【雑感】2022年J2リーグ 第31節 対水戸ホーリーホック~クラブの描く未来像~

東京ヴェルディ 2-1 水戸ホーリーホック

 試合終了後のインタビューで城福は恨み節全開であった。何を隠そうこの一戦は、誰もが中止と疑わない酷い台風の中でも水戸運営が開催発表されながら直前で中止を発表した雑な対応があった因縁だからだ。後味悪さが尾を引き絶対に勝たないといけなかった試合で長いトンネルを脱出したゲームを振り返っていく。

スタメン

 前節・町田との東京クラシックに2-2で引き分けたヴェルディ。公式戦8試合未勝利と絶不調の状況で迎える中2日の試合。この日は7名を入れ替えて臨む。左SB佐古真礼はリーグ戦初スタメンとなる。U21日本代表選出の馬場、インドネシア代表選出のアルハンは不在になる。
 一方の水戸もリーグ戦3連敗と苦しい状態だ。この日はCB山田以外の大胆にも10名入れ替えて臨む。CBブローダーセンは初出場である。平均年齢22歳ととても若い11名である。

前半

 当初は8月に行われる予定だった一戦。台風の影響で延期となりようやく迎えたこの日。それまでの期間、お互いに調子が上がらないどころか低調・絶不調になりJ1昇格PO圏内からも遠ざかる状態になってしまった。

 連戦とチーム状況もあり、お互いに前節から大幅にメンバーを入れ替えて出場機会の少ない選手がピッチ上には多く名を連ねた。長年J2を見ているが名前とプレースタイルが一致しない水戸の選手がちらほらいるくらいに若い選手が多かった。

 両者1442システムを採用したことで対面する形となる。メンバーを大幅に入れ替えていることで連携面の弱さもあったのかアバウトなボールを蹴り入れて最終ラインの背後を狙う展開が見られた立ち上がり。

 水戸は2トップ+ボールサイドのSHでヴェルディ4バックへプレッシングをかけるオーソドックスな守り方をする。ヴェルディも同じようにプレッシングをかけるもその質は水戸の方が上手だった印象だ。ヴェルディは水戸のプレスを前に中盤を経由しなかったのか意図的に省略したのか、1列2列飛ばすようにシンプルにボールを蹴り入れて陣地を稼ぐ。水戸の2CB山田とブローダーセンの連携があまり良くなく、この間を割るように河村や阪野が飛び出してPA内へ走りこむ場面が見られた。前節、移籍後初ゴールを決めた阪野は積極果敢にシュートを放つ。J2で実績のあるストライカーはさすがのシュート精度の高さを見せてチームを牽引していく。

 一方で水戸はヴェルディのプレス質に助けられた部分もあり、徐々にサイドで起点を作りSB裏を取るようになる。ヴェルディの中盤4枚は縦スライドでプレスをするも後ろのSBが連動していなかったり水戸のパスを受ける選手に対して中盤の宮本や小池の走る距離が長くなりスペースと時間を与えてしまい、追いつく前にボールを叩く形が見られた。右SB深澤大輝と左SB佐古真礼の裏を狙い、特に左SB佐古は狙われていた。SB後藤田が長い距離を走り攻撃参加し、小池がつくのか稲見が見るのかも曖昧なことが多く、佐古は1対2を作られリーグ戦初スタメンはほろ苦いものになった。

 中盤でボールを扱える選手が少ないこともあり、ショートパスよりもミドル・ロングパスが飛び交う試合展開。19分、自陣で倒された宮本がすぐさまリスタート。浮き球で2CBの背後へ走り出す河村へパスを出すと、ゴールラインギリギリで河村が折り返す、中山が弾きだすも後方から走り込んだ阪野がそのこぼれ球をダイレクトで上手くゴールへ流し込みヴェルディが先制に成功する。阪野は2戦連発となり起用に見事に応えてみせた。

 先制したヴェルディであったがそのリードを守ることは出来なかった。攻勢に出た水戸が流れの中から左SH起用の柳町が右へ流れて、佐古の背後を取ると、マイナスのクロスを入れる。PA外から唐山がグラウンダーで上手くシュートを流し込みすぐさま同点に追いつく。

 お互いにFWが結果を出した前半であるが、逆に言えば守備面での弱さがそのまま出てしまった失点であった。

 ヴェルディは河村のシュート、CKから平のヘディングシュートと見せ場を作るも勝ち越し点は挙げられず1-1で折り返す。

後半

 ハーフタイム明けヴェルディは佐古、阪野に代えて奈良輪と佐藤凌我を投入。水戸はブローダーセンに代えて楠本を入れる。阪野は負傷明け、連戦を考慮しての交代であっただろうが、佐古とブローダーセンは相手から散々狙われ失点にも繋がったこともあり交代を命じられたのであろう。

 後半に入っても試合内容は同じように繋ぐよりも蹴っていく感じであった。攻撃の形が出来ているのではなくて守備も脆さでゴール前まで運びシュートに至っている印象であった。

 そのあとに水戸は土肥が、ヴェルディは加藤蓮と森田晃樹が入り中盤を入れ替えて主軸選手たちがピッチに立ちプレーの質が少しずつ高まっていく。水戸はSHがヴェルディのSHをピン留めするように内へ絞り空けた大外を後藤田と大崎が果敢にアップダウンしてサイドから仕掛ける。前節のヴェルディが見せたような攻撃である。これにヴェルディは上手くハマリサイド攻撃を許すことになる。左SB大崎は上のクラブへ行きそうな質の高いプレーに思えた。

 一方のヴェルディの攻撃で光ったのは森田晃樹である。優れたボールキープ力はピッチ上で際立ち、中央からゴリゴリドリブルで1人2人交わしてみたり、スルーパスでチャンスメイクと貫禄がつきつつある素晴らしいものを魅せた。J2のなかでも日に日に存在感を増すプレーでこの日も流れを引き寄せる活躍であった。

 ゴール前での細かなプレーで相手を追い抜く動きが出来つつあるも得点を決められないヴェルディ。しかしこの日は諦めてなかった。88分、敵陣まで入っていた平が相手よりわずかに先にボールに触れると右の深澤へ。深澤は縦に仕掛け、相手を交わし切る前にファーへクロス。左サイドに配置換えしていた河村が飛びながら折り返すと、最後は佐藤凌我が身体ごと押し込み決勝点。ヴェルディが2-1で勝利を挙げて公式戦9戦ぶりの勝利を手に入れた。

まとめ

 ようやく勝利を手にしたヴェルディ。内容は試合のたびに良し悪しが極端で一貫性があるかは微妙であるがいまの状況を脱却するには結果が欲しかっただけに阪野、佐藤凌我と点を獲るべく選手が獲って勝てたことは大きい。
 梶川、森田が不在で誰がキッカーを務めるのか注目したがSH起用された宮本であった。鋭いボールを蹴り込んでいて今後も面白いのではと思う。出場を続けるには得点やアシストと結果が求められるだけにぜひともプレースキックの武器を身に付けてもらいたい。宮本以外にも90分最後まで走り回った稲見と河村、途中出場で前線起用された加藤蓮、得点に関与した深澤と佐藤凌とアスリート能力の高い大卒出身の若い選手たちの躍動はクラブが描く理想に近づく姿なのかもしれない。