【雑感】2023年J2リーグ 第40節 対ジュビロ磐田~喜びは半分~

東京ヴェルディ 1-1 ジュビロ磐田

 昇格争いのライバル直接対決は激闘となった。ポジティブにもネガティブにも捉えられる引き分けに終わった試合を振り返りたい。


スタメン

 前節・千葉に後半ATの大逆転で3-2で下したヴェルディ。この日の11名は前節と同じ顔触れで1442で臨む。ベンチには深澤大輝と大怪我から復活した梶川が満を持して名を連ねる。
 一方の磐田はアウェイで徳島に3-0快勝してヴェルディを得失点差で抜いて3位へ浮上。こちらもスタメン11名は同じで14231システムで臨む。

前半

 自動昇格争いの直接対決、2018年J1昇格POの因縁の地・ヤマハスタジアムということで多くのヴェルディサポーターが押し掛けた一戦。4月に負傷し全治8か月と言われていた梶川が驚異的な回復を見せてこの大一番にベンチ入りを果たした。戦力としては勿論、選手やサポーターの団結をさらに強固なものにしてくれるものであった。

 試合は立ち上がり、ボール握った磐田はSBの1枚が下りて後ろ3枚で回してサイドへ選手を寄せるとフリーとなる反対サイドへ大きく展開。ハーフラインを超えるか超えないかというあたりからジャーメインやドゥドゥを走らせて裏抜けを狙う。


 後半戦になり調子を上げて1トップに君臨するジャーメインであったが、開始早々に負傷しそのまま後藤との交代を余儀なくされた。残りシーズンはどうなるのか状態が気になるところである。

 後ろから長いボールを入れる攻撃に加えて磐田は試合テンポが落ち着いてくると足元でボールを繋ぎ始める。ヴェルディの最終ライン4枚は横スライドが速く2CBは中を締めて堅いため、縦パスの出し入れをしながら様子を伺う。磐田の上手いところはSHやSBがヴェルディのSBを喰いつかせるように意図的に高い位置を取らずにいたところだ。SBを外へ広げさせるように走らせて空いたスペースを山田や松本、3列目の上原や鹿沼、SB鈴木や松原がインナーラップしてクロスやシュートを放つ。

 磐田に押し込まれることは織り込み済みだったのかヴェルディはいつも以上にロングボールを使って素早く陣地回復する傾向にあった。染野、河村がポストになりヘディングで繋いで攻撃参加好きな磐田両SB鈴木と松原の裏を突き、手数をかけずにゴール前へ攻め込んだり、サイドに散らして中原、齋藤が起点を作りSB宮原、加藤蓮らとの連携からクロスでチャンスメイク。稲見、森田晃樹がそこに絡みながら中央でボールを収めては再びサイドへ展開し攻撃という流れ。

 14分、ヴェルディは中央でFKを獲得。中原の正確なキックから染野が合わせるも枠を惜しくも外れて得点にはならず。勝負強さを見せる染野であるが、やっぱり前半にはゴールが取れない。28分にはカウンターから右に流れた河村が起点になりこぼれ球を稲見が右足で強烈なミドルシュートを放つもこれも枠を捉えられなかった。利き足でない左足だったら得点出来たのか?と悔やむ場面だった。

 磐田の決定機は前半終了が近づく42分だった。上述のような見事な右サイドから連携で入っていくと中央に絞っていたドゥドゥがミドルシュート。枠を捉えたシュートもマテウスの渾身のセーブ。シュートを放ったドゥドゥも止めたマテウスも個の高さが光るプレーだった。

 攻め込むも決定機はそれほど多くなくお互いのCBが最後を締めてなかなかシュートまで持っていけずスコアレスで折り返した。

後半

 お互いにメンバー交代無しで後半を迎える。後半も立ち上がりは磐田が主導権を握る。プレー強度、ギアを1つ上げたかのようにアグレッシブな入りをみせると前半よりも深い位置を目掛けてロングボールを入れてヴェルディCB林と谷口栄斗を引っ張り出し、持ち前のサイド攻撃からゴールへ迫る。2CB伊藤とリカルドグラッサだけを残して前がかりに仕掛けるが、ヴェルディにボール奪取されると広大なスペースを空けているためカウンターに合うガバガバな設計であった。

