【雑感】2021年J2リーグ 第5節 対アルビレックス新潟~史上最悪の試合~

東京ヴェルディ 0-7 アルビレックス新潟

 最悪の流れで迎えた一戦。公式戦無敗と相性抜群の相手・新潟戦であったがついに運にも見放されて、これまでの負の積み重ねがすべて出てしまい、7失点。おそらく、ヴェルディ史上最悪の試合になってしまっただろう。何が原因かを考えまとめていきたい。

スタメン

 前節・金沢相手に幸先よく先制するも守備崩壊から2-4と逆転負けを喫したヴェルディ。CBには馬場晴也が2戦ぶりに復帰。富澤と左SB安在はそれぞれ復帰後、初スタメン。加藤を底へ配置して、井出、佐藤優平の3枚で中盤形成。左ワイドには今季初スタメンの松橋優安を抜擢して1433で臨む。
 対する新潟は開幕4連勝と絶好調である。前節と同じ11名で臨む。高木は古巣との対戦になる。

画像1

リズムを生まない消極性

 開始早々に左サイドでボールを持ったのは、今季初スタメン起用された優安。果敢に仕掛けていきシュートを打つのかと思うとパスで繋ぐことを選択した。こうした姿勢がシュート数がリーグ全体で少ないことであり、自分たちのリズムが生まれない原因を象徴するような場面であった。

 得点王の小池はこの日もスタート位置がタッチライン際の大外に居た。得点量産しているのは持ち前のシュートテクニックを発揮出来ているからであり、そのためにはPA内に居ることが必要である。ほかに得点力がある選手が不在にもかかわらず、最も攻撃力ある選手にサイドで仕掛けることを徹底させていては攻撃の迫力がガクッと落ちてしまう。立ち上がりの配置を見たときに、得点の期待値は一気に下がってしまった。試合を通じてPA内でシュートを放つ場面はチームとして何回あったのだろうかと数えるばかりであった。

画像2

共有されていない設計図

 ヴェルディの最終ラインが新潟の前線からのプレッシングを搔い潜ると中盤にぽっかりと空いたスペースで前を向いてボールを持てる場面が続く。新潟最終ラインと駆け引きして裏抜けを試みようとする端戸、優安に対してボールを持っている井出はキープすることで一旦、落ち着かせようとする。パスの出し手と受け手のイメージが共有されておらず、攻撃が停滞する。

画像3

 ボール保持しながら敵陣に入っていくがシュートまで行けずにいると新潟には4-4守備ブロック形成する時間を与えることになる。サポートのつもりでヴェルディの選手たちが続々と敵陣へ入っていってパスをぐるぐる回す内に配置がぐちゃぐちゃになっていく。固く敷いた守備を崩せないでいると、ボールを失うことで新潟のカウンターを受ける。新潟は空いたスペースを上手く突き、素早くフィニッシュまで持っていく。

画像4

なんちゃってディフェンスのツケ

 ボール保持した新潟はCB舞行龍と千葉にDH高が絡む。ボール前進出来ないときはGK阿部へバックパスをして仕切りなおす。ヴェルディは端戸と優平の2トップ化で1442で守る。前節・金沢戦同様にプレス強度は緩く、中盤の選手たちのプレスの連動性も精度を欠き『パスが渡ったから守備をする』状態になっていた。パスコースを読んだ守備が出来ずに、ボールホルダーへ一直線にプレスをかけに行くだけになっていただけで、新潟は少し横ズレしたり斜めの動きを入れるだけで簡単にボールを運ぶことが出来た。

画像5

 これまでの試合同様にロメロフランク、鈴木が右サイドへ流れてきてポストプレーを行なう。対面した安在とのフィジカル差は明らかであり、面白いようにサイド攻撃を仕掛けていく。安在が引っ張り出された時に生まれるスペースをCBが横移動するのか、DHが斜めに下りてくるのか、SHが最終ラインまで戻ってくるのか規則性が見受けられず即興性の守備になっていた。立ち上がりこそ、守れた時間もあったものの何度も仕掛けられるうちに崩壊を辿っていく。

画像6

意味を成さないビルドアップ

 ヴェルディはボール保持時にSB安在が一列上がり加藤と横並びのようになり3-2の形を作る。ただ、個人技術のミスが重なりボールロストする場面が目立った。5枚の距離感も近い=新潟選手たちの距離感も近いためボールを奪われたらカウンターに転じる新潟選手たちの枚数も多く、前後半で何度もチャンスを作っていく。3-2を作る意味や選手の距離感の近さを見つめなおす必要があるだろう。

画像7

 自陣の深い位置からボールを繋いで行き、相手選手を多く誘導して、敵陣へ入った時に枚数を減らすことがビルドアップの本来の目的であるだろう。しかし、シュートまで時間をかけるようならば、自陣で時間と人数をかけて相手を剝がしても、再びブロックを形成されるだけでビルドアップの意味が無いだろう。

積み重なった負の結末

 戦術云々よりも球際の激しさや貪欲性に欠いたヴェルディは集中力の切れた一瞬の軽いプレーから2失点を喫する。

 後半も上記のような事象が連発して、次から次へと失点を重ねる。戦意喪失したイレブンにはもはや覇気を失っており史上最悪と言ってもいいワーストのゲームで大敗を喫した。

まとめ

 前節の大敗を受けて、永井監督は自らの弟分と言える富澤をCB起用した。低調が続く佐藤優平や端戸を頑なに起用し、劣勢の後半開始からは教え子の山本理仁を投入した。『これでダメなら諦めがつく』とでも思わせるくらい永井監督の意思が現れたメンバー構成であった。
 かねてから危惧していた様々なことがピッチ上ですべて出てしまい、いままでは対戦相手の状態もあり誤魔化せていたが、絶好調の新潟に奈落の底に突き落されただけだろう。
 就任してから改善されない攻守の課題、理想へ突き付けられた現実。飛び方を忘れてしまった緑のコンドルには限界が訪れた。我慢比べをすればするほど、最悪の結末が近づく。