【雑感】2022年J2リーグ 第32節 対ヴァンフォーレ甲府~妥当な勝点1~

東京ヴェルディ 0-0 ヴァンフォーレ甲府

 決定機を作り、ピンチも招く。試合後の城福監督コメントにも通じるように勝点を分け合った結果になった。お互いによい部分を出しながらも内容で物足りなさも残った試合を振り返りたい。

スタメン

 ヴェルディは前節・水戸戦が台風の影響で中止。直近の長崎戦から2週間空いた。CB谷口栄斗以外の10名が継続するスタメンになった。システムは2トップの1442をこの日も採用。
 一方の甲府は水曜日に未消化だった千葉戦を行ない0-0スコアレスドロー。中3日だが、松本と三平の2名のみ入れ替えで臨む。

前半

 試合消化数に違いはあるが、同じ勝点で並ぶ両者にとっては昇格PO圏内を目指すには勝利が欲しい一戦。試合開始から4バックと3バックのギャップがピッチ上で随所に現れた。

 ボール非保持時にWBが最終ラインに下りて5バック化する甲府は1541となる。最前線の三平は多くのクラブを渡り歩き、得点の取り方を知っているベテランFWだ。スプリント力はさすがに落ちるものの、プレスのかけるタイミングやコース取りも1トップながら上手くこなし、連動して中盤の選手もプレスする。左シャドーの長谷川が前に出て1532のようになる。
 はじめこそヴェルディがボールを持てたが、徐々に甲府のプレスが嵌り始めるとヴェルディはGKマテウスも絡めてパスを回すが大きく蹴り出すことが増えていき、セカンドボールを甲府が回収する。

 甲府は1343の王道のような攻撃を魅せる。2トップで守るヴェルディに対して最終ラインは3枚で数的優位でパスを回し、WBにボールを預けると対面するSBを喰いつかせ、その裏を突く。気候のせいなのか、意識の問題なのか、コンディションなのか判らないが染野と佐藤凌我の前線からのプレス強度が緩く、甲府のボールホルダーに自由を与えすぎた印象だ。
 前線は熊本のように3トップがサイドで幅を取るよりも、内に絞りそこから外へ逃げる動きが多い。もしくはCB須貝が後方から追い越す攻撃も見られる。ヴェルディもSH梶川と河村が戻り、スペースを埋める守りをするものの90分間これを続けるのは体力的にかなりきついものがあった。

 サイドを抉り、クロスボールから仕留める狙い魅せる甲府はしっかりと意図した攻撃をして左右から再三チャンスを作ることに成功するもフィニッシュの精度、ヴェルディのンドカや谷口栄斗を中心とした跳ね返しで決め切るまでには至らなかった。32分、右からのクロスに長谷川のヘッドはよく守った場面だった。

 ヴェルディは最終ラインでの横パスを繋ぐことはあまり少なく、縦パスを1本通して染野が起点になる。2トップの一角の染野は相手を背負ってプレーするのがあまり得意では無いのかDH脇へ下がりフリーでボールを貰いに来る。フリーであるがゆえに反転して自ら持ち運び、シュート。右サイドの河村へパスを出しPA内へ侵入。馬場晴也へ繋ぎ、河村が決定的なシュートを放つなどショートカウンター、選手のベクトルが前へ向いた速い攻撃があった。河村のシュートはかなり決定機で決めたいところであった。

 これまでの1トップでは孤立することがしばしば見られたが、2トップになり近い距離に味方が居ることで厚みは出る。佐藤凌我と染野はこの2枚だけでフィニッシュまで持って行ける可能性を大いに感じさせる。
 チャンスを作れたのはショートカウンターで、手数をかけない速い攻撃と言えば聞こえは良いが、中盤の森田晃樹や梶川があまり絡めていなかったことも事実だ。2戦連続でDH組んだ馬場晴也と森田晃樹。体格とプレースタイルの明らかな違いがあるがCBを務めることもある馬場が攻守で前へガツガツ行き、テクニシャンの森田がバランスを取るという役割が反対では思ってしまうばかりだった。森田がボールに触りリズムを作りたいがその回数は限られたものになり、対する馬場は積極的に絡むものの技術的なミスを繰り返し相手にボールを渡すことが続き、攻撃が組織としてはあまり機能しなかった45分だった。

後半

 エンド変わった後半、ヴェルディはSBの攻撃参加が目立った。長崎戦同様に左SH梶川が少し内へ入りSB加藤蓮がスピード活かした追い抜く。左で時間を作っているうちに右SB深澤大輝は高い位置まで上がりフィニッシュに備える。この攻撃パターンが新システムでの決まり事の1つなんだろう。

 60分、疲れが見える左サイドのユニット加藤蓮と梶川に代えて稲見と石浦大雅を入れる。右SBに稲見が入り、深澤大輝が左SBへ回る。石浦はそのまま左SHに入る。中盤の選手の稲見は長崎戦に続き、SB起用される。要はサイドでアップダウンをしてほしいという狙いがあったのだろう。

 久々の出場になったレフティの石浦大雅は順足の左サイドに居た方が持ち味の左足でダイレクトキックを活かすことが出来てむしろ良いのでは思った。河村へのクロスや深澤大輝のシュートのお膳立てとなる落としなど存在感を示した。

 一方の甲府は石川とウィリアンリラを投入。得点力に優れるリラはフィジカルの武器もありアバウトなボールを蹴り込んでも陣地を稼ぐことが出来る。するといきなりチャンスが訪れる。左からのクロスにヘディングで合わせ、セカンドボールを再びシュート。PA内で脅威を発揮する。

 ヴェルディは連戦を考慮してなのか佐藤凌我を下げて大怪我から戦列に復帰した阪野が今季初出場を果たす。期待通りに空中戦のターゲット、ポストプレーを披露。ヴェルディのなかでは最もポストプレーに優れ、J2での実績抜群のストライカーがようやくピッチに立った。残り限られた試合であるが染野、佐藤凌我、河村とタイプ異なる4選手で上手く絡み合って貰いたい。

 気温は高くはなかったが湿度がありスタメン出場していた選手たちのユニフォームは汗でびっしょりになるくらいで、中盤の選手たちには疲れの色が見られ、70分すぎてからはかなり間延びしてボールが両チームのゴールを行ったり来たりしてだいぶオープンになる。

 石浦大雅のミドルシュート、甲府も負けじとリラ、長谷川のシュートも岡西とマテウスの両GKの好守などもありゴールを割らさず、後半ATには交代出場した加藤弘堅が遠い位置からのブレ球の強烈なシュートを放つも惜しくもクロスバー直撃で得点を奪えずお互いに最後までゴールネットを揺らせずスコアレスドローに終わった。ヴェルディは今季初のスコアレスドローで、今季初の2戦連続完封になった。

まとめ

 1442へシステム変更したことで攻守でのシステムが統一され役割が明確になったことでサッカーに固さが生まれ、良くも悪くも大崩れはしなくなってきている。完封の立役者マテウスの好守は個人の技量は勿論であるが、シュートキャッチすることが多く、守備陣がコースを切ってくれて的を絞り易かったこともあるかもしれない。守備に関してはこのまま良いリズムを継続していって貰いたい。
 気になるのは長崎戦同様に攻撃面だ。フィールドに立つ選手のキャラクターの違いはあるが、サイドからの仕掛けやクロスの精度やアイデアには物足りなさがあった。せっかく2トップにしてPA内に入る選手が増えているが故に質の向上は求められていくだろう。。