【雑感】2022年J2リーグ 第14節 対ベガルタ仙台~左、左、左 クロスから3得点で快勝~

東京ヴェルディ 3-1 ベガルタ

 インドネシアフェス、GW連休も重なり1万人超えの観衆。その熱気も後押ししてひと月ぶりの勝点3を挙げたヴェルディ。ここ数試合の低迷から復活の兆しの見えた場面を取り上げつつ試合を振り返りたい。

スタメン

 前節・岡山に1-2で敗れ、二度目の連敗を喫したヴェルディ。前節負傷交代した山越と山本理仁に代えて、左SB加藤蓮、中盤底に加藤弘堅が入る。前線には小池に代わり杉本竜士が入り14123システムで臨む。なお、今節から堀監督が復帰し、指揮を執る。
 対する仙台は前節・秋田に3-1勝利で3連勝と調子上向きだ。中2日の影響もありこの日は6名を入れ替えて臨む。DH起用された吉野恭平、ベンチスタートの若狭は古巣との対戦になった。

前半

 直近5戦で4敗と絶不調のヴェルディ。個人的にはJ2で最も状態が悪いくらいと思っていた。その原因には前節の振り返りで触れたが、IHのポジショニング、サイドからのクロスの質が挙げられる。この日は、準備期間がわずか2日しかなく果たしてどうなるのか心配していた。

 立ち上がり早々、いきなり試合が動く。最終ラインからの縦パスをピッチ中央で貰った森田晃樹。左サイドへはたくとそのまま前線へ走る。加藤蓮、梶川、杉本竜士が外内外でパスを繋ぎ、左サイド深くまで運ぶと竜士が対面する仙台右SB加藤との一対一から左足でクロス。これを勢いよく走りこんだ森田晃樹が見事にヘディングで合わせて開始3分でヴェルディが先制に成功。意識に何か変化があったのだろうか、これまであまり見られなかった晃樹の2列目からの侵入が早々に現れた。

 この場面以降もCB馬場晴也と谷口栄斗が自由にボールを持つ場面が終始続いた。仙台は2トップ皆川とカルドーゾのプレスが緩く、連動してSHやDH吉野がプレスに来るも強度は低く、簡単にボールを繋げる状況であった。連戦の影響でメンバーを大きく入れ替えているためこのやり方が仙台の主なのかはハッキリとわからないが、この日の強度はこれまで対戦した相手クラブと比較するとかなり緩いものであった。
 こう状況でもあり、幸先よく先制点を挙げたことも加わりヴェルディはテンポよくボールを繋いで行く。DH吉野が前線へプレスして加藤弘堅をマーク、DHコンビを組むフォギーニョはステイすることが多かったがここも強度はさほど高くなかったことで先制点以降もヴェルディ最終ラインから数回、森田晃樹への縦パスが簡単に入る場面が続いた。

 ボールを貰った晃樹は前へ繋げないならばと久しぶりにスタメン起用された加藤弘堅へ戻す。弘堅は相手の状況を見ながらシンプルにワンタッチで捌いたり、フリーならばサイドへ大きく展開して左右を揺さぶるなど北九州時代に躍動していたようなスタイルが見られ、この試合に懸ける意気込み、集中力の高さがよく伝わってきた。試合後半に退くまで、攻撃面では上手くリズムをコントロールし、積極果敢にシュートも4本放ち、守備面でもスペースを埋めながらセカンドボール回収と存在感を示した。

 中央から攻め、左右に揺さぶった時はサイドからというバランスよい攻撃もあり前半途中まではヴェルディが圧倒的に主導権を握り試合が進む。仙台はボール非保持時に上述の2トップ横並びを含めて1442で構える。基本的にはPA幅でコンパクトに構えていたこともありSBをピン留めするかのように梶川や森田が立つことが多かった。これにより大外レーンで杉本、新井がフリーになりそこから仕掛ける狙いがあった。ここ最近のヴェルディはかなり深い位置まで大外レーンでボールを握ることが多く、ここで手詰まりになり苦しくなっていたがこの日は球離れ早く、内外内でハーフスペースを使う機会が多く見られた。特に右SB深澤大輝がインナーラップからPA内に侵入してクロスやシュートまで持って行く良い崩しが何度も見られた。試合立ち上がりからシュートで終わる場面が多く、直近の試合内容は明らかに異なる気配を感じ取った。

