【雑感】2023年J2リーグ　第23節　対ロアッソ熊本～苦手払拭、シーズンダブル～

東京ヴェルディ　1-0　ロアッソ熊本

　欲を言えばもっと得点の欲しかったゲームであった。前節の勢いそのままに良い入りで先制点を奪い、そのあとも固い守備で逃げ切った試合を振り返りたい。

スタメン

　前節・山形に2-0で勝利しアウェイ6連勝のヴェルディ。天皇杯含めた5連戦の初戦となったこの日は前節とスタメンもベンチも同じ編成で臨む。
　一方の熊本は前節・磐田に0-2で敗れ、ホーム4連敗無得点と対照的だ。この日は島村がスタメン復帰し、左WGに起用、その他の10名は同じメンバーで挑む。

前半

　前節の熊本対磐田を見ているかのような試合の入りになった。その試合では磐田が熊本3CBの脇＝WB裏を再三狙っては守備ラインを乱してクロスからの得点をかっさらった。ヴェルディも早々に左サイドからの攻撃で山田がいつものように左に流れて黒木の脇を突く。北島にボールが渡るとクロスを入れる。田代に処理されるもボールは流れて右サイドへ。攻撃参加した宮原がファーへふわりと浮かした高いボールを蹴り込むと、「なぜそこ大輝」でもはやお馴染みの深澤大輝のPA内への攻撃参加から打点の高いヘディングで折り返し最後は齋藤がボレーシュートでネットを揺らす。開始2分でいきなりヴェルディが先制に成功する。齋藤は2戦連発の今季4得点目。昇格には中盤の選手の二桁得点は必要不可欠なので得点力にさらに磨きをかけて欲しい。

　さぁ、勢いつく流れで先制したと思ったらここで審判の機材トラブルが発生し試合が一時中断する。結果的にここで試合が止まったことが水を差してしまったとも思えた。

　いきなり出鼻を挫かれた熊本であるがボール保持したプレースタイルに代わりは無くサイドを広く使った13133で位置を取る。ヴェルディは前節山形戦同様に前線2枚と中盤4枚が敵陣に入りハイプレスをかける。3CBを2トップ山田と齋藤がアンカー上村を消しながらプレスかけSHバイロンと北島はWBと対面するCB黒木と大西を両方とも見れる位置に取りプレス対応。稲見と森田晃樹も平川を見ながら北島とバイロンとマークを受け渡しながらWBのところまで対応する。各自が2名を見るような良い立ち位置を取りプレスとプレスバックをかけて熊本にビルドアップで自由を与えない前線からの激しい守備を見せる。左サイドの北島と稲見はプレス、プレスバックがかなり利いておりWB大本にも高い位置を取らさず、熊本の攻撃の1つの持ち味でもあるCBの攻撃参加もスペースと時間を与えない完璧な守り方を披露する。

　ヴェルディの堅い守りに熊本は人とボールに斜めの動きを加える。左WG松岡が中央へ寄ってきて全体が右サイド寄りで数的優位を作り始め、トップ下・平川がボールに触れる機会が増え攻撃にリズムが生まれる。右の竹本が斜めに入り、ゴール前へ速いシュート性のボールを供給し粟飯原がコースを変える惜しいシュートを魅せる。竹本が中へ絞ったことで深澤大輝をあえて1列前の大本に喰いつかせて竹本が裏を取りサイド攻撃をするなどチャンスを作った。前半の最大の決定機は37分の右サイドからのCKだった。平川がショートコーナーからデザインされた崩しを見せて最後は粟飯原がフリーでシュートを放つも枠を外してしまった。

　根気強くボール保持に徹底し攻撃しかける熊本にヴェルディは低い位置からのビルドアップで落ち着かせようとする場面が何度か見られた。最終ラインのビルドアップには粟飯原、両WGがプレスかけるもマテウスのところまではプレスに来ないためここで一旦流れを止める。右利きのマテウスは左SB深澤大輝へミドルパスを通すもここでのダイレクトプレーで前進できたり、取られたりと五分五分の状況であり、それならばドカンと大きくマテウスは蹴るべきであっただろう。

