【雑感】2023年J2リーグ 第27節 対ベガルタ仙台~中原輝、圧巻~

東京ヴェルディ 4-3 ベガルタ仙台

 圧巻のパフォーマンスだった。両軍合わせて7得点の打ち合いとなった試合の主役は移籍してきたばかりの中原。個の仕掛け、味方同士での良い距離感での連携とわずか1試合で緑のサポーターを虜にした活躍に触れつつ試合を振り返りたい。


スタメン

 前節・徳島と0-0引き分けに終わったヴェルディ。この日は3名を入れ替える。週半ばにC大阪から移籍が発表されたばかりの中原がいきなりスタメンで右SHに入る。
 一方の仙台は前節・金沢に1-2で敗戦。4名を入れ替えて臨む。こちらも浦和から加入した松崎が右SHに入った。若狭は古巣との対戦となった。

前半

 3戦未勝利のヴェルディと7戦未勝利の仙台と不調なチーム同士の対戦。仙台は昨季途中までヴェルディを率いていた堀監督が就任2戦目でいきなり古巣との対戦となった。堀サッカーがどんなサッカーをするのか想像していた通りの内容が90分間繰り広げられることになった。

 立ち上がりのヴェルディ、染野が最前線で1トップとなり齋藤と稲見がIHで森田晃樹をアンカーとする中盤トライアングル。SHに中原と北島が入って14141となる。染野はCB若狭と菅田と背を向けて最前線で張り付くよりもこの2名が喰いついてことを知り、下がってきてCBDH間でボールを貰う動きを見せる。ホと郷家の2トップで1442として守る仙台に対して先述の染野に加えて、齋藤、稲見をはじめ間、間で上手く立ち位置を取るヴェルディ。特に齋藤のこの日のポジショニングが抜群に冴えており、これが結果的にゴールショーへと繋がった。

 左サイドでボールカットした稲見。ワンツーでそのままサイドを駆け上がるとハーフスペースの齋藤へパス。齋藤のシュートを林に防がれるもこぼれ球を中原が詰めて6分、ヴェルディが先制に成功する。ショートカウンターから人数をかけて攻撃が実を結んだ。加入直後の中原がいきなり得点を挙げたことでチームが盛り上がる。

 幸先よく先制したヴェルディ。左サイドに選手を寄せて右サイドでフリーになる中原へ大きく展開。中原に時間とスペースを与えてそこからの仕掛けでさらに攻撃に出る。ここまでリーグ№1のドリブル回数で攻撃を牽引しながらも町田へ移籍したバスケスバイロンの穴を感じさせない、むしろパワーアップすら感じてしまうような中原の個人技には残り試合での活躍にも期待が持てる。

 出鼻を挫かれた仙台。監督変われど、前回対戦同様に5レーン意識したように外中外で上手く斜めのボールを入れて押し進める場面があった。山形同様にこういう風に丁寧にボールを運ぶチーム相手に4-4で守るヴェルディは間、間を取られてしまうとフィニッシュまで持って行かれてしまう。右SB真瀬とこちらも新加入の松崎のユニットには勢いを感じ、手を焼きそうな予感が漂った。

 1442で守る仙台。ビハインドになったこともあり前線からマンツーマンでプレスし始める。中から外へプレスをかけてヴェルディのパスをタッチライン際へ追い込む。ヴェルディは仙台のプレスを正面から受けてしまい、だんだんと低い位置へ追い込まれていき自陣でのプレー時間を強いられてくる。試合後の選手コメントでもあったがCB→SBのパスが多くなったことが窮屈さを助成してしまった。勢いあった右サイドのユニットで追い込むと、松崎が余裕を持って左足でクロス。ホがPA内で相手マークを振り切り、ヘディングシュートで仙台が同点においつく。右SB宮原と久しぶりのスタメン出場となったCB林の守備は終始イマイチだったのがこの試合の印象でもある。

 失点後も仙台に押されていたが、ヴェルディは齋藤が動くことでスペースを空けて稲見、北島が中央へ入って行き真ん中に人数をかけて敵陣でボール回す時間が増えて盛り返す。すると獲得した右サイドからのCK。キッカーの中原がニアへボールを入れると染野と競り合った菅田に当たってそのままゴールイン。33分、オウンゴールでヴェルディが勝ち越す。

