【雑感】2020年J2リーグ 第11節 対アビスパ福岡~変わること、変わらないこと~

東京ヴェルディ 3-1 アビスパ福岡

 前節・琉球戦はとても後味の悪い試合内容になってしまった。主軸であった藤本寛也が抜けて迎えたこの一戦。連戦で修正期間も短いなかであったが、勝ち点3という最高の結果を出した選手たち。これまでの戦いからの変化について踏まえつつ、試合を振り返ってみたい。

スタメン

 ヴェルディは前節からメンバーを4枚入れ替えた。福村、藤田譲瑠チマ、井出、小池がスタメン復帰をする。ベンチにはベテランの近藤直也が今季初めて入る。スタートシステムはいつもどおり14141となる。
 一方の福岡も前節から4枚入れ替えて臨む。スタートシステムは長谷部監督の代名詞とも言える1442で臨む。鈴木惇、森本にとっては古巣との対戦となる。

ダウンロード

変化した攻撃の形から結果を出す

 前節・琉球戦を最後にポルトガルリーグへ移籍した藤本寛也。彼が抜けたことでどういう風な攻撃を仕掛けるかこの日は注目した。主に右ワイドに入ることが多く、タッチラインを踏むくらいに大外に張り、得意な左足を活かし、インナーラップするフロントボランチとの連携で右サイド攻略する。

ダウンロード (5)

 この日、右ワイドに入ったのはスピードとドリブルが武器の小池だった。寛也とは明らかにタイプが異なる選手だ。ヴェルディの攻撃を詳しく語る前に、先ずは福岡の守備について触れていきたい。
 福岡は長谷部監督が水戸時代から継続するようにボール非保持時に1442でセットする。この日のヴェルディはSB片上げというよりは4バックの陣営を広く取りつつのビルドアップが多かった。福岡は2トップの一角を務める城後がCB若狭と平へプレッシング、もう1枚の森本はリベロ・ジョエルをマーク。ボールサイドのSHがヴェルディSBへプレス、DH鈴木もしくは藤井も前プレを仕掛けることが多く、敵陣にボールがあるときは基本的には前方向へのプレッシングをかけ全体的にコンパクトに守る。しかし、長谷部サッカーの申し子とも言える 前寛之がコロナ感染のため離脱や連戦でのメンバー変更の影響もあり、良い時の連動した前線から守備とはかけ離れたように思えた。

ダウンロード (1)

 プレッシング、連動性でのズレを見逃さなかったヴェルディ。福岡の前線のライン、プレッシングをかける2列目を攻略するかのようにヴェルディ最終ラインから縦関係になり1枚になった福岡DHの周囲の空いたスペースへ縦パスが入る場面が多かった。主にフロントボランチの佐藤優平、井出がパスの受け手になり、そこから両ワイドの小池、井上潮音へ展開され、攻撃参加する奈良輪、福村が絡む。両サイドともに3枚のユニットで上手く攻撃することが多かった。左サイドでこれまで主に体現していた攻撃を右サイドでも同じように再現された。

ダウンロード (2)

 また、右ワイドの小池は左サイドにボールがあるときに斜めへ走る動きが前半立ち上がりから何度も見られ、対面するSB輪湖を釣り出そうとする狙いがあった。井出がボールを持つと2回ほど福岡最終ラインの背後を取るように斜めの動きを見せる。スピードを活かした攻撃もこれまでよりも顕著である。

ダウンロード (3)

 先制点の場面も11分、端戸がプレスバックすると、ジョエルがボール奪取。そのまま持ち上がると、右サイドから中央へ斜めに走る小池が繋ぎ、その外を回ってきた優平が落ち着いてGKセランテスとの1対1を決める。ここまで何回か見られた小池の動きがしっかりと結果に出した。

 43分、獲得したFKを右サイドから福村が左足で正確なボールを入れると、小池が打点の高いヘディングシュートを叩き込み、追加点。小池にとっては今季初ゴールになった。このFKに繋がったのも前半から見せていた縦パス+サイド2選手の絡みであった。ハーフスペースから優平が縦パスを入れると、小池が右サイドへ寄ってきた潮音とワンツーそこから攻撃参加した奈良輪へパスを入れてPA付近でFKを獲得した。4選手が見事な連携を見せた場面であった。堅守が持ち味の福岡から2点リードという予想外の展開で前半を折り返す。