　先制したものの自陣でのプレー時間が長いヴェルディであったが間延び気味の熊本のスペースをよくみて晃樹や齋藤が間、間でボールを上手く受けて前進させたり、裏抜けする山田へスルーパスを入れてフィニッシュと地上戦を使う。右サイドでバイロンがフリーのタイミングだったら谷口栄斗らが大きくサイドチェンジして単騎突破からのクロスを入れる。先制点のように人数をかけた厚みある攻撃になればよかったものの早いタイミングでのクロスが多く熊本守備陣に跳ね返されることが多かった。セカンドボール、トランジションに対してボールに反応が一歩遅くなっても稲見が持ち前の体幹の強さを活かして相手へ身体をぶつけながらコースを塞ぎボールを奪い返す場面が何度も見られ、高い位置でボールカットすることでカウンターのピンチを防ぐ活躍ぶりを魅せてくれた。プロの強度にも慣れてきて逞しさが増し、チームを牽引しつつある存在である。決定機は何度かあったもののボールを繋ぐことを意識しつつ粘り強い守備もありお互いにシュート場面は少なく1-0でヴェルディリードで45分を終える。

後半

　メンバー交代無しのヴェルディに対して、1点ビハインドの熊本は粟飯原に代えてベテランの伊東を投入。前節同様に伊東がトップに入る布陣になった。後半もまずチャンスを作ったのはヴェルディだった。晃樹が熊本守備陣の背後へボールを供給するとCB脇から抜け出した山田がシュート。枠を捉えたものの田代に防がれ、そのあとのCKもモノにはできない。

　熊本はビルドアップ時にアンカー上村が最終ラインに落ちて4枚になり、平川、伊東がそれに伴い1列下がる形になる。横広がりの4枚のビルドアップに対してヴェルディのプレスが追いつかないことが出てくるとロングボールから背後を狙う。右WB大本、ゼロトップのような立ち振る舞いをする伊東が抜け出しを試みるも決定機には至らなかった。

　55分、ヴェルディは北島と山田に代えて甲田と河村を投入。連戦も考慮したメンバー交代であっただろう。フレッシュな選手を入れたもののプレスが抜群にはまったわけではなく、熊本に縦パスを通される場面が増えてきた。ここで存在感を見せたのが山越と谷口栄斗の両CBであった。抜群の読みでタイミングよく前へ出てボールカットをする場面が何度も見られ、中盤での潰し合いが続く。ギアを上げたい熊本は竹本と松岡に代えて田辺と東山と左サイドのセットを丸ごと交代する。

　ヴェルディは甲田がドリブルで仕掛ける場面を何度か作り、トップの河村も裏抜けからチームとしても久々のシュートを放つ。拮抗したなかでこのシュートで再び流れを掴むと直後の右からの攻撃で宮原、河村と繋ぎクロスに絶妙なタイミングで攻撃参加した左SB深澤大輝が豪快なシュートを放つも田代の好守で得点は奪えなかった。追加点の欲しい時間帯であるがなかなか得点が挙げられない展開が続く。

　ヴェルディは75分過ぎにバイロンと齋藤に代えて佐川と加藤蓮を投入。佐川はそのままトップに入り、蓮は左サイドに入り河村が右に回って甲田がトップ下のような形になる。熊本のサイド攻撃に走力で蓋をしようとする狙いがあった。

　そのあとには森田晃樹に代えて綱島悠斗を入れて中盤の守備力を上げて試合を〆にかかる。右の河村は最前線へのプレスに最終ラインまで下がっての守備とチームプレーに徹した。佐川は長身を生かしてロングボールのターゲットとしてポストプレーでボールを収める。

　一方の熊本は島村に代えて長身の大崎を最前線に投入。高さが出来たことでサイドから多少アバウトなボールでもクロスを入れ反撃に出る。獲得したCKには田代も攻撃参加へ繰り出す。後半AT、右からのCKに田代がドンピシャのタイミングでヘディングシュートを打つもマテウスがガッチリキャッチして最後までゴールを割らさず開始早々に挙げた虎の子の1点を守り切ったヴェルディが2連勝、アウェイ7連勝で2位浮上を果たした。一方の熊本はホーム5戦無得点の5連敗となった。

まとめ

　他会場の結果もあり必勝の状況で迎えた日曜ナイターゲームで確りと勝点3を手に入れたのはお見事だった。前節の熊本のプレーぶりを見て、よく分析したうえでの試合の入り。狙いを持った形での先制点はとても素晴らしいものであった。その後はボールを握る熊本の攻撃に耐える時間帯も続いたが逃げ切りに成功した。相性の悪い熊本の地で2016年ぶりの勝利を飾りシーズンダブル達成。
　宮原、山越らの守備陣はこの日も高パフォーマンスを見せてアウェイ7連勝、13回目の完封に貢献。前線の山田、齋藤、北島、バイロンも小柄ではあるものの攻守において強度の高いプレーで相手を圧倒。このユニットのパフォーマンスも今後も楽しみである。
　次節は中2日で迎える長崎戦。移動、連戦のなかであるが順位が近い相手だけに手堅く勝利を収めたい。