【雑感】2022年J2リーグ 第35節 対ザスパクサツ群馬~かすかに見える希望の光~

東京ヴェルディ 1-1 ザスパクサツ群馬

 シュートを打っても打っても枠を捉えられず、勝ち越すことは出来ずドロー決着。勝てない状況を象徴するかのようなフィニッシュの精度、守備面での脆さは相変わらず部分もあったが、そんななかでも希望が見えた攻撃の形を踏まえながら試合を振り返りたい。

スタメン

 天皇杯・京都戦に敗れて公式戦4連敗のヴェルディ。その日からは6名を入れ替える。主将・平が久しぶりにスタメン起用され1442システムで臨む。
 一方の群馬はコロナ離脱者多数と苦しい状況。GK山田はJデビュー。しかしベンチには控えGK不在の緊急事態。限られたメンバーでこちらも同じく1442システムで臨む。

前半

 開幕当初に対戦時はお互いにスタートダッシュに成功し、良い状況であったが、そのあとは苦しい戦いぶりが続き下位に低迷している両者。是が非でも勝点が欲しい一戦。

 ボールを握ったのはホームヴェルディだった。1442でハイプレスでマンツーマンの群馬に対してロングボールを使いSB裏を狙い、立ち上がり2本ほどチャンス作れた。ギャップを作ろうとDH稲見or晃樹が最終ラインへ下がって2CBンドカと平と横並びで3枚になり、SBを押し上げて3-1を形成してからロングボールを放ることがあった。最終ラインへ下りる形はあまり見られていなかったので相手を見て変化をつけたのだろうか。

 あるいは、右SH梶川が内へ絞り相手を引き付けると右SB深澤大輝が空いた大外を駆け上がり右サイドからのチャンスメイクが多く見られた。ここで一点取りたかった。

 一方の群馬はSBの1枚があがり最終ライン3枚でのビルドアップを試みるもメンバーが揃っていなく質の部分もあるから最前線の川本を目掛けてロングボールを入れるシンプルな攻撃繰り出す。すると9分、左サイドからのスローイン。その流れからSB小島が仕掛けてPA内へ侵入すると稲見に倒されてPKを獲得。小島は全試合出場していて可変システムを担うキーマンで、来季は少し上のクラブへ行きそうな気配を感じる選手だ。

 獲得したPK。キッカーは細貝。立ちはだかるマテウスは前節に細貝が決めた映像を見たのであろう、見事にコースを読み切って左へ飛ぶと、シュートは枠を外れる。群馬は先制のチャンスを逃す。群馬はPKが失敗が今季3回目だったようだ・・・。

 立ち上がりに攻勢をかけても得点奪えず、PKを与え悪い流れになったヴェルディは事なきを得た。試合は再び仕切り直しのようにお互いに流れを作るところから始まる。群馬は最終ラインもハーフラインくらいまで高く押し上げて全体的にプレスをかける。特に2トップ川本と鈴木は相当走り回りプレスをかける。ヴェルディは中盤を使って2名3名が絡み連動したプレーで敵陣に入りフィニッシュまで持って行く展開をみせる。

 14分、自陣深くからヴェルディがカウンター。群馬を引き付けて、ンドカ、加藤蓮、杉本竜士が絡み森田晃樹が上手く抜け出して持ち運びフィニッシュ。先日の天皇杯に続き、中央での楔のパスや2名3名が絡んでの連携が増えてきてるのは攻撃の形が出来つつある証なのだろうか。

 中央ばかりでなくサイドも使うヴェルディ。2トップの佐藤凌我と染野を中心に群馬SBCB間を突き、深い位置まで入っていきマイナスのクロスを上げて決定機を作るも得点を奪えない。

 前線からのプレスで喰いついたところを交わされてシュートまで持って行かれる群馬は飲水タイム明けから中盤の選手たちのプレッシングを抑え気味で4-4ブロックを敷く。そのあとには左SH高木が何度も背中を取られていた深澤大輝のケアとして最終ラインに下がって5バックへ変更する。鈴木はトップとSHの2役をこなすタスクを遂行。

 ヴェルディは相手陣地でのプレーすることで全体的に前がかりになる。群馬はしぶとく耐え、ようやくチャンスを作る。ここまであまりボールに触れていなかった”ヴェルディキラー”田中稔也がドリブルで長い距離を運び存在感を示すと、右で作り最後は左の高木がシュートを放つ。惜しくも枠外へ逸れるも早いカウンターからゴールを脅かす。シュートを打ったことで流れを押し戻す群馬は岩上と細貝の2DHが絡み始め、攻撃に厚みを出して行く。

