【雑感】2021年J2リーグ 第14節 対ギラヴァンツ北九州~帰ってきた、わが庭~

東京ヴェルディ 2-0 ギラヴァンツ北九州

 本拠地味スタに約1か月ぶりに観客を入って行われた試合。サポーターの拍手などの後押しがある雰囲気はやはり良いもので拮抗した試合をこじ開けた一因になっていれば嬉しいものだ。良い形での2得点を奪い、久しぶりの完封となった会心の勝利を振り返ってみたい。

スタメン

 前節・甲府に0-2で敗れたヴェルディは大幅に変更してきた。GKにはマテウスが復帰。右SBには大卒ルーキー深澤大輝がプロ初出場、初スタメン。左には安在が新潟戦以来のスタメン起用。古巣対戦となる加藤はキャプテンマークを巻き、CBに君臨する。中盤にはリベロに梶川、フロントボランチに佐藤優平と井出が入る。システムはこれまで同様に14123で臨む。
 対する北九州も前節・長崎に0-1で敗戦。こちらもGKと両SBを変更する。GKには加藤を起用、SBには生駒と古巣対戦になる永田SBの計3枚を入れ替える。FWが縦関係の14231システムで臨む。

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良さを牽制し合う

 マイボールでスタートしたヴェルディ、開始から押し込んでいくと左SB安在が遠い位置からも思いっきりよく左脚を振りぬくロングシュートを放つ。本拠地味スタでは4年ぶりの復帰後、初スタメンの意気込みが感じられ、小さな身体を目一杯使ってプレーするアンカズらしさが出ていた。

 ボール非保持時に梶川に対して富山がマークにつき、1トップ佐藤と2SHがヴェルディ最終ラインへプレスをかけにいくも上手く嵌らずに交わされていく。ファーストラインを突破したヴェルディは井出や安在、小池や大輝と両サイドへ展開する。大きくスペースが出来ているので一気にゴールへ迫る素早いプレー、攻撃が出ていく。右サイドならば大輝、小池に優平が絡む。左は安在と井出に山下が絡み3名で連携しながらサイドを崩して対角の選手がクロスに合わす場面が出た。

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 それでも北九州はプレスをかけることを止めなかった。前半10分を過ぎていくと、1列目2列目の選手に続いてDFも縦スライドして続く形で押し上げていき徐々にヴェルディにもミスが出始めて北九州がボール回収していくことが増えた。

 ボール保持すると昨年同様にDHが縦関係になりこの日は井澤が最終ラインへ入って13151へ可変する。幅をいっぱいに使い、最終ラインから大きな展開で大外へ繋ぎサイド攻撃に転じる。

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 この試合、中盤底に入った梶川。首をよく振り、周囲を見渡しては味方選手のフォローへ素早く動く献身的な選手だ。サイド攻撃時、これまでは3名の連携であったところに梶川が加わり4名で分厚い攻撃を形成していき失いつつある勢いを再びつけていく。
 しかし、上述の通りに富山がマークにしっかりとつくことが多く人数をかけて守備対応をしてボール奪取する。梶川が動いたことで中央にぽっかりと空いたスペースで最前線の佐藤が立ってボールを受けて後列の選手たちが追い越す動きが見られた。

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 お互いに自分たちの良さを出してPA内へ入っていきチャンスクリエイトするもシュートまで行く回数は少なくスコアレスで折り返す。

ようやく目指す形が出た

 後半開始から北九州はシステムはそのままも前田に替えて野口を投入。ただ、立ち上がりから再び主導権を握ったのはヴェルディだった。北九州のプレスが前半よりも抑え気味になり最終ラインを高く設定することで全体をコンパクトにした。
 加藤とンドカはボールを持つ時間が増えていき、ワイドの小池と山下が前半より内側へ絞り、北九州の最終ラインの背後を取りながら斜めに侵入する動きが増えていく。試合後の選手たちのコメントでも北九州の守備ラインに関しての言及があり、分析したうえで臨んだのだろう。

