プレスの緩さ、ボールホルダーへの寄せの甘さが目立ちその後も何度も攻め込まれるも何とか凌ぎ切ったという前半45分であった。
後半
ヴェルディは山本理仁が立ち位置を離れてサイドでボールを受けてビルドアップに参加。繋ぎの中でワンタッチパスの変化を入れるもボールが上手く繋げず、熊本へ渡ると前半から継続するように執拗にサイド攻撃をしていく。右は阿部、左は杉山の仕掛けからのクロスで何度もヴェルディゴールを脅かす。
10分近く熊本の攻撃を受け続けてしまったヴェルディ、とうとう決壊した。山越が裏を取られると、サイド深い位置まで抉られてマイナスのクロスを杉山が流し込み熊本が逆転する。
ヴェルディはパスのズレも目立ち、上手くボールを繋げず苦しい状況は続き、失点直後にもあわや3点目のピンチを招くもここはGK佐藤久弥のファインセーブで事なきを得る。
61分、ヴェルディは小池と石浦に代えて佐藤凌我とバスケスバイロンを投入。凌我を最前線へ入れる。エネルギー溢れる2名を前線に入れることで前線からの守備は勿論、逆転への攻勢をしていく。
熊本に際どいシュートを相次いで放たれるも精度に救われてなんとか失点せずに耐えると、交代出場の選手たちの効果が出てくる。凌我とバイロンはプレスとプレスバックを行ない、熊本のビルドアップにプレッシャーをかける。攻撃時も深みを取るようにスペースへ走る動きをみせて熊本守備ラインを押し下げてようやく熊本ゴールへ迫っていく。
時間が経過すること、20℃超えの暑さによる疲れ。交代出場の凌我とバイロンのプレスもあり、熊本の守備陣にもミスが目立ち始める。ヴェルディが高い位置でボール奪取出来るようになり、良い雰囲気がスタジアムにも漂い始める。
76分、熊本が自陣PA付近でボールロストするとすかさずバイロンが拾い凌我へパス。振り向きざまに凌我が右足で決めてヴェルディが2-2の同点に追いつく。交代策がズバリ的中した。
追いついたことで勝利も見えてきたヴェルディ。選手距離感が間延びしてオープンな展開に新井、バイロンの走力が活きてきて、スタジアムの雰囲気も俄然盛り上がる。
そんななかまさかの結末が待っていた。自陣でのスローイン、谷口栄斗のパスを途中出場の伊東がカット。伊東が巧みなコース取りでドリブルしていくと同じ交代出場したばかりの東山が左サイドを駆け上がり、伊東からのパスを冷静にファーサイドへ沈め熊本がリードを奪う。ヴェルディは試合中に散見していたパスミスがこのタイミングで失点へ直結する悔やまれる形になった。
再びビハインドになったヴェルディ。交代出場の阿野真拓、佐藤凌我が立て続けにシュートを放つも古巣との対戦になった佐藤優也が立ちはだかりゴールを割ることが出来ずにタイムアップ。先制点を挙げたものの2-3で逆転を許しヴェルディは今季初黒星を喫した。
まとめ
ビハインドからも同点、逆転とドラマを生んできたヴェルディであったがとうとう黒星を喫した。ここのところ続いていた複数失点をこの日も与えてしまう。もちろん、熊本のサッカーの素晴らしさがあることには触れなければいけない。若い選手たちをキャリアのある大木監督が培ってきた戦術を見事に体現化してJ3からの昇格組みながら健闘を見せている。個々の選手も持ち味を随所に発揮して今後も目が離せない存在になるだろう。
一方のヴェルディ。この試合ではスタメンを変更して森田と石浦のMFタイプを2枚最前線に並べたが主軸の佐藤凌我に比べると守備強度が劣りファーストディフェンダーの役割を十分にこなすことが出来なかった。また、前線でボールを収めることや最終ラインとの駆け引きも少なく、起用は裏目に出てしまった。相手にボールを握られる時間が増えて、その分だけ攻撃の回数も多くなる悪循環になった。前線からのプレス4枚に対してSH裏のSBに2枚を配置して数的優位を作られてクロスからの失点が直近の試合から増えており、修正箇所になるだろう。小池が下がって5バックになる可変をスムーズに行くようにするのかDHが斜めに下がって中盤を横スライドで埋めるのかなど次の段階へ進むためのポジティブな課題に直面した。
攻撃面は2得点挙げたものの個のアドリブでの展開も多いような印象を受けた。新井頼みの部分もだいぶあるような感じがして、まだまだ長いシーズンなので新しい戦術を落とし込んで行って貰いたい。
ここまで負け無しだったからメンバーを弄りにくかったかもしれず、次節以降の選手序列に変化があるかも注目して山口戦を楽しみに待ちたい。