【雑感】2021年J2リーグ 第20節 対栃木SC~一体感で掴んだ5連勝~

東京ヴェルディ 2-1 栃木SC

 アウェイ3連戦3連勝と最高の結果で4戦ぶりに帰ってきたホーム味スタ。多くの観衆を集め注目度の高さがあった一戦であったが出鼻をくじかれる失点。そのあともなかなかテンポの上がらない試合であったが、ハーフタイムの修正で鮮やかな逆転勝利を飾った試合を振り返りたい。

スタメン

 前節・相模原に2-0で勝利したヴェルディは4連勝中の好調である。この日はジャイルトンパライバがベンチスタートで、天皇杯で負傷交代を強いられた山下がスタメン復帰する。それ以外の10名は同じで14123のシステムでスタート。
 対する栃木は前節・長崎に0-2で敗北を喫し4戦未勝利と元気が無い状況だ。右SHに畑が開幕戦以来のスタメンでそれ以外は同じメンバーで1442システムで臨む。

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術中にはまった展開

 栃木の素早いプレスにヴェルディがどうボールを保持して得点を奪うかがカギになった試合は、立ち上がりからヴェルディが攻勢に出る。最終ライン4枚にして重心を後ろ気味にしてビルドアップを行ない、栃木のプレスを交わすように縦横に一列飛ばすようなボールで速く動かし、敵陣へ侵入すると、スタート位置を低くしてフリーになっている山口が勢いよく左サイドを駆け上がり、クロスを入れる。開始5分くらいまでに3回ほど山口は仕掛けていき良い入りを見せる。

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 しかし、栃木が徐々に前線からの強度が高いプレスが嵌り始める。矢野がヴェルディのCBへプレスかけて連動するようにSH畑と森がプレスをしていき、ジュニーニョが中盤底の加藤をマークする。ヴェルディ最終ライン4枚に対して栃木は3枚で対応するため、数的優位に自然となる。ヴェルディは右SB福村をフリーにする選択をしてここにボールを入れて左SB菊池やDH佐藤を喰いつかせる。福村は相手を喰いつかせた生まれたスペースへダイレクトでボールを繋ぎ、佐藤優平や山下がパスを受ける狙いがあった。

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 ヴェルディは狙いこそ明確になっていたものの、技術的なミスもあり、思うような展開が出来ないでいた。すると、栃木がそのミスに漬け込む形で先制点をモノにする。マテウスから福村へ展開すると、人数をかけて素早く囲みボール奪取すると右SH畑が豪快にミドルシュートを蹴りこんだ。

 先制点を挙げた栃木はプレスの勢いが増し、矢野・畑・森の強度が上がり、ジュニーニョは加藤を徹底マークすることで、ヴェルディの最終ラインはパスを横に繋ぐことを強いられる。さらにDH西谷と佐藤も井出と優平へマークすることで前を向かせない守備をする。両DH西谷と佐藤もボールホルダーへ喰いつくため中盤にスペースが生まれて端戸がパスを受けに来るが柳と三國が球際激しく削ってくるためなかなかボールを収めることが出来ない。

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 ヴェルディがボールを握り、持ち運んでみても栃木ブロックを崩せず、目の前でボールを回させてる感じで試合が進む。前半40分ごろからようやく、栃木最終ラインの背後を狙うようなロングボールを使い始めて栃木守備陣の目線を変える試みをするも停滞したまま前半を0-1で折り返す。

黄色の壁をこじ開けろ

 完全に栃木の思う壺になったヴェルディは後半開始から両翼の小池と山下の左右を入れ替える。そして、ボール保持時には右SB福村が内へ絞り、加藤と横並びになることで対面する左SH森を中へ引きつけて右サイドの優平と小池へのパスコースを作る。左サイドに回った山下は目一杯に幅を取ることでここまでは単調に大外を突破するだけだった山口にインナーラップの選択肢を与えた。

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 この配置転換が当たる。左サイド山下と山口が高い位置を取ると畑も戻されるように栃木最終ラインに吸収され、15311のようになり中盤にスペースが広くなる。後方からの押し上げも増えていきハーフコート状態になっていくと、前半からプレスを続けていた栃木の前線が次第に足が止まり陣地回復も難しくなり、ただ蹴り返すだけのクリアになりヴェルディの攻撃ターンが続く。

 左右に揺さぶり、だいぶ深い位置まで抉る回数が増えていき、スタジアムの手拍子も大きく後押ししていき、あとはゴールだけという状況になっていく。

 57分、待望の時が訪れる。クリアボールを回収してボールが加藤へ渡る。右ワイドの小池が裏抜けする動きに、ドンピシャの縦パスを入れると、内へ絞っていた福村がスルー。小池がダイレクトで折り返すと左の山下が上手くゴールへ流し込みついに同点に追いついた。ワイド-ワイドで得点を取る永井サッカーの真骨頂が見えた崩しからの得点だった。

 同点に追いついたヴェルディ、スタジアムの熱狂もさらに熱くなり押せ押せムードになる。前半のように矢野のプレスも勢いを失い、楽々にボールを持てるようになると、ンドカが持ち運び左大外の山下へミドルパスを入れる。途中出場で右SBに入った吉田を引き付けてスペースを作ると、攻撃参加した山口がインナーラップする。グラウンダーの速いボールを中へ蹴りこむと柳に当たりそのままゴールイン。オウンゴールでヴェルディが勝ち越す。

 逆転された栃木は3枚替え、ヴェルディは山下に替えてジャイルトンパライバを投入。栃木は上田をトップ下、右に大島、左に森、DHが松本と佐藤、左SBに面矢と配置を変える。ヴェルディも7分後に梶川と佐藤凌我を投入して両者フレッシュな選手たちに残り時間を託すことになる。

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 栃木が手を打って攻撃に転じる場面も見られたが主導権はヴェルディにあった。梶川は短い時間であったが、ボールを散らす、スペースへ走る、プレスバックして潰すと役割を徹底して果たす。パライバは持ち前のスピードを活かして左サイドから単騎突破で脅威を与えていく。(何度も決定機があったもののシュートを決めることは出来なかった)

 85分には栃木はDF小野寺を最終ラインに投入して、柳を最前線に上げる。ロングスローやロングボールでパワープレーを見せていくが途中出場した山本理仁の好守もありヴェルディが凌ぎ切り、2-1で逆転勝利を飾った。

まとめ

 前半は栃木にペースを握られた失点を許し、苦しい展開になる。後半開始からの修正が見事にはまり、逆転勝ちで5連勝を飾った。同点に追いついたときに選手は勿論、スタジアムも「行ける」という雰囲気が生まれ、これは連勝からくる自信でもあり、一体感だったのだろう。
 前半は存在を消されていた加藤もチームが配置を弄ったことで次第に存在感を出し、ピッチ中央に君臨して見事な活躍ぶりを魅せてくれた。昨季の北九州の躍進を支えた中心選手がそのポテンシャルを遺憾なく発揮してくれていることがこの連勝で有難みを感じている。
 小池、山下、山口に途中出場のパライバ、持井とサイドに入った選手たちの仕掛けやシュートの場面が増えており今後に期待も持てる内容であった。
 これから始まるアウェイ8連戦に向けて勢いをつけて出発した。