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 ボールを失っても佐藤優平、凌我と前線からプレスバックをかけて再びボール奪取して次の攻撃に繋げていくとしばらくはボールを握り時間が進んでいく。
 50分過ぎ、ボールを握り2分、3分とパスを繋いで行くと、左ハーフスペースでボールを受けた井出が縦パスを入れると小池が外から内へ斜めに走りPA内に侵入。速いグラウンダーのクロスを入れると流れの中で右サイドにいた山下がファーで楽々押し込んでヴェルディが先制する。今季あまり見られなかった崩しでの得点を挙げることが出来た。

エネルギーを再注入で試合を締める

 前線からのプレスが嵌ったヴェルディはそのあともショートカウンターを見せてPA内までボールを運ぶ場面が何度もあり、自分たちの時間帯が続く。後列から積極的に追い越していく動きをしていたことの弊害だろうか、60分すぎにここまで攻守に貢献していた優平に代わり石浦大雅が投入される。後半、飛ばしていた井出と梶川も徐々にエンジン切れしていくとプレスが嵌らなくなり北九州が押し込み始めヴェルディは耐える時間になる。

 70分すぎ、梶川に替えて怪我が癒えた森田晃樹が今季初出場。大輝に替えて若狭が投入。フレッシュな選手を入れて再び活力を出そうとする。ボール保持した時は良かったが、疲れが見える選手がちらほらおり強度が落ちていくことに加えて中盤3名の守備対応がよろしく無く、北九州に真ん中を通される危険な場面が出てきて、いつ失点をしてもおかしくない雰囲気が出てきた。

 この状況にたまらず永井監督が動く。安在に替えて山口をそのまま左SBに投入してアップダウンの再活性化を図る。井出に替えて投入された端戸には前線でボールを収めて起点を作ることと前線からの守備を要求した。これが功を奏した。2トップへ変更して、中盤もアンカーから2DH気味にすることで中央を固めて北九州の縦を封じることが出来た。

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 サイドには投入されたばかりで元気一杯の山口が幅を取り、個人で仕掛けていき試合終盤の足が止まり始めた状況で良いアクセントをつけていった。再びボールを握りはじめたヴェルディが主導権を取り、セーフティな選択をしつつ試合を終わらせようとしていく。

87分、左サイドでボールを収めた端戸。背後からタッチライン際を駆け上がっていく山口に繋ぐとクロスを入れる。凌我が流れながらもシュート体勢を作ると身体をひねりながらニアへ蹴りこみ、貴重な追加点を挙げる。前線からの守備も厭わず、90分間ピッチを走り回り最終盤になっても体力は衰えることなく得点を挙げた凌我はとても素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれた。

 2点リードとなり、そのあとには井澤がこの日2枚目のイエローカードで退場となり数的有利にもなり精神的にも余裕が出てきて開幕戦ぶりの完封勝利を挙げた。

まとめ

 先制、ダメ押しと理想的な展開で北九州に見事に勝利。現実を見ていくと順位の近いクラブに勝ち点差を縮めさせないことは後々に大きく影響していくことに違いない。
 今季、本拠地での初スタメンになった安在。懐かしく感じさせるような全力プレーに輝きを取り戻しつつあるように思えた。まだまだ、コンディションが上げて行ってもらいたい。
 プロデビューの深澤大輝。立ち上がりこそ緊張からか固くなっていたが徐々にリラックスしていき確実なプレー、そして周囲の選手への声掛けと初出場とは思えない落ち着いた動きをみせて完封に貢献した。いきなり結果を出したことで今後の起用もあるだろう。
 2得点ともサイドを上手く崩して複数人が絡む良い形で今季のなかではかなり良いゴールだっただろう。試合終盤でもプレー強度を落とさないためにも怪我が癒えた森田晃樹がプレー出来たことも好材料だ。
 それぞれが自分の居場所に帰ってきたとき、チーム力は増していくことだろう。本拠地3連戦を良い形で戦い抜いてもらいたい。