【雑感】2023年J2リーグ 第12節 対水戸ホーリーホック~試行錯誤の勝利~

東京ヴェルディ 2-0 水戸ホーリーホック

 3試合ぶりの勝利で連敗を2で止めた。攻撃の形が作れない深刻な前半から選手を代えて役割を明確にすることで相手を打ち負かし数少ないチャンスを決めきり白星を挙げた試合を振り返りたい。

スタメン

 前節・山形に1-2で敗れて2連敗になったヴェルディ。林をCB起用し、中盤には加藤弘堅、2トップの一角に杉本竜士をいずれも久しぶりにスタメン復帰した。右ワイドにはバスケスバイロンが入り、左にはこれまで中央をこなしていた森田晃樹が回る。
 一方の水戸は前節・大分に1-0で勝利。アウェイでは完封勝ちが続いているがホームで複数失点が続いており未だ勝ち無しの状態。この日はGKに46歳大ベテラン本間を起用し、悪い流れを断ち切りたいところである。

前半

 連敗、離脱者も多数発生と悪い状況のヴェルディ。流れを変えるためか単なる駒不足なのかどちらの理由かは不明であるがシーズン序盤以来に加藤弘堅と杉本竜士がスタメン起用された。

 キックオフ時の配置で「おっ!」としたのが竜士の立ち位置であった。左サイドを主戦場とするがこの日は中央に位置取り、キックオフ時だけかと思いきやその後もボールが動いて行ったり来たりしても変わらず中央にいた。守備時はマリオエンゲルスと2トップになり、ボール保持時も右IHのような立ち振る舞いと2トップの中間のような感じに見えた。今季のヴェルディは攻撃時は14123で守備時は1442としていたがこの試合では攻守において1442のまま可変していなかったように見えた。昨季終盤の好調時のシステムでありどうしても1トップの得点力だけでは劣るため厚みを持たせる意味でも良い選択であった。

 全体をコンパクトにして積極的にプレッシングする水戸に対してボールを動かして選手を引き付けてスペースを生ませてサイドチェンジや裏抜けのロングボールを入れる狙いを見せるヴェルディ。最終ライン+マテウスでボールを回し、左右前方へ蹴り入れて行き、DHは加藤弘堅が下がり目で長身の綱島悠斗がその間に前線に上がってロングボールのターゲットにもなる意図が見られた。

 立ち上がりはアバウトなボールを入れて陣地を稼ぐヴェルディであったが風下でもあることから上手くパスが繋がらない場面も目立ち効果的な攻撃には至らなかった。ならばとショートパスで運び中央で竜士やエンゲルスがボールに絡むも前を向かせては貰えず後ろへ下げさせられ、U字の外回りのパスが続く苦しい展開。ここのところ続く悪い状態のままでシュートすらままならない。
 DHに入った加藤弘堅も相手からのケアもあり中央でボールを受けて中長距離のパスを繰り出すことも出来ず、こういったのも攻撃の形が出来ない一つの理由になるだろう。左SH起用された森田晃樹はオフザボール時の動きが乏しく存在感が薄れていた。前半は左サイドからのFKに弘堅が合わせたシュートだけがチャンスらしいチャンスとまたも寂しいものであった。

 ビルドアップを試みるヴェルディが横パス、バックパスをすると水戸のプレススイッチが入り一気に押し上げてくる。おぼつかないようなパスを中盤でかっさらった水戸は迷うことなく前進してシュートで終える。だんだんとこの機会が増えていくと次第に水戸ペースになる。

 城福体制になってからヴェルディの戦術・采配のキーマンである河村が欠場し、ファーストディフェンダーの代役に起用された竜士。これは的確な采配であった。前線からのプレス強度が蘇り2列目の選手も連動していく。ただ最終ラインまで喰いつくも横スライドでスペースを埋めておらず、あわや入れ替わられて危ない場面がちらほら見られて人につくのかスペースを守るのか曖昧な守備になっていた。水戸は前節の山形同様にくさびのパスをシンプルにワンタッチで捌くこともして先述のようにヴェルディの選手が喰いついてスペースがあるならば攻撃の勢いをそのままにドリブルで仕掛けて遠い位置からもシュートを放って行った。やはり、シュートで終えることでスタンドも盛り上がりその回数が増えて行くことで会場を味方に出来るのは明白である。それゆえにシュート自体が少なすぎるヴェルディの姿勢は残念である。