 リードしたヴェルディは染野と齋藤の2トップ化で1442で守る。精神的余裕も出てきたのか守備にもリズムが生まれる。仙台のビルドアップに対して齋藤がファーストディフェンダーとしてプレスをかけに行くと連動した北島がサイドでひっかけてそのまま持ち上がりサイドから仕掛けて染野へのパスをクリアされるも晃樹が詰める。完全に1点モノだった。
 その後も、仙台のボールをカットすると選手の距離感近く、ショートカウンターを何度か見せる。攻撃にテンポが出て良い流れ。
 裏抜けした齋藤に後方からパスが通る。ボールを受けた中原のシュート。こぼれ球を染野、混戦から再び中原が拾うと中へ絞った北島へパス。GKの飛び出しをよくみて左足で決めて3点目。良い距離感のもと得点へ繋がった。これまでのやりたかったものであるがこの日は上手い具合にハマった。

 2点リードにもかかわらず再び仙台の攻撃、圧を受けてしまうのがこの日のヴェルディ。やっぱりこの日の宮原は精彩を欠き、仕掛けられてはクロスを上げられピンチを招くとホに2点目を決められる。相手の時間帯にしっかりと決められるらしくない展開で前半終了。

後半

 ヴェルディは後半開始から齋藤に代えて加藤蓮を投入。齋藤は脳震盪による交代となった。蓮を投入してどんな配置にするのか?と仙台が認識できる前のファーストプレーで襲い掛かる。仙台の守備は的を絞れず、北島もCBSB間を取った中原もフリーにしてパスワークから侵入を許すとファーから入ってきた蓮にもマークが追いつかず、46分、ヴェルディが4点目を挙げた。電光石火の追加点となった。

 ヴェルディは再び右サイドからの攻撃に左WB化した蓮が飛び込む。攻撃になった瞬間に一気に人数かけて駆け上がる厚みがあるものであった。一方の仙台は51分、左サイドからの攻撃。PA内で足を引っかけられた松崎は完全にPKであったがノーファールの判定。主審の判定は終始不安定であったことは否定できなかった。

 ヴェルディは宮原、林、平の3CBで1343をベースに守備時は1541としたが中盤の北島と稲見の位置と役割が曖昧でこのスペースを使われてそのまま縦へ行かれたり、左へ展開されたりと仙台に攻めこまれる。城福は守れていたと評価していたがずいぶんと押し込まれることが増えた。

 深澤大輝と北島に代えて山越と山田を投入し宮原が右WBに移る。しかし、重心を後ろにかけすぎたことと中原、山田のプレススタート位置が遠いことで仙台最終ラインが楽にボールを持ててヴェルディは自陣で守る時間帯が続く。すると、PA内に侵入した仙台の選手を宮原がひっかけてヴェルディは前半戦対戦同様にPKを献上。またもキッカーは氣田。マテウスの動きをよく見て左側へ決めて3-4と1点差へ詰める。

 そのあとも耐える時間帯が続くもなんとか踏みとどまり、大味の試合を制したヴェルディが4戦ぶりの勝利を飾った。

まとめ

 加入間もない中原の1得点2アシスト、オウンゴールのきっかけのCKと4得点すべてに絡む活躍はお見事だった。自身でも試合後のインタビューで語っていたように出来すぎの部分はあるがチームの期待にいきなり応える。さすがに毎試合でここまでの数字を残すのは現実的では無いが縦に中へ仕掛けて、ポジショニングも良く、連動した攻撃はシーズン残りの新たなオプションになることは間違いないだろう。
 マテウスはノーチャンスの3失点であったが全体的に守備強度が低くなったことは気になる。前節、徳島戦でもクロスからピンチを招いたこともありクロスを上げさせない、PA内での競り合いといった細かな面での見直しは必要だ。2位磐田が引き分けたことで勝点で再び並んだ。残り15試合、痺れる戦いの幕が上がる。