【雑感】2022年J2リーグ 第39節 対ベガルタ仙台~再現性実り、3連勝~

東京ヴェルディ 2-0 ベガルタ仙台

 2009年シーズン以来となったみちのくの地・仙台での一戦。この数試合見せていた再現性有るプレーで2得点を奪い、今季初の3連勝を飾った試合を振り返りたい。

スタメン

 前節・山形を1-0で下し、2連勝中のヴェルディ。稲見と負傷明けの井出がスタメン復帰。2名を入れ替えて1442システムで臨む。
一方の仙台は前節・岡山に0-3で完敗。この日は5名を入れ替えて臨む。昨季までヴェルディに所属していた若狭もスタメンに名を連ねる。システムは13421で臨む。

前半

 コイントスに勝ったヴェルディがエンド交換して前半迎える。試合後の城福監督のコメントによれば、仙台サポーターの圧を考えて反対にしたとのことである。就任後、未だにホームで勝利無い伊藤監督を揺さぶる。

 立ち上がりからボールを握るヴェルディ、カウンターの仙台という構図になる。仙台は基本ベース13421システムからWBが最終ラインへ下がり1541で対応。右SH化する遠藤と左SH氣田はヴェルディのSB奈良輪と加藤蓮へマークして、DH松下と中島が縦スライドで加藤弘堅を見る。誰が誰にマークするのか整理されているような守り方をする。

 この仙台に対して、ヴェルディの右SHバスケスバイロンは大外に張り幅を取り、左SH井出は中へ絞る形。最終ラインからはプレスに来た仙台の中盤裏を出口にするように1列飛ばしロングボールを入れて2トップの染野と河村が競る。競り合いではヴェルディに分があり、ボールに先に触れることが多かった。この日、解説を務めた我らの田村直哉は、仙台の前線からの守備を褒めていたが、試合後の選手たちのコメントではあまり脅威に感じなかったようでミドル・ロングパスがよく通っていた。

 攻撃の形を見せるヴェルディは、基本的に攻守において敵陣でプレーすることを志向するため最終ラインをどれくらい高く維持出来るかがカギである。

 この日、久しぶりの出場となった井出は左サイド~中央にかけて位置取りして、染野との連携から前を向いて仕掛ける場面を作る。また、セットプレーではキッカーを務めて鋭いボールを蹴り入れる。1本目のCKとなった左サイドからはヴェルディが珍しく、先にボールに触れて加藤弘堅がニアでフリーで合わすも枠外だった。ピッチ上で対面した若狭とはお互いに手の内を知り尽くしているかのように楽しんでいたように見えた。

 一方で仙台の攻撃。ヴェルディは1442で構え、2トップ河村と染野が仙台最終ライン3枚にプレッシング対応。バイロンはWB内田、奈良輪は氣田に付くため自然と最終ラインで仙台が数的優位になる。こちらも久しぶりの出場となった左CB福森にヴェルディのプレスが追いつかずフリーになりがちなことから縦パスが入ることが目立った。

 サイドに流れて起点を作るか右SH遠藤が内へ絞りゴールへの迫力を出そうとするも中央を締めるヴェルディの人数の壁に崩し切るまでは行かない。あとはトップに入る中山が裏抜け、ポストプレーを試みるも水戸時代の同僚ンドカとの身体ぶつけあうマッチアップに優位性を作るまでは行かなかった。

 お互いに敵陣でボール奪取からシュートチャンスを迎えるも仕留めきるまでは行かず立ち上がりは終えて試合が落ち着き始める。

 ヴェルディが仙台陣地に入ると仙台のプレス弱くなり?行くのか行かないか曖昧?になり加藤弘堅や稲見が自由にボールを持てる回数が増える。稲見から斜めのパスに染野抜け出しハーフスペースを狙うここ最近よく見る光景も出てきて徐々にリズムが出てくる。CKでは前節・山形戦での得点の再現になるショートコーナーを繋ぐ形を披露し仕込んできたことがピッチで表現される。

