【雑感】2022年J2リーグ 第10節 対レノファ山口~消えたガムシャラさ~ 

東京ヴェルディ 1-3 レノファ山口

 前節の初黒星の嫌な流れを払拭できず、痛い連敗。スコアだけ見ると一時は同点に追いついたものの90分通してみると低調な内容は否めない。試合を振り返りながらその理由を探ってみたい。

スタメン

 前節・熊本に2-3で今季初黒星を喫したヴェルディ。高木和、馬場晴也、佐藤凌我、新井がスタメン復帰。バスケスバイロンが初めてスタメン起用されて前節から5名を入れ替えて臨む。ベンチには井出が今季初めて入る。
 対する山口は前節・仙台に敗戦。この日は田中、池上、吉岡と3名を入れ替えて臨む。高木大輔にとっては古巣との一戦になる。 

前半

 25℃を記録する暑さの中で行われた一戦。気温の高さを言い訳にしていいのか分からないがヴェルディの選手たちからは元気の良さがあまり感じられなかった。試合は全体をコンパクトに守る山口の最終ラインに対して、ヴェルディは右大外のバイロンへ斜めのボールを入れて起点を作る狙いや梶川の飛び出しから背後を取るプレーが立ち上がりに見られた。後述でアシストを記録するもののなんかチームプレーに拘り過ぎて、途中出場時のゴリゴリ感がこの日のバイロンからはあまり見られなかった。

 これに対して山口は、岸田が山本理仁へのパスコースを消すように立ち、両WG吉岡と高木がCBへプレスかけに行く。理仁には佐藤謙介が、SB山越と加藤蓮には池上と田中がスライドで対応してショートパスをさせまいとマンツーマン気味に守る。ヴェルディよりも山口の方がプレスが明確だった印象である。

中央固められたからなのか元々の狙い通りだったか判らないが、ヴェルディは縦に横に1列2列飛ばすような大きなボールで展開してゴールへ迫ることが多かった。9分、右へ展開されて、バイロンがポスト役になり、インナーラップしたSB山越がボールを貰いPA内へ侵入してシュート。20分、理仁から右のバイロンへ展開。追い越す森田晃樹を囮に中央の凌我へパス。シュートチャンスも凌我が空振り。このチャンスを活かすことが出来なかったが良い攻撃の形が出来ていた。

 前線から人数をかけてプレスをかけていた山口であったがここ最近対戦していた相手に比べるとプレス強度は劣り、中央の理仁はフリーで前を向いてボールを持てる回数も多く、何度もチャンスメイクが出来た展開であり、それだけに先制点が欲しかった。ここまで名前が出なかった新井。得意のドリブルからカットインしてシュートを放つ場面が2度見られ、いずれももう少し丁寧にシュートが打てたら決まっていてもおかしくなかった状況でありこちらも悔やまれるプレーぶりであった。ただ、最終ラインから大きくボールが展開され、中盤省略やボールを繋ぐことが少なく、新井自身がプレー関与する回数は前半はそう多くはなかった。

 一方、ボール非保持時。凌我と晃樹が2トップ化で1442で構える。山口は佐藤謙介が最終ラインに下りて3バック化することも時にあり変化をつける。凌我と晃樹の2トップであったがこれまでのような猛烈なプレスやプレスバックしていた姿からほど遠くボールホルダーへの寄せも甘く、前列に立つ池上や田中、SB石川や橋本にパスが通ることも多かった。ボールを受けるとWG吉岡と高木がサイドで対面するSB山越、加藤蓮を喰いつかすとハーフスペースを池上、田中が使い高い位置まで入っていくことが多かった。山口の立ち位置が良かったことに加えてヴェルディの選手たちのプレスかリトリートかなど判断が個々でバラバラであり結果として間延びしてしまったことが山口の選手たちに追い越す動きを許すことに繋がった。これは熊本戦でも同じような状況を作り出してしまっておりピッチ内で意思疎通が上手く出来ていないのだろうか。試合後に馬場晴也もコメントでこれに近いことを述べており、心配になるばかりである。

