【雑感】2020年J2リーグ 第8節 対アルビレックス新潟~取りこぼした勝ち点~

東京ヴェルディ 1-1 アルビレックス新潟

 古巣へ復帰後初ゴールを挙げた高橋祥平がヒーローになるまであと少しというところでの痛恨の失点。勝ち点2を取りこぼしてしまったこの一戦。ボールを繋ぐ攻撃サッカーを志向しているチーム同士の試合を両監督の采配、修正を踏まえながら振り返っていきたい。

スタメン

 前節・山形と引き分けたものの今季初完封をしたヴェルディ。中3日の連戦であったがスタメンは変わらず。スタートシステムも14141のまま。
 対する新潟はここまで3勝3分1敗と好調である。田上、ゴンザレス、中島、ロメロフランクそして古巣対決となる高木善朗と5名入れ替えて臨む。スタートシステムは14231である。

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絶妙な位置取りするビルドアップの出口

 コンパクトな陣営を保ちつつアグレッシブなプレーで開始早々から勢い良くくる新潟に若干押し込まれるヴェルディ。立ち上がりの攻勢を凌ぎようやく試合が落ち着き始め、新潟の選手たちの立ち位置をうまく見極めて反撃に出る。
  ヴェルディはボール保持時に奈良輪が高い位置を取り3バック化する13151へ可変する。対する新潟は渡邉とロメロが縦関係になり14231で構える。渡邉がヴェルディ最終ラインの祥平と平を見て、ロメロが藤田譲瑠チマをマークする形。ボールサイドにある方のSHとSBが連動してプレスをかけ、全体的にコンパクトで最終ラインもハイライン気味であった。
 ヴェルディは若狭か佐藤優平もしくは両方がジョエルの横並びになりビルドアップの出口となる。この時に新潟はロメロと本間の2枚のため数的同数もしくは数的優位をヴェルディが作れることになり、若狭や優平が絡むチャンスを多く作ることになる。
 10分、持ち上がった若狭が新潟最終ラインの背後へ浮き球のパスを入れる。端戸がスルーして、2列目から飛び出してきた井上潮音がボールを受け相手選手を交わしてシュートを決めるも端戸がプレー関与とみなされてオフサイド判定を受ける。
 14分ごろからは立て続けに優平がチャンスを演出する。ビルドアップの出口となりボールを受けた優平が右ワイドの藤本寛也へ。またしても新潟守備の背後を突くようにパスを入れて走り込んだ端戸からのマイナスのクロスに若狭が合わせるもシュートは枠外へ。決定的なチャンスであった。続いて、優平が井出へ縦パスを入れてそのままコントロールシュートを放つもGK藤田がキャッチ。ロメロ、本間を釣り出すことで後列の中島やゴンザレスも揺さぶられ、スペースが出来てDHの間を割る縦パスも何本も見られた。

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修正された新潟の守備

 20分すぎて飲水タイムで試合が一時中断となる。ここまでヴェルディに面白いようにボールを繋がれている新潟は再開後から守り方を替えてきた。最前線の渡邉を中心にプレスバックやチェイスが増し、一度ボールが取れなくても再度追うことで数的不利になっていたロメロと本間の場所へプレッシャーを強めたり、追いつくことで数的同数を確保することが出来て、ヴェルディのパスコースをかなり限定することに成功した。

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 だんだんとヴェルディの攻撃に迫力が落ちていき新潟が盛り返していく。35分、舞行龍からのロングフィードを渡邉が落としてロメロが豪快にシュートを放つ。45分+1分には左サイドを突破した渡邉が速いクロスを入れてニアへ走り込んだロメロが合わせるもゴールラインを通過。両チーム攻撃は仕掛ける展開になったがスコアレスで前半を折り返す。
 お互いに様子見もあったのかメンバー変更なしで迎えた後半、新潟はヴェルディのフロントボランチ井出と優平に対して中島とゴンザレスが確りと寄せていき更に圧を高めていき主導権を握っていく。
 54分に両チーム合わせて5枚替えにシステムと配置が変わる。ヴェルディはスピード溢れる小池と山下を両翼に構えて、中央に優平と潮音が入りゼロトップ気味になる14222システム。一方の新潟はエース・ファビオをトップに入れて、左SHへシルビーニョ、レフティの島田が中盤の底へ入る。

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 ファビオ、シルビーニョとパワフルな助っ人を投入してペースを掴んだ新潟が攻勢を強める。62分、中島が奈良輪を交わして斜めに走る渡邉へ。中へ走り込んだファビオにボールが渡りシュートを放つがGKマテウスの好守で防ぐ、そのこぼれ球をシルビーニョが押し込むもここも防がれてCKへ。CKやロングスローのチャンスが新潟に増えてきて得点の予感がし始める。

待望の復帰後初ゴール

 劣勢になりつつあるヴェルディは69分に山本理仁、77分には森田晃樹、福村を投入して交代枠5枚を使い切る。左サイド山下のスピード溢れる攻撃を軸にサイドから仕掛けていくとトップには晃樹が入りゼロトップのため新潟2CBはマークするのかその場にとどまるのか曖昧な対応を迫れてヴェルディがPA内へ進入してゴールを脅かす場面が続く。

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 そして、均衡がついに破れる。79分、獲得した右からのCKをニアで合わせた祥平が上手く叩きつけたヘディグシュートを決めてネットを揺らす。ヴェルディが先制に成功する。

 1点リードしたヴェルディはボールポゼッションを上げてリードを守り切ろうとする。対する新潟はボール奪取すると手数をかけずにカウンターという構図になる。85分、中へ切れ込んだシルビーニョからファビオを繋ぎ、渡邉へ。しかしこのシュートは枠外へ。堀米と大本を投入してサイドを分厚くして、DH島田が2CBの間へ下りて正確なボールを前線へ供給して再びCKやロングスローのチャンスを作ると、試合終了間際の92分、左サイドから新井が入れたロングスローを飛び出したGKマテウスが触れられずファーで待ち構えていた渡邉へ。これを丁寧にボレーシュートを流し込み新潟が同点に追いつく。あと少しのところで勝ち点3を逃したヴェルディにとっては痛い引き分けとなった。

まとめ

 攻撃的サッカーを掲げる両チームだけあってボールを丁寧に繋ぎ、崩すものかと思ったが、連戦や気候などの条件もあり手数かけない攻撃が多かった印象だった。最後に追いつかれて同点で終わる悔しい結果に終わったが、それでも組み立ての部分や選手の配置、それへの対策や修正が試合中に随所に見られて改めて見返し見ると面白い内容であった。新監督を迎えた新潟のサッカーの仕込み具合は上々と感じた。
 前線で身体を張ることが出来る端戸から潮音、晃樹へ変えたことで今季のここまでの戦いぶりでは一番ゼロトップっぽいサッカーになっていた。今後のオプションとしても出てくることが考えられる。
  失点の場面ではまたしてもロングスローから招いた形であり、全体的にサイズ感があるわけではないためCKも含めて守り方の精度を上げていく必要がある。
  祥平をヒーローにしたかったなぁ。次節に期待したい!