 押されていた仙台は前線の皆川、カルドーゾへアバウトなボールを蹴り入れてフィジカル活かしたポストプレーでボールを収めて攻撃する場面があったが前半半ばから、ようやくボールを握り試合が落ち着く。2SBが高い位置を取って、その代わりにDH吉野が最終ラインへ下りて2CBと3バック形成。ヴェルディが佐藤凌我と森田晃樹の2トップ化で1442からプレッシングするのに対して数的優位を保ちつつ、ヴェルディSHの縦スライドを利用して味方SBやSHをビルドアップの出口を設定する。他チームで言えば、大分もヴェルディ戦で同様のビルドアップを見せて前線からのプレスを剥がしていた。      SB深澤、加藤蓮が長い距離を縦スライドすることを強いられるもこの日は仙台自身がSBをあまり効果的に使えることが出来ていなかった。そういうこともあり仙台は守備時の同じようにPA幅でのプレーを意識するかのようにSH氣田と名倉が絡み始めてだんだんとリズムを掴む。

 すると、23分に同点に追いつく。後方からのスルーパスに抜け出したカルドーゾが馬場晴也と並走しながらゴールライン際で入れ替わると追走してきた皆川へパス、シュートはポストに当たるも跳ね返りを名倉が押し込む。

 良いリズムでサッカーをして先制点を挙げたヴェルディにとっては悔やまれる失点であった。しかし、前半45分を通してみると、いつもに増してシュートも多く、攻め切る姿勢やプレス・球際の厳しさもあり内容は上向きになっていると実感した。

後半

 ハーフタイム明け、前半から激しいフィジカルコンタクトを繰り広げていた杉本竜士に代えてバスケスバイロンを投入したヴェルディ。このタイミングで新井が右から左ワイドへポジション変更する。本人曰く、得意なポジションということで得意のドリブルを仕掛けるものの試合を重ねる事に相手マークも厳しくなり直近の試合ではかなり苦戦を強いられていた状況であり1-1のこの場面で今日はどんなプレーを見せるのか注目した。

 外でボールを持って身体をゴール方向に向けてカットインするパターンが目立っていたが、左に回ってからの初めの仕掛けで縦へ素早く運び、左足でクロスを供給。右足でのクロスを上げるかと思っていたからこのファーストプレーに驚きがあった。相手守備者からすると中を切るだけで良かったところを縦も切ることになり選択肢が増えたことで厄介になったのだろうか、その後も新井ショーのように何度も仕掛ける場面が増える。

 また、CB馬場晴也が1列上がってこぼれ球を回収したり、繋ぎに参加することで全体的に押し上げて攻撃に厚みが生まれたことも見逃せないポイントであった。

 押し込んだことで再びリズムを掴んだヴェルディ。自分たちの時間帯に勝ちし点を挙げる。61分、梶川から左大外で待ち構える新井へ。新井は予めハーフスペースに攻撃参加していた加藤蓮とワンツーで抜け出してPA内へ入ると左足でライナー性のクロスに最後は佐藤凌我が点で合わせるボレーシュートを決める。

 勝ち越したヴェルディがスタンドの観衆の力も受けて攻勢を強める。その後、梶川に代えて阿野真拓、負傷した加藤弘堅に代えて、ンドカを投入。馬場晴也が中盤に上げる。84分、左サイドからのスローインから抜け出した新井が再びドリブルで切れ込んでいくと左足でクロス。中へ飛び込んだ森田晃樹をかすめてボールはファーサイドのバイロンへ。バイロンは落ち着いて左足でシュートを決めて3点目。これで勝負あり。バイロンは岡山戦に続き2戦連発とし、切り札として多くの得点に絡む好パフォーマンスを魅せ続けている。

 その後、河村と橋本陸斗を佐藤凌我と新井に代えて投入し、前線のエネルギーを再度活性化し、強度を維持しながら最後までゴールへ攻め込みタイムアップ。1万人超えの観衆を集めた試合でヴェルディが3-1で勝利を飾った。

まとめ

 連勝中の仙台相手に連敗中のヴェルディが臨んだ試合は予想外の展開だっただろう。ヴェルディは前半の時点で要所で復調の兆しが見えており、それだけでも好材料であったが、終わってみれば、効果的に得点を重ねて停滞が続いたチームにとって喉から手が出るほど欲しかった勝点3を手に入れた。
 メンバーもシステムも大幅に弄ることが無かったが何が変わったのだろうかと考えると、スペースの埋め方、左右の両足の使い分け、大外でのポジショニングなどにメリハリあり攻撃がスムーズに行われたことが要因の一つであろう。個人的には、ここのところ散々、左サイドから左足でクロスを上げてくれと言っていただけにその左足のクロスで3得点挙げただけでも大満足の内容であった。
 大幅なスタメン入れ替えて臨んだ仙台はこの試合だけを見ると、上手く機能していなかった事実だけが残るが、たった1試合を見ただけなのでたまたまだったのかどうかは何とも言えない。(手の内を知る若狭が出てた方が面倒くさかったかも)
 勝ち無しを止めたヴェルディ。ここから再浮上できるか、仙台戦で見せたプレーが一つの物差しになるだろう。次節・新潟は昨季とても悔しい思いをした地である。リベンジに期待したい!