【雑感】2022年J2リーグ 第8節 対大分トリニータ~ニューヒーロー誕生~

東京ヴェルディ 1-0 大分トリニータ

春とは思えない寒さのなかで行われた一戦。巧者の大分に苦しめられるも次第にアジャストし、自分たちの時間帯に上手く得点を挙げて1点差を逃げ切った試合を振り返りたい。

スタメン

 前節・琉球に5-2で逆転勝利したヴェルディ。GKにプロ初出場の佐藤久弥を起用。中盤底にはU21代表帰りの山本理仁が即出場。前線には小池が復帰して14123システムで臨む。
 対する大分は前節・仙台に3-1で勝利。11連戦の過密日程の最終戦となったこの日は前節と同じ11名を起用。香川にとってはかつて所属していた古巣との試合となった。

前半

 試合立ち上がり、ヴェルディが大分最終ラインの背後を狙うロングボールを何回入れて陣地を押し進めたものの主導権を握ったのは大分だった。大分はボール保持時に小林裕紀が2CBと横並びで3バック化、下田と縦関係になり、2SBが高い位置を取る可変システム。これに対してヴェルディは森田晃樹と佐藤凌我が2トップになり1442で守る。下田に対して晃樹がマークに付き、凌我が最終ライン3枚へプレスをかけに行き、連動するようにSH化した小池と杉本竜士がプレスする。勢い良いプレスに対して大分はGK高木も使いビルドアップを行ない押し進めて行く。

 下田へ晃樹がパスコースを消すようにマンマークした事で得意にしていた下田経由が封じられた大分はサイド攻撃に活路を見出す。高い位置を取る香川と伊東は大外に立ち、ここに山越と加藤蓮が縦スライドで対応していくもあまりにも距離が長いため間に合わず、空いたスペースを突かれて決定機まで持って行かれる場面が序盤に何度か見られた。SHが内へ絞りSBが大外に張りサイドで数的優位を作る鉄板のサイド攻撃を大分が仕掛ける。

 決定機を作られるも大分のシュート精度に助けられて何とか無失点の状態が続く。サイドでの対応に苦慮するヴェルディは時間が進むにつれてマークをはっきりとするようになる。特に崩されることが目立った左サイドで小池が縦スライドを自重し、香川へ対応。山越が小林成豪をマークすることで蓋をして徐々にリズムが生まれてくる。

 ボールを握ったヴェルディ。CBンドカと谷口栄斗がビルドアップの中心になると、大分は山本理仁を消すように2トップ長沢と呉屋が構えるもプレスがさほど強くないためCBからはロングボールを蹴り入れて大分最終ラインの背後を狙ったり、左右に揺さぶって大分がボールホルダーに喰いつくことが判ると反対サイドでフリーな選手目掛けて対角にフィードを入れてスペースを使って攻撃していく。

 ボールを前進させると、梶川はすかさずSBとCBの間でパスを貰おうとする動きを見せる。これに大分はDH小林裕紀が下がって5バックで埋めて対応する。最終ライン5枚並びスペースを消されることで深い位置まで侵入出来ないヴェルディであったが小林裕紀が下がったことで大分中盤3枚になることを活かして中盤のスペースを使えるようになる。キックオフ時の山越と小池の立ち位置からも判るようにヴェルディのSBは攻撃時に大外を駆け上がるだけではなく内へ絞ってプレーに関与することが要求される。大分の中盤のスペースでプレー出来始めると陣地を押し進めてチャンスを作ることが出来た。

 すると、43分、右サイドでポストになった佐藤凌我が大分選手たちを引き付けると左大外でフリーの梶川へ展開。梶川はインナーラップした加藤蓮へ繋ぐと、ボールを貰った蓮は迷うことなくシュートを選択。スライドした渡邉新太も下田も間に合わず、シュートはブラインド気味になりながらもそのままゴールイン。加藤蓮のプロ入り初得点で劣勢の時間が長かったヴェルディが先制する。

後半

 1点リードしたヴェルディ。前半はなかなかボールに絡むことが出来なかった山本理仁が中央から最終ラインへ下がる動きの工夫で相手選手から離れてフリーになることが増えた。プレッシャーが少なくなったことで理仁は本来の持ち味を発揮し始める。左足から放たれる正確なキックでチャンスメイク、強くなったフィジカルを活かしたドリブル突破と後半は存在感を増していき追加点を伺う。

 一方の大分も逆転すべき攻勢に出る。香川が対面する小池を押し下げて行くと、アーリークロスも交えてサイド攻撃をしてヴェルディ最終ラインを押し下げ、それに釣られて中盤ラインも下がってしまい大分に攻め込まれる。クロスのこぼれ球に3列目の下田が晃樹のマークを振り切り、巧みなシュートを放つもプロ初出場の佐藤久弥が好守を魅せる。

 大分に攻め込まれる展開であるも間あいだで山本理仁がボールカットをして守備面でも大きく貢献する。高い位置を取る大分に対してヴェルディは途中出場の新井、石浦大雅、バスケスバイロンが長い距離をスプリントしてカウンターからチャンスを狙っていく。後半はなかなか得点が奪えずに大分がPA内まで人数をかけて攻撃する場面が続くも最後まで佐藤久弥を中心に粘り強い守備で凌ぎ1-0のままタイムアップ。ヴェルディが見事に2連勝を飾る。

まとめ

 初出場の佐藤久弥の好守、ルーキー加藤蓮のプロ初得点と勢いの良さが現れたような活躍でヴェルディが2連勝を飾った。複数失点が続いた悪い状況が続いていたが久しぶりの完封は収穫になっただろう。
 組織的な攻撃を組み立てる大分はAパターンBパターンと複数パターンを持ち合わせてかなり手を焼いた相手であり、ピッチコンディションや過密日程のフィジカル面などの状態がなく万全であったらどうなっていたかという手ごわさであった。そんななかでこの日はSB加藤蓮と香川、DH山本理仁と下田のパフォーマンスの差が明暗を分けたのだろう。特に山本理仁の存在感は日に日に増し、爆発的な飛躍を魅せている。
 怪我人、コロナ等で離脱者が相変わらず多いヴェルディ。1週間空く期間を使い次節・熊本戦では少しでも良い状態で迎えてもらいたい。