【雑感】2023年J2リーグ 第13節 対ジュビロ磐田~つかみ損ねた歓喜~

東京ヴェルディ 0-0 ジュビロ磐田

 昇格を目指す以上、離脱者が多いとは言え、勝たなければいけない試合だった。前半はセットプレーで後半はサイド攻撃で得点を目指したもののスコアレスドローに終わった試合を振り返る。

スタメン

 前節・水戸に2-0で勝利し連敗を2で止めたヴェルディ。連戦ではあるがスタメン11名は前節から変わりなく臨み、杉本竜士を中央で起用する。
 一方の磐田は前節・徳島に2-3で敗れ、この日は5名を入れ替えて臨む。GK三浦はリーグ戦今季初スタメンになる。

前半

 14,000人を超える観衆を集めた一戦、連勝を目指すホームのヴェルディは立ち上がりから攻めて行く。右サイドのバスケスバイロンを活かした攻撃を魅せるといきなり右からのCKを獲得。キッカーのエンゲルスがアウトスイングのボールを入れるとドンピシャのタイミングで合わせた綱島悠斗がヘディングシュートを放つも惜しくも枠外へ逸れた。セットプレーからの失点がリーグワーストの磐田相手にそれを利用したように挨拶代わりにジャブを与える。競り合いでは先に触れられることもしばしばあるヴェルディであったが1本目のCKで勝った姿を見ると、空中戦での優位性をこの試合では感じた。磐田の空中戦での弱さもあっただろうが、ヴェルディもよく研究してきていた。

 ヴェルディのビルドアップに対して磐田は後藤と山田の2トップで上原と山本の2DHは山本が下がり気味で縦関係になって14132でプレスをかける。ロングボールでバイロンを走らせて陣地を稼ぐヴェルディであったがアバウトなボールで勝負することから流れの中での攻撃はさほど効果は出ていなかったがバイロンが右で溜めを作ることでセットプレーを獲得し、二度三度とチャンスを得た。18分、右サイドで獲得したFK。エンゲルスのプレスキックに再び綱島悠斗が合わせるもポストに嫌われ跳ね返りを再度詰めるもクロスバー、そのこぼれを加藤弘堅がプッシュするも枠を外し超決定機を逃す。

 一方の磐田は攻撃時にSH松本とドゥドゥが中へ絞り大外をSB鈴木雄と松原にコースを空ける。SBを高い位置へ上げて2CB鈴木海とグラッサに上原や山本が加わり最終ラインでのビルドアップを形成。杉本竜士とエンゲルスのプレスに対して斜めのパスを入れて回避したり、連動してプレスする中盤4枚を一本のパスで交わして一気に打開していいく。選手たちの距離感が近く、MF裏でボールを貰い複数名が絡むパスワークからヴェルディゴールへと迫る。ハーフスペースと大外の横列が被らないように配置して斜めのパスコースを確保することが多く、インナーラップからサイドを崩そうとする場面が何度か見られた。

 ペナ角を取る動きからサイドを崩そうとするもヴェルディの身体を張った守りもありPA内にはなかなか侵入出来ず、ブロック外からのミドル、ロングシュートで終わるばかりであり枠を捉える脅威にまではならなかった。ここまで4得点を挙げている注目の17歳FW後藤も林と平の身体を寄せた上手い守備に苦戦し、存在感を示すことは出来なかった。

 ボールを握りパス本数やシュート数は磐田が上回っていたが決定機で言えばヴェルディが多く作れていた。先ずは守備から入り失点ゼロで、攻撃は形は作れなくてもセットプレーでと言う狙いがあっただろうから再三のチャンスをモノに出来ず悔やまれる45分であった。

後半

 ハーフタイム明けからヴェルディは杉本竜士に代えて阪野を投入。左SHであまりボールに絡めずにいた森田晃樹を中央へ回して、トップにいたエンゲルスが左へ移り、右のバイロンと個の仕掛けが出来る両翼を形成し勝負をかける。

 これまでの記事でも触れているようにボールに触れることでプレーにリズムが生まれて一際存在感を示す森田晃樹、この日も後半のプレーぶりは健在であった。スタートからそうすれば良いではと思ってしまうがいまのメンバー事情等を考慮して前半は抑えて後半の勝負所での起用になっているのかもしれない。
 中盤で晃樹がプレー関与する機会が増えてることで後半は一転してヴェルディがボールを握り敵陣へ侵入する。中央で溜めてサイドへ散らし、エンゲルスとバイロンの個の突破とクロスでチャンスメイク。磐田ゴールへ迫る場面が増えていくも今季初出場のGK三浦、CBコンビの鈴木海とグラッサの真ん中3名の堅さで牙城を崩すことは出来ない。

 対する磐田は後半立ち上がりのプレーで足を痛めた後藤に代わってジャーメインが投入される。身体を巧みに生かしたポストプレーで前線でターゲットになり、前半のようにサイドへ展開して崩すことに加えてシンプルにジャーメインに当ててボールを収めてもらうことで陣地と時間を稼ぎ反撃に出る。ヴェルディの前線からのプレッシングに対してのテクニック溢れるパスで上手く交わして自陣から敵陣へ入っていく。左から松原、途中出場のドリブラー古川が攻め込みヴェルディ守備ラインを乱すとPA内へ侵入しクロスからの決定機を作る。あとは流し込むだけという場面が2度ほどあったがいずれも枠を捉えることが出来ずに得点を挙げられなかった。

 ヴェルディも加藤蓮、北島、山田とスプリント力がありオフザボールの動きにも長ける選手たちを続々と入れて間延びしつつあるピッチを走り回る。残り10分ほどはお互いのゴール前へ行ったり来たりする展開へ。両者の途中出場の選手たちがボールを運びスプリントするなかでスタメンで出場していたバイロンは最後まで体力も落ちずにフルパワーで走り切り、着々と力がついてきていることが十分に証明されていた。最終的にはスコアレスドローでタイムアップ。上位戦線に喰らいついていきたいヴェルディにとっては痛恨のドローとなった。

まとめ

 連戦でありながらもメンバー構成に変化が無かったのは前節の勝利の勢いでは無くて離脱者の多さがあったからのようだ。そんな状況の中でメンバーのキャラクターを見極めて適切な配置とメンバー交代を見せたベンチワークであった。押し込まれる時間帯も多く攻撃の形は少なかったが狙い通りのセットプレーからのチャンスなど得点機はあり、したたかに勝たなければいけない試合だった。
 後半に何度かピンチを招いたものの2戦連続完封した守備。最前線に杉本竜士を入れたことで強度が盛り返し、プレスやプレスバックも勢いが出てきている。前からの守備が嵌ることで後ろの選手たちの守備もやり易く好循環が再び生まれているようにも見える。やはり、あとは決めきる、ゴールを奪い取る力だろうか。強引なシュートではなくてより確実なパスや折り返しのクロスと安全を選ぶ場面がこの日も見られもっと積極性や貪欲性がみたい限りだ。GW連戦の最後は上位につける絶好調・長崎戦。勝点3が必須の一戦だ。