【雑感】2019年J2リーグ 第9節 対FC琉球

東京ヴェルディ 1-1 FC琉球

 スタメン表を見た時にこれはどんなシステムで臨むのか考えさせられるものだった。いざ始まってみると、試合前の選手コメント通りにかなり自信みなぎる攻撃が披露された。勝ち点3を取る事は出来なかったが、今季の中で選手たちが一番躍動したと感じた試合を振り返ってみたい。

<スタメン>

 前節山形に逆転負けを喫したヴェルディは端戸がスタメン復帰。従来システムとは異なりアンカーに井上潮音、その前の右に渡辺皓太と左に佐藤優平の2枚並ぶ4141を採用した。ここ数試合は勝ちに恵まれないものの開幕から爆発的な攻撃力を武器に上位につける琉球は2、3月の月間MVPエース鈴木孝司1トップの4231で、古巣との対戦となった富所悠はトップ下、福井はCBに入る。

<ポジションチェンジするヴェルディ中盤>

 井上潮音、渡辺皓太、佐藤優平でトライアングルを形成する今季初の組み合わせを見せたヴェルディ。これまでと異なる布陣に戸惑ったような琉球に対してこの3人が中心に試合序盤から攻勢をかける。井上潮音と佐藤優平は最終ラインでのビルドアップに加わり、渡辺皓太も絡んで相手PA付近まで攻め上がりピッチを縦横無尽に動き攻撃を牽引してリズムを作った。全体を押し上げることでSB若狭と奈良輪も『幅を取る』動きで積極的にプレーして琉球ゴールへ迫る。中盤3選手は同じような役割をこなすことが出来ることから試合中に度々ポジションを入れ替わることがあった(特に井上と佐藤は多い)。これは琉球守備のマークやプレッシングの基準を曖昧にする効果があって、意図に行っていたのではと考える。

<人とボールが動く琉球の攻撃>

 開始早々のヴェルディの攻撃を凌いだ琉球が次第にリズムを作り反撃に出る。ヴェルディは4141でリトリートした守備を敷いたためパス供給源となる上里など後方の選手へのマークが緩くなり、右に左にボールを動かすことが出来た。受け手がボールを収めると後方の選手が追い越し、人とボールが斜めに動かすことでヴェルディ守備陣のマークをずらして、それで生まれたスペースにさらに選手が動き次から次へと決定的チャンスを作る。攻撃が終わっても上里などがボールを持てるから二次三次攻撃と琉球のターンが続く展開になる。

<ビルドアップの出口となった渡辺皓太>

 先述のようなビルドアップ時に下りてきて参加ぜすに、ボールを受けるいわゆる『ビルドアップの出口』となった渡辺皓太。この役割を担った要因は背負う形でボールを受けても反転が出来ること、持ち前の力強いドリブルで相手を交わして前進出来ることが大きいと考える。実際に試合を通して、低い位置でボールを受けて大幅に陣地挽回してチャンスを作る場面が幾度と見られて、昨年の好調時プレーを思い起こすようなパフォーマンスだった。

 前半からチャンスを作り、ドリブルで全体を押し上げることによって多くの選手が相手PA付近でプレーをして厚みある攻撃が出来た。39分の先制点も前を向いたプレーすることでドリブルから佐藤優平とのワンツーで琉球MFブロックを崩して豪快なミドルシュートを決めた。

<守りに入ることで逃げ切りに失敗したヴェルディ>

 後半もヴェルディの攻撃は依然として前半から継続するように中央で起点を作る。守備は4141からインサイドハーフのどちらかがプレッシングして442の昨年までよく見た形へなり上里などへマークして中央を固める。

林陵平のPK失敗や端戸などの決定機を決めきれず、一方の琉球も鈴木孝司や途中出場の小泉が決定機をモノに出来ない。オープンな展開になったこともありトランジションの負荷がかかりヴェルディは中盤3選手全員が途中交代。井上潮音⇒森田晃樹、佐藤優平⇒リヨンジ、渡辺皓太⇒河野広貴で4231。対する琉球は得点を奪いに行くため。田中⇒上門、風間⇒小泉、富所⇒越智の選手交代を行ない上里をアンカーとした4123となった。

琉球左サイドの徳元、河合中心に効果的な攻撃を続けることでヴェルディは次第に圧され残り時間とともに重心が後ろになる悪い癖が出てくる。試合の流れを読む力の高い近藤を中心に守備陣がここぞの場面で身体を張ってなんとか踏ん張るものの95分に左からのクロスのこぼれ球を上里が豪快にぶち込んで同点ゴールを挙げる。そのあと両チームにチャンスがあったが決めきれずタイムアップ。

<まとめ>

 ホワイト監督も『前にボールを運べる選手、ドリブルをできる質の高い選手が揃っているので私たちの強みを出すためにこのシステムに変更しました』とコメントをしているように現有戦力を考えると433が最適かと感じた一戦だった。中盤選手たちが伸び伸びとプレーして効果的な中央突破が見られてチャンスを多く作れたが今季のストロングポイントだったサイド攻撃が大人しくなってしまった。例えば、ビルドアップの出口に佐藤優平もなって長い距離をドリブルで運ぶ選手を増やしたり、両SBも出口になってそこからSHへ展開するといった複数パターンを準備して90分のなかで臨機応変に戦う必要がある。一方で、2戦連続で先制しながらも追加点を奪えずに勝ち点3を挙げることが出来なかった。攻撃陣で個人の力で圧倒出来るだけの選手(J1レベルの選手)が居ないため全体の重心が下がった時に、間延びしてしまうと孤立することになりボールキープや一人で局面を打開してフィニッシュまで持ち込むことが難しい。リードしていても残り数分ではない限りは守りに入らずに攻めを貫く姿勢を持つことが大事だと考える。ポジティブとネガティブな課題に対して取り組んでいく事でゲームモデルが定まっていくだろう。