【雑感】2023年J2リーグ 第41節 対栃木SC~ドラマは終わらない~

東京ヴェルディ 1-0 栃木SC

 味スタ劇場が再び待っていた。数的不利になりながらも自動昇格への執念、起死回生のFK弾で劇的勝利を飾った試合を振り返りたい。


スタメン

 前節・3位磐田との直接対決に1-1引き分けたヴェルディ。主将・森田が体調不良で欠場となり綱島悠斗がDHに起用。負傷明けの深澤大輝もスタメン復帰を果たす。
 一方の栃木は前節・岡山とこちらも1-1の引き分け。イスマイラが出場停止で矢野がトップに入る。

前半

 前日に清水と磐田が勝利したことで自動昇格には勝たなければいけないヴェルディ。スタメン表をみると森田がまさかの欠場。DHに綱島悠斗を入れてここのところ2トップであったが河村をベンチスタートにして齋藤をトップ下のようにして左SHには加藤蓮を入れて14231。得点が欲しい時に切り札として山田と河村の2枚をベンチスタートにしたのであろう。対する栃木、こちらは前日に21位大宮が敗戦したことでJ2残留が決まった。DH西谷をこの日もシャドー配置して1321システム。

 ボール保持するヴェルディに対して栃木は1トップ矢野がアンカーに入った稲見をマークしてパスコースを切り、2シャドー大島と西谷が追い越すようにしてCB林と谷口栄斗へプレスをかけて1523となる。中盤2枚になることでヴェルディはSB深澤大輝が中へ絞りフリーになることが多く、ゴール前へ駆け上がりサイドからのクロスへのフィニッシャーの役割を任せたかったのかもしれない。稲見を消されて栃木が中を固めることでヴェルディは外循環のパス回しを余儀なくされ、出足鋭い栃木のプレスに苦しみ深澤大輝の得点力が活きることはなかった。

 立ち上がりこそ、矢野と大島を目掛けてアバウトなボールを蹴り込んできた栃木であったが10分ほど経過して試合が落ち着き始めると後方から丁寧にボールを繋ぐ。ヴェルディの前節の対戦相手磐田と同じようにSB宮原と深澤大輝に縦スライドのプレスの距離を長くさせるようにWB石田と福森が立ち位置を取り、喰いついてきたらその裏をランニングすることでサイド攻撃を仕掛けて行く。

 前線からの守備と5バックでふたをする栃木に苦しむヴェルディは20分すぎに、綱島悠斗と齋藤のポジションチェンジする。欠場した森田のように齋藤に低い位置でボールに触れて貰ってリズムを作る狙いでの変更だっただろう。後方からボールを繋ぐ栃木に対してヴェルディは染野と綱島悠斗がGK藤田の右足を消して左足で蹴らせるように左から右方向へプレスをかけていくと30分すぎにようやく実り、藤田のキックが曖昧になり中盤でボール奪取するとショートカウンター、その流れからCKとスローテンポだったチームの流れが変わった。

 エネルギーが出てきたヴェルディが敵陣に押し込んでプレーする機会が増していく。その裏返しとして、栃木は鋭いカウンターを魅せる。中央でボールを拾った西谷が素早く右サイドへ。駆け上がった石田はマテウスとの1対1でシュートもマテウスに防がれる。林の横パスがズレると再び西谷がボールカットしてそのまま持ち上がる。PA付近で帰陣した深澤大輝が倒してこの日2枚目のイエローカードを貰い、前半終了間際に退場処分となり1名少ない状況に。シャドー起用の西谷は持ち前の守備力とハードワークで存在感を示し面白い起用法であった。

 PA外からのFK、キッカーの福森が精度の高いシュートを放つも左右のポストを続けざまに叩き、ゴールラインを割れず先制点には至らず前半スコアレスで折り返す。

後半

 1名少なくなったヴェルディは後半開始からSH加藤蓮がSBへ下がり、DH齋藤がSHへ回り1441と配置する。数的優位になったことでボールを握る時間が長くなる栃木は左右に揺さぶりながらサイドにスペースを作ってからクロスボールを入れる。右サイドからのクロスに西谷のディフレクションあって矢野のシュートはポスト直撃。難を凌いだヴェルディ。1トップ染野はポストプレー、ドリブル仕掛けと果敢に攻撃的なプレーをすることで陣地回復をして全体の押し上げに貢献する。高い位置でファールを貰いセットプレーを獲得してワンチャンスに賭ける気配も感じ取れた。攻めてダメなら一度戻してボールを大事にしながらパスを繋ぐヴェルディ。前へ出てきてくれる栃木陣形を見て、ヴェルディは選手が追い越す動くもありチャンスを作ることは出来ていた。

 この状況に栃木は佐藤、大森に代えて宮崎、福島を投入。宮崎がトップに入り矢野、西谷がそれぞれ1列下がる。屈強なフィジカルの宮崎が効き、前線で起点を作りシュートチャンスが増えていく。

 これに対してヴェルディが齋藤、加藤蓮に代えて平、山田を投入。山田と染野の2トップで1432として得点を奪いに行く。しかしこれが逆効果となり、中盤3枚で横幅を守ることが難しくサイド守備が弱くなる栃木が押し込む。ヴェルディのシステム変更でサイドのスペースを上手く使う栃木がペースを掴むも、シュートを放つも精度欠き、枠へ飛ばず得点を奪えない。

80分、ヴェルディは綱島悠斗に代えて河村投入し再び1441へ。中原がDHとなるファイヤーシステム。DH、前線で起用された綱島悠斗は空回り気味でちょっと物足りなかった印象だ。最適な起用方法とポジションがまだ見つかっていないような気がする。交代直後、前線でボール収めた染野からパスを受けた中原が仕掛けるとファールを貰いFK獲得。82分、キッカーの中原が左足で鮮やかなFKを決めて値千金のゴールを挙げる。1名少ないヴェルディが待望の先制点をモノにする。ここ数試合、すべての得点に絡む中原の神がかり的な活躍は止まらずハイパフォーマンスをこの日も魅せてくれた。

 追う展開になった栃木はラファエルをFW起用しパワープレーを試みるも先制点を挙げたヴェルディのエネルギーが跳ね返す。累積警告での出場停止の危険がある染野に代えて奈良輪。先制点を挙げた中原に代えて千田を投入し、CB林がDHへ一列上げて高さを加える。最後まで高い集中力でシャットアウトし、1-0で劇的な勝利を挙げて勝点差1で2位清水に喰らいつき最終戦へ向かう。

まとめ

 堅い守備を誇る栃木相手に攻めあぐね、退場者を出して劣勢になり、今季一番難しい状況に陥ってしまったかもしれない。このピンチに輝いたのは中原だった。ここ一番で見せつけた個の高さで貴重な勝利を手に入れた。
 大量得点が求められた一戦でメンバー編成の都合もあり、人と配置を変えて臨んだヴェルディであったが、攻撃はあまり機能しなかった。栃木の守備が素晴らしかったこともあったがPA内での迫力に欠けた。対する栃木も手堅いチームであるが決定力に泣き今季を象徴するような内容になり試合後にはサポーターからもブーイングが出た。
 長かったシーズンも次節がラスト。残り1枠の自動昇格を巡る三つ巴の争いも最終戦へもつれた。果たして、どんな未来が待っているだろう。