 ヒヤッとする場面はあったが、基本的にはヴェルディが圧倒的にボールを握る。即興性なのか仕込んできたか不明だが、最終ラインが横スライドしてCBンドカと平がSB化することが35分すぎごろから見られた。久しぶりの出場になった平は跳ね返すことは勿論、利き足の左を活かした鋭い縦パスを入れることも何度も見られ流石のプレーぶりであった。上位相手にどれくらい出来るか見物である。

 39分、右SB化したンドカは敵陣に入っていくとSBCB間を走る染野へ縦パスを通す。折り返しのクロスからチャンス作るもシュート打てず。あまり見ない新鮮な形でこれも新たなオプションなのか今後も気になるところだ。

 SBCB間を上手く使いクロスから再三攻撃を仕掛けるも2CB畑尾と川上の体勢を崩し切るまでは行かず結局無得点で折り返す。

後半

 ヴェルディは梶川に代えて河村を投入してそのまま右SHへ投入。前半のPK献上場面や高木のシュートと同サイドをやられていたこともあっての交代だったようだ。

 後半もヴェルディがボールを握り、群馬は5バックで守る展開になる。河村は梶川よりも更にサイドに張り、自ら仕掛けたり起点になりワンツーをする。51分、河村が大外で受けてインナーラップする大輝を使って染野がフィニッシュ。形としては良かったが本職FWの河村をその使い方で良いのか?勿体ない気もする。

 その直後の攻撃であった。群馬のゴールキックを一度はヴェルディが跳ね返すも再び前へ蹴ると鈴木がボールを収めて右サイドの田中へ。田中は深い位置まで切れ込むとクロス。ファーサイドで再び鈴木がヘディングシュートもクロスバー。これを川本が押し込んで群馬が先制する。ヴェルディは河村や稲見と中盤の選手たちもゴールラインまで帰陣するもその前のトランジション時にサイド裏を取られ失点。ここのところ続くサイド守備の綻びがこの試合でも露呈してしまった。

 このタイミングでヴェルディは馬場晴也と山口を稲見と杉本竜士に代えて投入。そのまま中盤に入る。すると、すぐさまヴェルディが同点に追いつく。ピッチ中央付近からのFK。馬場晴也がふわりと浮き球をSBCB間へ入れる。再三このスペースを突くからかDH細貝がカバーリングするも染野が身体崩しながら折り返す。細貝が空けたからかポッカリと空いたバイタルエリアにボールが渡り、攻め上がった森田晃樹が豪快にシュートを叩き込む。

 何度も見られたSBCB間を突く攻撃がようやく実を結んだヴェルディが試合を振り出しに戻す。

 そのあとは左SH山口が何度も仕掛けてはクロスを挙げてシュート、右からも河村と深澤の連携からクロスとチャンスを作るもふかす場面ばかりで枠を取られず。シュート精度に欠いてこのまま1-1でタイムアップ。ヴェルディは公式戦の連敗を止めたものの勝てない試合が続く。一方の群馬は最後は割り切ったように自陣にみんな戻り失点しないような戦い方をして残留争いで意味を持つ勝点1を持ち帰ることになった。

まとめ

 多彩な攻撃を見せながらもフィニッシュの精度に欠いた前半、サイドからのクロス一辺倒に近い形から勝ち越し点を決めきれなかった後半。枠内シュート数の少なさもあるが、時計の針が進むにつれて攻撃に単調さが生まれ、天皇杯・京都戦を見ているかのようだった。PA内でプレー判断にも迷いがあるように映ってしまうこともあった。これがいまのチームメンタルなのだろうか。
 前半に見せたビルドアップの形や複数人が絡んでの持ち運び、サイドの崩しは今後も見たいと思える組織的な動きであり実を結んで欲しいと思うものである。終盤はサイドからのクロスばかりになってしまい、ここでミドルシュートを打つなど変化をつけれる選手が欲しかった。この日も幾度とセットプレーを獲得するもキックや中へ入る動きの質が決して良いものでは無く脅威を与えられず再考してもらいたい面である。
 離脱者多数の群馬は、途中で配置換えもしながら勝点を持って帰ることが出来た。残り試合の残留争いに影響を与えそうな試合になっただろう。ヴェルディのサイド守備を上手く崩し得点を挙げており、ヴェルディにとっては
目を背くことが出来ない課題になる。
 次節、ヴェルディは7連戦折り返しの秋田戦。チームとして良い部分の継続と課題の修正を期待したい。