反撃をしのぎ、追加点

 福岡は、後半開始から主軸の遠野を含めて、福満、田邉と3枚交代する。スコアレスの時間帯を長く保ち、ここ1番で遠野を投入したいという狙いがあったのかもしれないが、その目論見は外れた。

ダウンロード (4)

 ただ、投入された遠野は際立ったプレーを披露する。攻撃を牽引することで、後半立ち上がりから福岡の時間帯が続く。47分、CKからファーで待つ遠野が左足でハーフボレーシュートを放つも惜しくもネット横へ。49分にはまたもCKからチャンスを作り、上島のヘディングシュートをマテウスが好セーブで防ぐもその跳ね返りを湯澤がヘディングするもクロスバー直撃して落ちてきたボールはゴールラインを割ったかのようにも思えたがノーゴールの判定。

 ヴェルディは流れを変えるべく、この日1ゴール1アシストの小池に代えて山下をそのまま同じ位置へ投入。すると、再びヴェルディに追加点が生まれる。57分、右サイドからのスローインを井出⇒潮音と繋ぎ左サイドへ展開される。左大外を攻撃参加した福村へ潮音がパス、駆け上がった福村はマイナスのクロスを入れてPA内でフリーとなった優平が落ち着いて流し込み3点目を入れて突き放した。

狙われていた横パス

 3点差となり、福岡は三國、東家を立て続けに投入して攻撃陣を入れ替えした20分ばかりを残して交代枠5枚を使い切る。SHも最前線で張り4トップのようになり攻撃的な福岡、3点差へ広げて精神的にも余裕が出てきたヴェルディであったが思わぬ形で試合が動く。
 73分、ヴェルディが自陣でパスを繋ぎ、左サイド福村から中央のジョエルへパス。ここを見逃さなかった遠野が見事にボールカット。そのまま持ち上がると、GKマテウスの動きをよく見て落ち着いてシュートを決めて1点返す。

 ボールカットして、そのままゴールを決めた遠野はお見事であったが、実は前半から何度か狙われていた。SBがCBの前列になり、ジョエルと横並びになった際に横パスをカットする動きが福岡には見られた。特に前半20分すぎ、ジョエルから若狭への横パスをカットした北島がそのまま持ち上がったがボールコントロールがわずかに大きくなり飛び出したマテウスにボールを取られシュートには持ち込めなかった。

 2点差とされたヴェルディは森田晃樹、澤井直人を投入。試合終了間際には山本理仁と16歳でプロ初出場の阿野真拓を投入して献身的なプレー、ボールを繋ぐ姿勢を最後まで崩さず、3対1で5戦ぶりに白星を挙げた。

まとめ

 前節からの悪いムードを変えるためにとにかく結果が求められる状況の中で、最高の結果を出してくれた選手たちに感謝したい。これまでも得点機会の演出までは出来ていたが、あと1押しが足りず得点が出来なかったが、今節では立ち上がりのチャンスをしっかりとモノにして精神的余裕がその後の追加点にも繋がったと考える。
 左サイドで行なっていた数的優位を作って崩すやり方を右サイドでも実行され、これにスピードが加わり、深みを出すことで攻撃に厚みが増したかのようにも思える。この攻撃方法で何回も攻撃を仕掛けて、得点へ繋がったことはとても大きな意味を持つ。それだけに、この攻撃がこの試合だけなのか今後も続くのかどうかは継続して見ていきたい。
 また、個人で見ていくと、まずは右ワイドで起用された小池。本来の持ち味であるスピードとPA内での勝負強さを発揮して見事に期待に応えた。左SB福村も失点に絡んでしまったが、左足からの精度の高いキックで2アシストと勝利に大きく貢献した。澤井や阿野とこれまでほぼ出番が無かった選手たちも実践経験を積めたことはまだまだ続く連戦において大きなプラス要素になるだろう。