 リズムを掴むヴェルディは、ネガトラ時も複数人でボールホルダーを挟み込みボール奪取する守備が嵌り始め主導権を握る。最終ラインのンドカ、谷口栄斗へのプレスも弱くなり余裕をもってボールを捌ける時間が増えて行くも前半はスコアレスで折り返す。

後半

 ヴェルディは負傷明けの井出に代えて梶川を投入してそのまま左SHに入る。井出は時間制限があったのかもしれない。ハーフタイム明け、仙台は前線からの守備を再び強くして押し込むようになる。ボールを奪うと、右SH遠藤は中央までには絞らず対面する梶川をピン留めするように位置取りする。梶川がその圧に負けてしまったのか最終ラインまで吸収されることもありヴェルディの中盤は3枚の状態になり石原や若狭が高い位置を取り、後半立ち上がりは仙台が押し込む時間帯になる。

 流れを引き戻すべくヴェルディは選手を入れ替える。稲見とバイロンに代えて馬場晴也と佐藤凌我を投入。馬場はそのままDHに入り、佐藤凌我はトップに入って河村が右SHへ回る。押し込まれた方が都合が良かったヴェルディ。仙台の最終ラインの背後を狙うボール、トランジションを利用して敵の守備体形が整う前の攻略を見せて行く。スタメンだったバスケスバイロンは左利きでカットインするタイプとは異なり、右に回った河村は縦へ仕掛けて右足でクロスを上げるため攻撃のスピードを落とさずにゴールへ迫ることが出来た。途中出場の梶川は井出よりもスペースに走り込みボールを貰うことが出来るため持ち場の左サイドだけではなく中央まで入ってきてパスワークに加わる。

 得点を奪うべく左SB加藤蓮に代えて深澤大輝が投入。奈良輪が左に回って、大輝が右SBに入り、右サイドの攻撃にさらに厚みを持たせる。

 ようやく得点が生まれる。76分、右サイドからのCKを細かく2回繋ぎ、馬場のクロスを染野がヘディングで合わせてヴェルディが先制する。まるで前節を見ているかのような得点だった。

 先制点を挙げたヴェルディであったが、自陣でミスからピンチを招く。しかし、ここはマテウスの好守でゴールを許さない。マテウスは雄叫びを上げる気持ちの入れようだ。

 仙台はリャン、富樫、真瀬と3枚同時交代で反撃に出る。試合も大詰めを迎え、85分には最終ライン福森を下げてカルドーソを投入して1442へシステム変更。対するヴェルディも先制点の染野に代えて阪野を投入。

 ヴェルディは右サイドの連携からPA内の深い位置まで入り崩すも梶川のシュートは決められず。ただ、88分に再び同じように右サイドを攻略すると、最後は阪野がストライカーの嗅覚溢れるこぼれ球への反応で追加点を挙げて勝負あり。ヴェルディが今季初の3連勝を飾った。

まとめ

 粘り強い守備でゴールを割らさず、数少ないチャンスを活かして2得点を挙げて仙台にシーズンダブルを達成した。シュートまで持って行けなくてもハーフスペースの攻略、デザインされたCKと狙いを持った攻撃がピッチで繰り広げられていた。PA内に侵入を許さず崩されるような場面は多くはなかったもののミスからのピンチが試合立ち上がり、先制点後にありここで失点していたらどっちに転んでもおかしくなかった試合に思えた。前へ人数をかけた攻撃をするため、不用意なパスミスなどでボールを取られると広大なスペースを与えてしまい、一気にピンチになることには変わりない。
 短い時間での出場ながら結果を出した阪野。7試合で3得点と実績の高さを証明している。先制点の染野もボールが収まり、周囲との連携も取れてきてチャンスメイクが出来てきており久しぶりの2得点目は嬉しいものだっただろう。
 残り3試合。次節は前回対戦で残り5分から2失点を喫して追いつかれた岩手だ。その雪辱を果たすべく、東北3連戦の締めくくりに挑む。