【雑感】2022年天皇杯4回戦 対ジュビロ磐田

東京ヴェルディ 2-1 ジュビロ磐田

スタメン

  ヴェルディはリーグ戦・徳島戦も中止になり10日ぶりの試合になった。大宮戦からメンバー入れ替えもありGKのマテウス、左SBの加藤蓮が復帰。アンカーには森田晃樹が入り、稲見がプロ初スタメンを飾る。ただ離脱者の多さは変わらず苦しい台所事情だった。
 一方の磐田はリーグ戦・FC東京戦から中2日で迎え、メンバーを大幅に入れ替えて臨む。ベンチには二種登録選手も名を連ねた。

ふり返り

 コロナ陽性者続出で活動停止になり延期された一戦。ヴェルディにとっては2018年J1昇格POで涙を飲んだ因縁の相手との試合であった。

 この日、リーグ戦の大宮戦の後半から見せたアンカー森田晃樹をスタートから起用。守備時の1442では梶川が2トップの一角を担い、稲見と森田が2DHとなる。2018年を経験している梶川はいつも以上に気合が入り飛ばしているような入りを見せて磐田最終ラインや中盤へのプレス、プレスバックをしてそれに釣られるように相方の河村も猛チャージをかける。磐田がリーグ戦からメンバーを落としていることもあってかビルドアップでのミスを誘発することも何度か見られた。

 中盤でプロ初スタメンを果たした稲見。見た目どおりに身体の強さを活かして競り合いで当たり負けせずにぶち当たり、攻守でアップダウンも繰り返しスケールの大きさを感じる存在であった。まるでマドリーのフェデ・バルベルデのように映った。

 前線からの守備に関しては嵌っていた部分もあったが、磐田同様にヴェルディも自陣でのパスミスやトラップミスが散見し、相手にボールを渡してピンチを招くことが目立った。

 後方からの縦パスに河村が相手DFを背負いながらボールを受けようとするも収められず奪われたりこぼれ球を磐田に拾われてそのまま持ち運ばれることが続く。それよりも最終ラインの背後へ小池や河村が抜け出す動きからのチャンスの方がゴールへの可能性を感じられた。左の新井はボールを収めて時間を作ることが出来たが、小池や河村のスプリントを活かすようなダイナミックな展開の方が選手たちの個性を活かしつつゴールの匂いがしてこのクラブには合っていると思う内容であった。

 裏抜けからの小池のシュート、稲見のクロスバー直撃シュート、加藤蓮のミドルシュートなど良い形も見られたが得点は奪えずに前半はスコアレスで折り返す。

 ヴェルディは後半頭から小池に代えてバスケスバイロンを投入。前半以上にサイド攻撃に厚みをもたらし、後半開始から数分は新井とバイロンの仕掛けから敵陣深くまで入る状況が続いた。

 一方の磐田はDHドゥドゥに代えて上原を投入。この交代で流れを磐田が取り戻した印象があった。上原が中盤でボールを収めて、運ぶことで磐田が押し込む場面が増えて行く。ヴェルディの両CB馬場晴也と谷口栄斗がボールホルダーへ喰いつきすぎることもありサイドへの斜めのボールに並走して真ん中をポッカリと空けてしまいサイドで起点作られて中央へ戻されたパスからピンチを招く。また、谷口はボールへの喰いつきが顕著で、飛び出すタイミングが悪いのかスプリント力の問題か相手と入れ替わることがあり危ない場面が何度か見られた。これまでのリーグ戦でも何度も見られては失点に直結していたのでここはかなり大きい課題に感じている。(相手からは穴になっているかもしれない)

 自陣に押し込まれたことで重心を下げられたヴェルディ。なかなか攻撃に持って行けないがバイロンと新井の両翼の個人技からフィニッシュへ持ち込み、陣地挽回していく。

 高温多湿のコンディションもありお互いに足が止まり始めてスコアレスのまま後半も終盤を迎えた80分すぎに試合が動く。
 PA内右サイドでバイロンが切り返し深いドリブルを見せたところで倒されてPKを獲得する。願っても無いチャンスにキッカーは新井。ゴール右隅に冷静にこのPKを沈めてヴェルディが先制に成功する。

 重苦しい空気が流れ始めていた味の素スタジアムにサポーターのエネルギーが沸き返した。選手交代で西谷亮、奈良輪を前線に起用して走り回って前線からの守備を徹底するファーストディフェンダーで試合をクローズに向かうヴェルディ。磐田は一気にギアを上げたかのように前への圧を高めて交代した前線のプレスを無効化するかのようにロングボールを放り込んでいき、なりふり構わず攻める。身体を張った守備で何とか凌ぐヴェルディ。時計の針は進み残り僅か、この展開ならこのまま終わるだろうと思った矢先だった。ロングボールに攻撃参加した伊藤が折り返すとジャーメインが頭で決めて土壇場で磐田が同点に追いつき、試合は延長戦へ。

 この日も前線から休むことなく猛チャージを見せて、ドリブルでも相手を交わしてシュートと攻守で貢献していた河村が足を釣り、山口を投入。攻撃のメンバーに離脱者が多く苦しいヴェルディは延長戦に入ると磐田の上原のように運べる選手が居なく難しい状況になる。

 磐田がボールを握り攻めるターンが続くものの、お互いに疲労の色は隠せず、攻撃の精度を欠く。攻撃の活路を見出せなかったヴェルディであったが延長後半に獲得したCK。キッカーは途中出場の宮本。インスイングで入れたボールはこぼれて、PA外の奈良輪のもとへ。奈良輪はトラップしてから豪快に右足を振りぬくとそのままゴールへ突き刺さりヴェルディが勝ち越しに成功する。

 このリードを守り切ったヴェルディが18年ぶりにベスト8進出を果たした。

 若い選手が多くなったメンバー構成のヴェルディ。それでも走り切る選手たちが多く、それはクラブの新たな指標であるアスリート能力の高さの象徴でもあるだろう。前半からの攻撃のようにダイナミックなプレーがこのクラブの武器になりつつあると感じた一戦でもあった。