【雑感】2020年J2リーグ 第39節 対町田ゼルビア~始まりが始まらない~

東京ヴェルディ 0-1 町田ゼルビア

J1昇格の可能性が途絶えた残り試合、云わば「消化試合」にも関わらず、シュートはたった2本で無得点とストレスしか残らない「消化不良試合」となってしまった。前線からのプレス、ボール奪取後のドリブルやスプリントからのフィニッシュと町田の良さが際立つ試合を振り返ってみたい。

スタメン

 前節千葉に1-1で引き分けたヴェルディは左SBに中盤の山本理仁を起用。森田晃樹、井上潮音、端戸がスタメン復帰してスタートシステムはいつも通り14141で臨む。
 対する町田は3戦連続3失点で3連敗と不調。それでもこの日のスタメンは前節山形戦と同じ11人で臨む。

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攻守に貢献した町田2トップ 

 試合立ち上がりヴェルディはロングボールを使い、陣地侵入を図る。左サイド中心に深い位置まで押し込みチャンスを伺うもシュートまで持って行けず徐々に試合が落ち着く。

 左SBに起用された理仁を片上げする形で3バックへ可変する。これに対して町田は1442で守る。2トップの安藤と平戸はジョエルのマークを受け渡ししながらヴェルディ最終ラインへプレッシングをかけて連動するようにボールサイドのSHも一列上がるように1433のようになってプレスをかけていく。このプレス強度が高く、ヴェルディは圧に負けるように外へ外へ誘導されていく場面が目立つ。右サイドならば小池とサイドに流れてきた端戸、左は潮音や理仁がフロントボランチ井出や晃樹と絡むも狭い局面へ追い込まれて思うようなプレーが出来ずに町田にボール回収される。

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 集中した前線からの守備を見せる町田。ボール保持すると右SB小田が高い位置を取ることが多く、こちらも片上げの3バックを採用。もしくはDH高江が下りて2CBと3バックを形成。右SH吉尾とCF安藤が右サイドへ流れて起点を作りフィニッシュへ持ち込むことがあった。

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 ただ、遅攻や崩すというよりも、ボール奪取すると安藤やジョンチュングンがフィジカルを活かしたドリブル突破、ゴールが見えると遠目の位置からでもシュートを積極的に放っていく場面が多い印象だった。ボール支配率こそ低いもののチャンスクリエイト回数やシュート数では圧倒した。

 飲水タイム明け、ヴェルディ・永井監督は立ち位置へ変更する。左大外に居た理仁をジョエルの脇に置く偽SB起用する。ビルドアップの出口を2枚にして確りと繋ぐ狙いがあったのだろうが、3-2でビルドアップをすることが町田側に都合が良かった。3バックに対しては3トップ化、2DHには対面する2DHがつくマンツーマン対応がし易くなりワイドの選手にはSBが対応と守備のリズムをさらに良くすることになり、ヴェルディのパス回しがほぼ機能しなくなった。

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 パスが繋がらないときは苦し紛れのようにロングボールを入れるも精度に欠き、効果的に攻撃には結びつかない。前半は完全に町田ペースで試合が進むもスコアレスで折り返す。

浮上のきっかけを作れない

 全くいいところの無かった前半。ハーフタイムにヴェルディはメンバーを変えて再び立ち位置を変える。

 理仁に代えて福村を投入してそのまま左SBに入れる。ボール保持時に福村は左大外に張り、ボランチの位置には井出が下りて来て13241として5レーンを埋める。

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 斜めのパスコースを多く作ることでボール前進を試みる。サイドへボールと人を寄せて密集を作ると今度は反対サイドへボールを展開して町田守備の綻びを突いてクロスからチャンスを作るも48分の崩しくらいしか見せ場は無かった。

 ボールを握り侵入しようとするも、町田のプレッシング、中央を閉じた守備を崩せずに時計の針は進む。町田はボール奪取後に前線の安藤、平戸がボールを収めると2列目の選手が追い抜くように駆け上がり縦方向にベクトルが向いたシンプルな攻撃をみせる。

67分、試合が動く。自陣からボールを繋ぎ敵陣へ進入すると奪取すると、スルーパスに裏抜けした平戸がマテウスにPA内で倒されてPKを獲得。このPKを自らが決めて町田が先制。

 1点ビハインドになったヴェルディは佐藤優平、山下、クレビーニョを立て続けに入れて、変化をつけて流れを取り戻そうとするも稚攻のまま相手に脅威を与えることが出来ずに0-1でタイムアップ。

まとめ

 ボール支配率65%対35%なのにシュート数2対16、0-1で完封負けと何一つ良いところが無かった試合。極端に言えば、空いているスペースへボールを繋いでいくヴェルディと手数かけずにゴールへ向かう町田であった。目標を失い、選手たちもモチベーション維持が難しいことは理解出来るがあまりにもひどい内容だ。シュートを打たなければ何も始まらないという慢性的な課題がシーズン終盤になっても続いていることが残念である。
 得点が取れる良い時の攻撃は中央フリーマンと両ワイドの選手がPA幅内に位置取りして横パス・クロスでPA内での崩しからゴールを奪えることが多い。ただ、先日の琉球戦や今回の町田戦では3トップの距離感が開きすぎてしまう場面が目立った。高さという武器が無いため、グラウンダーのパスでの崩しが多くなるから必然的に選手同士の距離が近い方が優位になる。
  来季の永井監督続投が決まっている以上、立ち位置の再考は残り試合で取り組むべきテーマだろう。