 磐田は前半同様に徹底してSBCB間を狙う。すると、右サイドからのCKを獲得。CKからの混戦でドゥドゥがシュートを撃てずに空振りするとボールを拾った中原が自陣PA付近から猛烈なドリブルをスタート。ぐんぐん加速していきゴールへ一目散へ繰り出す高速カウンター。中原は並走する左サイドの齋藤へパス。齋藤は折り返すと中原がシュート、一旦は三浦に防がれるも自陣ゴール前から駆け上がった林がプッシュしてヴェルディが先制に成功する。押され気味だったなかで見事なカウンターが決まった。

 上述のようにネガトラに弱くてピンチを招く磐田は自らのCKから失点を許し、それはヤマハでの千葉相手に喰らったのと同じ絵に見えてしまったものであった。

 この先制点が磐田の圧に火をつける。変わらずSBCB間を上手く突くサイド攻撃からクロス。中で合わせたり、マイナスの折り返しからのシュートを狙う。ただ、ヴェルディも身体を張って防ぎマイボールになるとすぐさまカウンターに。伊藤とリカルドグラッサの前で染野、河村がボールを収めて鋭い攻撃から磐田ゴールを目指す。

 磐田はヴェルディの守備ラインを下げることでCB林と谷口栄斗の前のバイタルを使ってのシュート、ヴェルディは鈴木と松原の2名が上がり超前がかりになった2CBだけが守る磐田の前でボールを収めて周囲の選手が追い越すことでのカウンターと皮肉にも両チームCBの前のスペースを使われがちになってしまった。

 57分、1点リードのヴェルディは脚が釣った齋藤と故障上がりの河村に代えて平と山田を投入。平が左SBに入って加藤蓮を1列上げて左SHになる。山田はそのまま2トップの一角に入った。磐田が攻め込む展開は変わらず、山田が自陣PA付近まで戻る懸命の守備で何とかゼロで防ぐ。

 60分、磐田は古川と藤川を投入し、左SHドゥドゥが右へ回った。両翼からドリブル仕掛けでサイド攻撃に厚みが増した。

 65分にヴェルディは加藤蓮に代えて綱島悠斗を投入。森田晃樹が左SHへ回る。プレー強度を維持することをテーマとして取り組む中でサイドを森田晃樹と平にすることで守備力とスピードが落ちてしまうこの起用を続けることには疑問が残る。この悪い予感が当たってしまう。ヴェルディが攻め込むも素早いカウンターからゴール前まで迫った磐田は右サイドで一旦ボールを収める。前半から3列目からの飛び出しを見せる上原がハーフスペースを上手く入っていくと晃樹のマークが追いつかずフリーに。クロスも出来る状況であったが、左足で巻きこむように鮮やかなシュートを決めて試合は振り出しに。

 ホームの声援を受けて勝ち越し点を目指す磐田。古川が左サイドから仕掛け、右はドゥドゥが仕掛ける。対するヴェルディも押され気味であるが、身体のキレがあり好調な中原を中心とした鋭いポジトラでゴール前まで運ぶ。シーズン結果に直結する最終盤に中原のパフォーマンスが絶好調に近いのはとても嬉しいものであり、昇格のキーマンになるのはこの男かもしれない。

 両サポーターの大声援もあったのか、後半途中にオフサイドながら抜け出してシュートまで行った染野へのイエローカードが提示。その一方で終了間際に投入された磐田のファビアンゴンザレスはファールで試合止まったにもかかわらずシュートを放ったり、オフサイドで止まってもプレー続けてもイエローカードが出ないと主審・先立圭吾の一貫性の無い判定はとても不満が残った。試合終了と同時に両監督から抗議が行くなんてなかなか見ない光景はこの審判団へ納得いかなかったことを物語っている。

 サイド攻撃からチャンスを作る磐田、鋭いカウンターからゴールを目指すヴェルディの昇格ライバル直接対決はプレー強度高く、激しく、熱い試合となったが1-1引き分けに終わった。

まとめ

 直接対決だったゆえに勝点3が欲しかった試合だ。しかし、試合内容からすると磐田に勝点3を与えなかったとポジティブに捉えることも出来るだろう。得点を奪えなかった前半から自分たちのやりたいニアゾーン攻略も出来ており、集中した守備でゼロに抑えて、先制に成功とここまでは理想的な展開であった。ただ、配置そのままもメンバーを代えたことが守備が上手く機能せずに逃げ切りに失敗した。もしかしたら今後は5バックで1541にするオプション使うかもしれないと悟った。
 大怪我から復帰した梶川も終了間際に途中交代で入ったが、ほとんどプレー関与は出来なかった。ただ、精神的支柱の復帰は選手、サポーター、関係者たちをなお強固な一枚岩にしてくれたに違いない。
 2位清水と勝点差1で迎える残り2試合、クライマックスは目前だ。