【雑感】2022年J2リーグ 第42節 対ファジアーノ岡山~何が足りなかったのかを探す90分~

東京ヴェルディ 2-0 ファジアーノ岡山

 シーズン最終戦、5連勝の勢いそのままに強度の高いサッカーを披露したヴェルディが6連勝を達成。相手の動きをよく見て何度もその隙を突き得点を奪えた先制点。その狙いを考えながら試合を振り返ってみたい。

スタメン

 前節で首位新潟に1-0で勝利し5連勝のヴェルディ。昇格PO進出の夢は途絶えて迎えた最終節。この日は佐藤凌我が久しぶりのスタメン起用。河村が右SHへスライドしこのところ固定されている1442システムで臨む。
 対する岡山は前節・秋田に敗れて自動昇格を逃し、3位が確定。昇格POを控えていることもあり6名を入れ替えて臨む。

前半 

 目先の目標が無くなり”消化試合”となった両者。3位フィニッシュの岡山で注目したのは左サイドの佐野航大だ。米子北高校卒の1年目のルーキーながら3得点を挙げて日に日に存在感が増すばかりである。町田の佐野海舟の弟であることでも有名である。
 この試合での立ち振る舞いを見て行くと、岡山はボール保持時には最終ライン3枚、非保持時は成瀬が右SBで4バックまたは佐野も下がり5バックとなる。成瀬はWB⇔SB、佐野は中盤と最終ラインを両方こなす役割を担っていた。攻守で可変するシステムを取り、背後を取られないように5バックで蓋をする時間帯も続いた。前線は個の力ある外国人選手を中心に攻撃を仕掛けた。

 立ち上がり、岡山は1442もしくは1532から2トップのハンとチアゴが前からガツガツとプレスをかけていく。中盤でボール奪取すると、ゴール方向へ素早く攻めて行き、佐野が立て続けにミドルシュートを放つ。 

 2トップの片割れがCBを引き連れてサイドへ流れてSB裏のスペースで起点を作ってクロスからの攻撃を何度も見せて行く。加藤蓮の背後を使うことが多かった印象がある。しかしながら決定機までは至らず、得点を挙げることは出来なかった。

 一方でヴェルディは1442または1532で守る岡山に対してGKマテウスも使いながら最終ライン4枚で丁寧にパスを回して自陣から組み立てる。マテウスがボール持つと2CBンドカと谷口栄斗は横並びになるように大きく開く。岡山が前から来るようならば馬場晴也と森田晃樹の2DHを飛ばすように縦パスを入れる。ムークが行方不明になることが散見され仙波と本山の2枚で横幅を守ることが強いられて中盤を割ることが多く、染野と佐藤凌我にパスが通ることが目立った。自陣から敵陣への侵入が容易に出来た印象である。

 敵陣に侵入すると、この試合では佐野の可変時のポジショニングの曖昧さがヴェルディに有利に働くことになった。パススピードを活かしたままゴールへ向いていくことが出来なかったときは一旦落ち着かせて再び組み立てるが、佐野が戻り切れないと見ると右SH起用されて大外に張る河村へ馬場からのロングパスが21分、27分と2回見られた。狙いを持った良い形の攻撃でリズムが生まれてくる。

 すると、34分。自陣でボールを持ったンドカ。スペースがあると見たらそのまま持ち運び、中央突破。本山の脇で染野がボールを貰うと梶川を経由して左の加藤蓮へ。ここからのクロスにファーでフリーになっていた河村がヘディングシュートを決めてヴェルディが先制。中央突破と大外を使った見事な攻撃から得点を挙げる。ルーキーの河村はこれで3点目。すべてがヘディングシュート。得点以上に数字では表し切れない献身的なプレーは大きくチームに貢献しこの1年間の頑張りのご褒美のように最終戦で結果が出た。

 5連勝中のヴェルディが先制点を挙げて前半は1-0で折り返す。

後半

 ハーフタイム明け岡山は成瀬に代えて永井を投入。佐野が右へ回り、ハンが左サイドへ下がる。徳元が左SB色を強くして1442システムになる。一方のヴェルディはメンバー交代は無し。2CB柳と濱田の脇へ本山が下りてボールに触る機会も増えてくる。

 4-4のシンプルな構図になったこともあり河村-奈良輪、梶川-加藤蓮とサイドで数的優位を作って馬場と森田の中盤から上手くボールが供給されてフィニッシュまで持ち込むことが増えたヴェルディ。

 60分にお互いにメンバー変更。ヴェルディは梶川に代えて深澤大輝を投入して右SBに入る。奈良輪が左SBへ回って加藤蓮が1列上がるここ最近の定番の交代策をする。岡山はチアゴに代えてデューク、仙波に代えて河井を投入。河井がアンカーで本山が右CBの変則3バックとなる。

 メンバーと配置を替えつつ次の1点をめぐる攻防かと思われた矢先、ミスから試合が動く。岡山の最終ラインがパスミスをして佐藤凌我そのボールをさらい上手いコース取りのドリブルで持ち運ぶと堀田のポジショニングをよく見て上手く流し込みヴェルディが追加点を挙げる。凌我は昨季に続きデビューから2年連続で13得点を挙げる。ワンタッチゴールが多いものの今季はドリブルも含めた得点もあり、そのバリエーションが広がった。前線からの守備など献身性は変わらずに素晴らしく、今季はポストプレーも上手くなりFWの選手としての質がさらに高くなった。

 2点差としたヴェルディはすぐの攻撃で右サイドからのクロスを染野がドフリーで受けるも上手くシュート出来ずに3点目を逃す。染野は4戦連発とはならなかったが、この日もライン間でボールを上手く受けたり、空中戦のターゲット、セットプレー守備時には先にボールに触れてクリアする機会が多く、継続して試合に出ることで自分の色が上手く表現されることが出来た。

 2点リードになったヴェルディは平、加藤弘堅、阪野とベテラン勢をセンターラインに次々に投入して落ち着いてゲームコントロール。終盤にクロスバー直撃のシュートを浴びてヒヤリとする場面があったものの最後までリードを守って最終戦を勝利で飾り6連勝でシーズンを締めくくった。

まとめ

 質が高く最後まで高い集中力を見せて全力で戦い抜いた緑は6連勝で果たした。離脱していたメンバーが戻ったことと戦術と意識の浸透が上手く嵌り最終盤になって内容も伴う戦いぶりであった。試合後の監督挨拶で言及されていたように、たった勝点3の差で世界が変わってしまうものであるがその答えを探すために選手たちは必死にプレーし続けたと見ていても伝わってきた。
 若い選手が多く、粗削りな部分もまだまだ見られるが確実に成長している姿を年間通して感じられた。これからの移籍市場などは未知な面があり、J2というカテゴリーはまだまだ弱者の立場でであることは変わりない。出来ることを確りと行なって良い形で新シーズンを迎えて貰いたい。