 ボールホルダーを自由にすることが多く、ボールを握られたらフィニッシュまで持って行かれるという昨季の悪い場面をふと思い出してしまう。強度が緩く、なんとなく時計の針が進み折り返しを迎えようとした矢先、41分、クリアボールを谷口栄斗がカットして運ぼうとするも山口へボールは渡り、後方から渡部が右サイドの吉岡へピンポイントの縦パスを通す。吉岡のクロスは帰陣した馬場晴也がPA外へ跳ね返すもスペースに走りこんでいた田中が豪快にボレーシュートを叩き込み、山口が先制する。

 前半終了間際、左サイドからのヴェルディのCK。ショートコーナーから繋ぎ、理仁がダイレクトで中へ蹴りこむと、馬場晴也がドンピシャでヘディングシュートを放つもクロスバーに嫌われてまたも初得点を奪えず、1点ビハインドで折り返す。

後半

 1点リードの山口は前線からの守備がよりハッキリとし、強度も増していた。ヴェルディの選手たちはボールを回すもののプレー判断が鈍く、フィジカルコンタクトで辛うじてファウル判定を得ることが何度があった。
 暑さからか次第に山口の選手たちの精度も落ちてくると、かなり間延びしてきた。ヴェルディは左の新井、加藤蓮がピッチを駆け上がる場面が増えて行く。新井はサイドから仕掛けていくも山口の選手たちは必ず一人はつく徹底ぶり、そして右足カットインを許さないように縦へ誘導して利き足とは異なる左足でクロスを上げさせ、決定機を作らせない。

 ゴールへ近づくも決め手に欠く状況であったが、62分だった。自陣からの繋ぎで抜け出した森田晃樹が左サイドを上がりダイレクトでファーサイドのバイロンへパス。バイロンは落ち着いてPA内の凌我へ優しく繋ぐと、凌我は難なく決めて同点に追いつく。

 重苦しい状況にもかかわらず同点に追いついたヴェルディ。息の目を吹き返したと思った途端、まさかの出来事が待っていた。自陣深い位置からの繋ぎで理仁が相手選手に倒されるように交錯。誰もがヴェルディボールで再開のFKと思っていたら主審は山口ボールでのセットプレーを指示。これにはみんなが驚く。良い位置からのFK、一度はクリアするものの石川が素早く反応して、叩きつけるようにGK高木和の頭上を越え、2-1と山口が勝ち越しに成功する。

 ヴェルディはこの日、誕生日の梶川に代えて石浦大雅、バイロンに代えて小池を投入して反撃に出る。しかし、再びゴールネットを揺らしたのは山口だった。熊本戦同様にこの試合でも時間が進むにつれて右SB山越のところで数的優位を作られて裏を取られることが増えると、高木が山越に倒されてPKを獲得。これを自ら決めて差を2点と広げる。

まさかまさかの展開にすかさず、怪我から復帰した井出を山越に代えて投入し、3バックへ変更して攻撃的なメンバーへ代える。ボールを回すものの中央を固められた山口守備陣を崩せず、だんだんと足元でボールを貰うことが増えて脅威を与える攻撃が出来ないまま時間だけが過ぎて行き、そのまま1-3でタイムアップ。ヴェルディは痛恨の2連敗を喫した。

まとめ

 必死さ、ガムシャラさが無くなり上手くやろうとして足元ばかりを見て視野が狭く消極性が生まれる悪い流れが出来てしまった。勝負の世界であるから結果は付き物であるが、結果以前に90分間の取り組みの質が落ちてきており、これまでに比べて全力を出し切れていたのかという厳しい目を向けてしまう試合内容であった。気になるのは森田晃樹。前節で得点挙げてこの日も同点に繋がるサイドの仕掛けを魅せた。ただ目立ったのはそれくらいで攻撃面での積極性もあまり無く守備でもプレスやプレスバックがさほど無く石浦大雅や杉本竜士に比べてかなり物足りなさを感じる。前線からの守備が無くなると並のチームに一気に逆戻りしてしまう。自分たちが目指す姿を改めて見つめ直す必要があるだろう。
 試合後の監督コメントでも言及していたが、サイドの守備の仕方はいまだ改善されず、失点に直結してしまった。まだ道半ばと言ったところだろうか。次節は因縁の千葉戦。目を覚ますきっかけになった相手にリベンジが果たせるか注目したい。