【雑感】2020年J2リーグ 第27節 対栃木SC~プレッシングとカウンターの応酬~

東京ヴェルディ 0-0 栃木SC

 前節の快勝劇からの継続性に期待した部分もあったが、少し想定していたように・・・良い流れは分断されて、またいつもの手詰まり感が出てしまった。栃木のアプローチの仕方、それに対してのヴェルディの回答、そしてゴールを奪うための術を試合を振り返りながら考えてみたい。

スタメン

 前節・愛媛に4-1で快勝したヴェルディ。得点を挙げた新井、小池はベンチスタートで前線には山下、端戸、井上潮音が入る。また中盤には佐藤優平と藤田譲瑠チマが復帰してフロントボランチ、底の位置のリベロには山本理仁が入る。システムはいつもどおり14141で臨む。
 対する栃木は前節・山形に敗れて4試合無得点の状況が続く。システムは1442であるが、左SBにはスピードある黒崎を起用。2トップには明本と久しぶりの出場となる榊を起用。矢野はベンチスタートとなる。

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出足鋭いプレッシングとショートカウンター

 観戦するのはとても寒すぎる気候であったが、アグレッシブに戦う栃木イレブンにとっては良いコンディションになったのではないだろうか。キックオフの笛と同時にヴェルディ最終ラインへ果敢にプレッシングをかけていく。

 1442システムを基本として、2トップ明本と榊が縦関係になる。明本と2SH大島と森が最終ラインとGKマテウスにプレスをかけながら、リベロの理仁へのパスコースを制限する。榊はその理仁をマークする。ヴェルディSBクレビーニョと福村が高い位置を取って、そこへパスが渡るならば対面するSB溝渕と黒崎が縦スライドで対応してその空いたスペースにはDH禹と西谷が斜めに下りて埋める。最前線の端戸が下りてきてボールに関与するようならCB柳がそのままついてきて潰すという徹底ぶりでをみせた。

 高い位置でボール奪取してショートカウンターからゴールを狙う意図が見られた。おそらく開始5分くらいまではほとんどヴェルディ陣地でボールが動き、栃木がゴールへ迫る場面が続いた。

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サイド攻撃に活路を見出す

 栃木の果敢なプレッシングに立ち上がりこそ苦労したものの徐々に適応していくヴェルディ。最終ラインが丁寧なビルドアップから栃木プレスを剥がしていき、栃木の2列目までを一気に突破するとそこからドリブルで運んでゾーン3へ入っていく。左サイドでは福村、優平、潮音が大外とハーフスペースでポジションを流動的に変えることでマークをずらし押し込み、2CB田代と柳の真っ向勝負しても分が悪いため、端戸がその脇へ流れるような動きからニアサイドで起点を作り、右サイド山下が中央へ走り込み合わすという狙いが見られた。

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 また、右サイドではクレビーニョがミドルパス、空中戦のターゲットになりそのボールをジョエルや山下が回収していく。山下はハーフスペース⇒大外に流れて黒崎の背後を取る動きからサイド攻略を図り、31分にはスローインからボールを受けて右サイドからのクロスに潮音がボレーシュートで合わせる決定的な場面があった。

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 その後、ヴェルディは中盤の底にいた理仁と右フロントボランチのジョエルの位置を入れ替える。全周囲からプレッシャーを受ける中央に、広い視野を持つジョエルを置いて、右ハーフスペースから中へ切れ込んでいくためにレフティの理仁を右サイドへ持ってきた。

際立った栃木の帰陣

 ヴェルディの攻撃からゴールを脅かされる栃木であったが、最終ラインの身体を張ったブロックと帰陣の速さで持ちこたえる。ヴェルディがビルドアップからボールを前進させて行っても一瞬の迷いや判断ミスで1秒でもプレーが止まるようなら、SH大島と森の帰陣は速く、あっという間に4-4の守備ブロックを形成する。ヴェルディが力づくで突破を試みてフィジカル面で優位に立つ栃木に跳ね返される。
 栃木が自陣でボールを奪取するとSH大島と森はヴェルディの守備陣形が整う前に空いたスペースを突くようにスプリントをしていきサイドで起点を作り攻撃を仕掛けていく。

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 ピッチを広く使う展開であったが前半スコアレスで折り返す。

選手を変え、配置を替えてみるも

 後半開始から再び栃木プレッシングのギアが上がり、ヴェルディ最終ラインへ襲い掛かる。高い位置から嵌めに行き、ボール奪取すると、最前線にいる明本へボールを集中させてシュートチャンスを作る。

 後半も前半同様に、栃木が積極的にプレスをかけて、ヴェルディが相手の動きをみながら攻撃を仕掛けていく展開になる。次第にオープンな展開になると右SBクレビーニョの攻撃参加が目立つようになる。何度もPA内まで侵入してクロスボールを入れる場面を作り栃木ゴールに迫るが、栃木最終ラインの壁に阻まれる。

 60分過ぎ、栃木は中盤の選手を入れ替える。右SHに山本、ボランチに岩間を投入。与えられた役割は同じで再びプレスの強度を高めて行く。対するヴェルディは新井、森田晃樹を入れて攻撃の活性化を図る。すると、投入されたばかりの新井がいきなり魅せる。左サイドでボールを受けるとPA内で相手を交わして速いクロスを入れる。そのあともサイド突破からのクロスやカットインからの右足シュートと見せ場を作る。

 飲水タイム明け、栃木は瀬川と矢野を投入。瀬川が左SBに入り、黒崎が右へ回る。矢野は最前線に入り身体を張ってポストプレーをして下がり目になる明本へチャンスを演出する。瀬川が左サイドを駆け上がりチャンスをクロスを上げる場面が何度も見られ再び主導権を引き寄せる。
 たまらずヴェルディは矢野対策と攻撃化を狙って近藤をCBに入れて3バック化、小池を右サイドに入れてクレビーニョと2枚をサイドを張らせる。

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 近藤の投入で、空中戦に強い3バックとなり矢野対策にはなったものの肝心な攻撃はサイド攻略出来ず、何度かトランジションから生まれたバイタルエリアからのロングシュートがあっただけで結局両者ともに最後までゴールを奪えずにスコアレスドローで試合を終えた。

まとめ

 前節、ゴール挙げて良いパフォーマンスを魅せていた小池と新井をベンチスタートして、途中出場も短い時間のみのプレーで無得点というのは永井監督の選択ミスだったと思う。せっかくの4-1で快勝した良いムードもこの試合では何も感じられなかった。過密日程の連戦での疲労など考慮したことも考えられるが勢いに乗る選手たちをスタートから起用しなかった事は悔やまれる。雨でスリッピーなピッチコンディションもあり、強引にでも地を這うようなミドルシュートを放っていくことがあっても良かったのではと考える。
 栃木の出足鋭いプレッシングには徐々に適応して、プレスを剥がしてボールを前進するも2CB(田代と柳)の牙城を崩せなかったという印象。巨人なフィジカルを誇るこのコンビに端戸1枚で立ち向かうのは無理があった。それならば、端戸をワイド起用してそこでボールを収めるなどの手も考えられたが、岡山戦同様にチーム全体でのフィジカル面での弱さを露呈してしまった。
 マテウス中心に守備陣の踏ん張りで勝ち点を稼いでいる最近の戦い、攻撃陣の積極性、大胆さなど雰囲気を求めたい。