後半

 ハーフタイムに綱島悠斗に代えて加藤蓮を投入したヴェルディ。蓮は左SHに入って晃樹が本職であるDHに回る。スピードある仕掛け、空中戦も得意な蓮は積極的にPA内にも侵入するため晃樹とは違ったキャラクターで水戸の脅威になり、3列目に下がった晃樹もやっぱりこの位置が最適と思わせるように相手から360°囲まれても見事なボールキープを見せてだんだんとリズムを生み出していきピッチ中央で時間を作ることが出来た。そうすることでボール奪取しようと前がかりになる水戸の中盤と最終ライン間が間延びしてボール前進に成功するとサイドへ展開してフリーを作る効果が出る。45分が過ぎてようやく右SHのバスケスバイロンの持ち味が発揮されてきた。

 右からの仕掛けでクロス、特にファーサイドへ巻くようなクロスボールを何本も入れてヴェルディの得点の下準備が整い始めた。60分に近づいたところで竜士に代えて北島を投入しそのままの位置に入る。梶川不在のいま、前線からの守備、ライン間でボールを貰う事、プレスキックと代役を務めるならば1番手にふさわしい男が良いリズムの時に投入される。自陣で作ったテンポをそのまま敵陣まで持って行くことで相手守備陣形が整う前にゴール前まで迫ることが出来る。

 ホーム初勝利を目指す水戸は安藤と新里そのあとに寺沼と攻撃のカードを立て続けに入れる。一方のヴェルディは山越と阪野を投入し勝負に出る。交代で流れを引き戻したい水戸はPA外の位置からでも連続してシュートを放つもマテウスの正面をつく。ヴェルディは持続した良い攻撃が出来、中盤のタメからバイロンが右サイドを駆け上がり最後は阪野にパスを繋ぐも足元深くに入りすぎてシュートはふかす。超決定的なカウンターの場面であった。

 直後に同様に右から仕掛けると、バイロンがクロスを上げる。水戸の選手が処理を怠ると「なぜそこに居る」深澤大輝が決めきり、ヴェルディが待望の先制点を挙げる。ラッキーな形でのシュートになったがPA内に人数をかけて厚みある攻撃が功を奏した。

 先制点を挙げたヴェルディは呪縛から解けたように攻撃を続け、またも右からチャンスを作る。バイロンが二人と対峙しながらも単騎突破から左足でファーへ豪快に蹴り込み追加点。

 これで勝負あり。ヴェルディは稲見を入れて試合を〆て3試合ぶりの勝利を飾り勝点22へ伸ばした。対する水戸はまたもホームで勝つことが出来ず4月を終えた。

まとめ

 90分通しての内容は決して良いものでは無かったがチャンスをモノにして2得点挙げて勝点3を手に入れた。采配で勝利を手繰り寄せていた開幕序盤から変わり4月は勝ち負けが五分の状態で停滞気味であり中盤戦にかけて何かの変化を必要としていた。最前線からの守備を改めてということから日頃はサイド起用される杉本竜士を真ん中で起用し、チームに熱も加えて起用に堪えてくれた。IHであり中盤3枚がチームとしての認識なのかもしれないが自分の目には2トップにシステム変更して臨んだように感じた。
 45分60分でバトンを繋ぐと公言しているチームだけにSH森田晃樹や45分で下がった綱島悠斗への評価は不確かであるが交代出場選手や配置換えによりサイド攻撃が活性化し、勝利を手繰り寄せた。試合も80分近く経過して疲れが見えてくる時間帯でもSB深澤大輝が最前線まで攻め上がる執念、スタミナはお見事であった。
 大ベテラン本間をスタメン抜擢し、ホームでの今季初勝利を目指した水戸であったがアウェイでの戦いのようには行かずこの日も無得点で敗戦。なぜなのか不思議なところもまたサッカーなのだろう。
 攻撃面での再現性あるプレーが少なくクロス頼みという課題は解消されず模索しながらも勝利したヴェルディ。すぐに試合が続くGW連戦をこなしつつ答えを探すことになる。