【雑感】2022年J2リーグ 第37節 対町田ゼルビア~勝点1をもたらした救世主~

東京ヴェルディ 2-2 町田ゼルビア

 苦しいチーム状態で現実的な目標である残留に向けては後半AT弾で追いつき勝点1を獲得したことはとても大きな価値があった。幸先よく先制するもそのあとは状態の悪さを象徴するようなプレーの連続で劣勢になった試合を振り返りたい。

スタメン

 前節・秋田に0-2で敗れ、公式戦7戦未勝利とどん底のヴェルディ。前節から6名入れ替える。SBには馬場晴也と深澤大輝を起用。DHに稲見、SHに石浦大雅、小池。トップには佐藤凌我復帰。
 一方の町田は前節・熊本とスコアレスドロー。この日は深津、高江、チョンの3名が出場停止。前節スタメンだった高江の位置に平戸が回って左SHに山口が起用される。古巣対戦になったポープと高橋祥平はベンチスタート。

前半

 試合はいきなり動いた。右サイドから中央に繋ぎ、浮き球を染野が合わせて、裏抜けした佐藤凌我がシュート。上手く当たらずもこぼれ球を森田晃樹、さらにそのこぼれ球を後方から走り込んだ左SB深澤大輝が流し込み開始2分でヴェルディが先制する。

 その後のプレーでも染野はSBCB間でボールを貰おうとする動きがあり、佐藤凌我が中央に構えて染野が選手間でボールを貰う狙いがあるのだろうか。この日SH起用された石浦大雅と小池純輝。前節までのようにサイドへ張るよりも中へ絞り、空けた大外をSBがオーバーラップすることが多かった。馬場晴也と先制点を決めた深澤大輝が顔を出す場面が目立った。石浦大雅のゲームメイク力、小池の得点力を考えればゴールに近いところでプレーをさせるアイデアは理に適っているだろう。

 SHが内へ絞りSBの攻撃参加を促せる戦術は他クラブでもよく見られる光景である。例えば昨季の長崎・毎熊、琉球・田中と沼田は猛威を振るい際立った存在感を示した。この日のヴェルディは馬場と深澤がそれを担い、クロッサーになったがその質はお世辞にも良いものとは言えず、先制点以降は決定機をあまり作るまでには至らなかった。いまのメンバーでこの役割をこなせるとしたら、奈良輪、山口くらいだろうか。やりたいこととそのメンバー選定が合致していないような気がする。

 主軸の高江を出場停止で欠く町田は平戸と安井の2DHを組む。やはり強度面では劣り、ヴェルディがボールを持ち攻め込むことが続く立ち上がり。人数をかけて攻撃することが町田にとっても好都合であった。高い位置を取る両SB馬場と深澤が上がったスペースをボール奪取した町田が利用する。山口や長谷川アーリアが突き稲見が必死にカバーリングする。ンドカは中島をマークするため持ち場を離れるとPA内を空けるリスキーな選択を迫られる。稲見がカバーすることが多かったもののサイドからクロスを上げられることが増えると町田が攻撃のリズムを掴む。特に馬場がいるサイドは徹底して狙われ続けていた。

 すると、時間の問題だった。左サイドからのスローインの流れで安いがクロスを上げられるとニアで山口が流して最後は中島が押し込んで町田が同点に追いつく。ベテランストライカー中島がPA内で巧みな動き出しを見せて得点を挙げる。

 強雨の影響で視界とピッチコンディションの悪さもあり、プレーにも影響が出る状況。お互いにアバウトなボールを蹴り込むことも増えていくもヴェルディは前線の染野と凌我がなかなかボールを収め切れず、町田がセカンドボール回収する展開へ。安井が最終ラインの2CB横へ下がり、2SB翁長と奥山に攻撃参加の時間を与えてサイドチェンジも交えてサイド起点に仕掛けて攻勢に出る。ヴェルディは石浦、小池が最終ラインまで下がり5バック対応する。早い時間帯に1点ずつを取り合い同点で前半を終える。

後半

 町田は奥山に代えて高橋祥平を投入してシステムを13421へ変更する。町田がカウンターから攻めると最後は山口が豪快なミドルシュートを放つもここはマテウスがセーブする。直後の右サイドからのCK。平戸がアウトスイングでボールを蹴り込むとファーで太田が合わせて町田が逆転に成功する。

 優れたキッカーがいるからセットプレーをなるべく与えないと監督も選手も口にするもそれが出来ずに見事にやられてしまうところにいまのチーム状態が表れている酷さだ。攻撃ではクロスボールから得点できず、守備ではクロスボールから失点を積み重ねる悪さが年間を通して改善されずにシーズンを終えようとしている。

 1点ビハインドになったヴェルディは稲見と小池に代えて奈良輪と河村を投入。SBだった馬場をDHに回して右SBに深澤、左SBに奈良輪が入る。SBの交代を初めの方で行なう試合が多くスタメン選考が上手く出来ていないのだろうと思うと残念なばかりだ。

 ヴェルディは反撃に出るも人数をかけてPA付近まで攻撃するためボールを奪われると陣形が乱れたままで町田にフィニッシュまで持って行かれる悪い癖を出してしまう。城福監督就任直後に一時は矯正していたリスク管理(カウンターに備えて人数を残す)が失われ、視野が狭くなってしまっていた。

 石浦大雅と目立った活躍が無くても常に出場している染野を残り20分くらいで下げて阪野と西谷亮を投入。残り15分で平を入れて3バックへ変更する。WBに奈良輪と河村。前半よりもDH森田晃樹が攻撃時にPA内へ侵入する回数が増えてチームを牽引する。町田ゴールへ迫る場面もありながらも崩し切れない。崩そうとすることが優先なのかミドルシュートが無く単調な攻撃になる。町田のようにミドルシュートを織り交ぜた攻撃が無いため、守備者も守っていてリズムを掴み守り易くなっていただろう。

 終盤にはンドカを上げてパワープレーに出る。後半ATに遠い位置からのFK。森田が入れたボールをンドカが競り合った際に相手選手がハンドを犯してPKを獲得。このPKを阪野がしっかりと右上へ蹴り込み土壇場でヴェルディが2-2の同点に追いつき、残留へ大きな勝点1を手に入れた。

まとめ

 残留を考えれば大きな引き分けになった。昇格の夢が絶たれてチーム状況が上がらないなかで現実的な目標達成には価値あるものである。移籍、負傷と離脱者が相次ぎ台所事情の苦しさは試合後の監督インタビューでも言及している。良い形が見つからず配置とメンバーを入れ替え試行錯誤を繰り返しているがこれが悪く働き、公式戦8戦未勝利と状況は悪くなる一方だ。就任当初に見られた、プレス・プレスバック、全体のバランスを見た攻撃参加と良い部分が失われこの状態のままシーズンを終えることも容易に想像が出来る。個の質は勿論であるが、組織的なプレーの落とし込み、見直しが急務である。