【雑感】2023年J2リーグ　第17節　対レノファ山口～逃げるが勝ち～

東京ヴェルディ　2-0　レノファ山口

　立ち上がりからの2得点。このまま何点取るか思われたところでのアクシデントで試合の様相が変わる。数的優位になりながらもそのあとは何も起きず、2連勝となった試合を振り返りたい。

スタメン

　前節・栃木に2-0で勝利したヴェルディ。出場停止明けのバスケスバイロンが復帰。深澤大輝、河村と前節得点挙げた稲見もスタメン起用され4名を入れ替える。システムは4バックスタートとなった。
　対する山口は前節・町田に0-2で敗戦。9戦未勝利と苦しい状況である。古巣対戦の高木大輔をはじめ皆川、梅木と3トップ総取替えで臨む。なお、期限付き移籍の松橋優安は契約上出場不可。

前半

　前節の勝利で2位に浮上したヴェルディがその勢いそのままに敵地でも良い入りを見せる。河村を頂点に左に北島、右にバイロン、トップ下に山田と若い選手たちはボール奪取してスペースがあると猛然と駆け上がりカウンターを仕掛ける。上手く行かず、一旦落ち着かせるとSB宮原と深澤大輝が追い抜いて最前線に位置取る。
　ビルドアップ時は4バックが横開きになり2DH稲見の森田晃樹が縦関係になる。山口は皆川が2CB山越と綱島悠斗をみて梅木と高木が対面するSB、五十嵐が稲見or晃樹をマークする。山田、北島が内へ絞ることで稲見or晃樹と3枚で中盤を構成し、矢島と池上に対して数的優位を作りビルドアップの出口になる。このことで自陣→敵陣への侵入がスムーズに進むことが多かった。

　主に右のバイロンはタッチライン際まで張り幅を取り、左SB石川が対応を強いられるもヘナンとのスペースを広く空きすぎるためここをヴェルディは上手く使えていた。過去の試合でも山口はサイドからのクロスでの失点が多く、この日もボールホルダー：バイロンへの距離が遠くスライド対応することで他のスペースも複数空けてしまい、そこを宮原、晃樹、稲見、山田、河村と多数に使われることになった。対人守備での負けることが多く、先制点もあっさりと決まる。

　左から北島が仕掛け、中央を経由して右サイドへ。バイロンが時間を作ると攻撃参加した宮原へ。宮原は余裕をもってPA内へ正確なクロスを入れて最後は河村が競り勝ちヘディングシュートを叩き込み、7分ヴェルディが先制する。

　対する山口はGK寺門もビルドアップに参加してボールを動かしながら攻撃をする。4バックのヴェルディに対して5レーンを意識するような立ち位置を取り、SBCBを突く動きが序盤に何度か見られた。右サイドの高木大輔が斜めの動きを見せたり、1トップ皆川が縦パスからこの間を突く動きを見せた。最大のチャンスはSB生駒がスルスルっと攻め上がって背後を取り、放ったシュートであった。

　得点にはならず、依然としてギアを上げて前半から攻勢に出るヴェルディペースが続く。再び右から攻め込むと3列目森田晃樹が飛び出してPA内で深い位置を取ると冷静にグラウンダーのクロス。手前でつぶれるもファーで攻め上がった深澤大輝が流し込み、17分にヴェルディが追加点。山口は徳島戦、町田戦に続いてサイドからやられっぱなしの状態になる。中盤3枚の横が使われて、ボールホルダーへの寄せが甘いことでサイドでクロッサーをフリーにしがちである。

　山田、河村の前線からのハイプレス、サイド攻撃が上手く機能してヴェルディが試合を支配して理想通りの形で2点リードを奪う。試合前の監督コメントであったように似ていると評した藤枝戦と同じように立ち上がりからのゴールラッシュに再現が期待されつつあるとき、山口は最終ラインから丁寧にビルドアップしていくと、ヴェルディが猛烈なプレスをかけるとボールを受けたGK寺門がボールコントロールを誤り取られるとバイロンがすぐさまループ気味のシュート。これに寺門が思わず手を出して反応。一旦はプレーが続いたもののプレーが途切れたタイミングで審判団が確認して、PA外でのハンド＝得点機会阻止とみなされ一発退場。2点ビハインドの山口はGKも退場で失い10名と劣勢に立たされる。五十嵐が残念ながら交代を命じられ、JデビューとなったチェヒョンチャンがGKに入る。高木が最終ラインに下がり5バックとなり1531へシステム変更。

　ヴェルディにいい様にサイド攻撃をやられっぱなしだった山口は5バックへ変更して横幅を埋める。前線は1名のみのためヴェルディがハーフコートで試合を進めるもリトリートする山口を崩せずに2点リードのままで前半を終える。

後半

　ハーフタイム明け、ヴェルディは山田に代えて阪野を投入。阪野が最前線に入り、河村が下がり気味。阪野のパワーと高さを使い追加点を目指す。宮原がSBCBの立ち振る舞いで前節の栃木戦のような３バックのようになる。
　一方の山口は生駒と池上に代えて、高橋と神垣を投入。前線からのアグレッシブさを戻そうとする。

　後半も圧倒的にヴェルディがボールを握る。右のバイロンにボールを集めて、縦へ突破して右足のクロス、カットインして左足でのシュート。CKからも得点を目指すもリトリートした山口の守備陣を崩せないまま試合が進む。

　お互いにメンバー交代して変化を付けて行くも35℃と高温と極端な戦法に集中力も維持出来ずにブロックを崩せないヴェルディとブロックを崩さない山口の構図は変わらず、そのままタイムアップ。ヴェルディは2連勝を飾り山口は10試合未勝利となった。

まとめ

　町田戦での敗戦から2連勝と見事に立て直して3連戦を締めくくった。立ち上がりから強度の高いプレーを披露し、山口の守備をよく分析して弱点をつき、電光石火の２得点。寺門の退場後のお互いのプレー強度は次第に低くなりあまり良いものではなかった。むしろ、11対11での時間帯の方がヴェルディは良いプレーが出来ていたと感じた。
　今季初得点を挙げた河村。前線からの守備、トップやサイドアタッカーと戦術的キーマンとしてここまでチームを牽引し数字以上の貢献を果たしてきており、ここにきて嬉しい今季初得点となった。2点目を挙げた深澤はDFながらチーム得点王となる4得点。PA内の得点が多く、SBでありながらも最前線まで駆け上がってくる約束事が見事に機能している証だ。
　この日も完封勝利、離脱者が相次ぐ最終ラインは総力戦になっているが立派である。１週間空いて迎えるいわき戦もしっかりと勝利して中盤戦の飛躍につなげたい。