【雑感】2022年J2リーグ 第30節 対V・ファーレン長崎~課題と収穫の新システム~

東京ヴェルディ 1-0 V・ファーレン長崎

2トップへ変更して臨んだ一戦。前での収まりは良かったものの個の仕掛けで苦労して崩し切れない状況も。一方で守備面では安定感もあり、久しぶりの完封勝利を飾った一戦を振り返りたい。

スタメン

 前節・大分に2-2の引き分けたヴェルディ。1442へシステム変更に踏み切った。CBに山越、DHに馬場晴也、右SH河村、左SH梶川を配置。2トップの一角は移籍後初スタメンの染野が入る。
 一方の長崎も前節は新潟と2-2の引き分け。11戦無敗と好調だ。左SBに二見、DHにカイオセザールが入り、植中とエジガルジュニオの縦関係の2トップで臨む。

前半

 開幕戦の対戦カードだが、お互いに監督交代し、メンバーやシステムも変わっての再会になった。ヴェルディは守備時のベースであり、途中からのオプションになっていた1442システム配置でスタート。これまで最前線1トップの凌我が孤立することもあり、鹿島から加入した染野を相棒に起用して近い距離でプレーさせてPA内に入る枚数を増やす。城福監督は選手のキャラクターを見極めてシステム変更に踏み切ったとコメントしている。

 一方の長崎はカリーレ監督が就任し、11戦無敗と調子を上げており昇格PO圏から自動昇格圏を食い込む勢いを見せている。植中とエジガルを縦関係にして中央でも起点を作れるようにし、エジカルの得点力が爆発している。開幕戦では謎のFWだった加藤大も本職のDH起用で安定感を出している。加藤聖、江川、植中ら若い選手に五月田というニューフェイスも加わり若手と実力者たちが上手く噛み合っている。

 注目は強烈な個の高さを見せつけるカイオセザールとエジガルをどう封じ込めるかであった。システムの噛み合わせで長崎の2トップにはヴェルディの2CB、2DHには2DHがそのままぶつかる。攻守で可変システムをしていたヴェルディはこの理由もあってシステム変更をしたのではないだろうか。
 試合立ち上がり、長崎がロングボールを蹴りこむ回数が多いがここは山越とンドカの空中戦に強い両CBが危なげなく跳ね返す。長崎はSH、DHを近い位置に配置していたことからセカンドボールを拾っての陣地押し込みを狙っていたのだろう。左SH米田からのインスイングのクロスを山越が華麗に見送り、あわやゴールインという場面以外は比較的落ち着いて見れた。

 1442で守る長崎であるがエジガルと植中の守備強度は低く、ヴェルディの最終ラインが余裕をもってボールを握り敵陣へ入り込む。ただ、長崎も織り込み済みのように4-4のブロックを狭く、リトリートすることでゴール前を固める。左SH梶川は内へ絞ることが多く、森田晃樹、馬場晴也、そして大外を上がる加藤蓮とユニットで崩しにかかる。ここに2トップ染野と佐藤凌我が加わり、左サイドで起点を作る攻撃が目立つ。長崎に押し込まれて自陣でボール奪取すると攻め残りしているのがいつもならば佐藤凌我のみだが染野も居ることで2枚の連携で前を向いて勢いを維持したままカウンターへ移行する攻撃であった。

 ゴール前を固める長崎に決定的な場面までは持ち込めないヴェルディであるが、時間が経過していくにつれてDHに入った馬場晴也がエジガルと植中の背後を取りフリーでボールを貰い始めて長短のパスを振り、ピッチを大きく使う。全体が攻め込んでもボールホルダーに寄らずにスペースで構えてフリーでパスを受けてアウトサイドパスを巧みに織り込みチャンスメイクをする。CB起用が主とされていた晴也であるが、SBを試されたり、DHでも使われたりとそのポテンシャルの見極めが続いているのだろうか。しかし、途中でカードを貰ってからは動揺したのかトラップミス、パスミスが目立つようになりピッチ中央に君臨するにはまだまだ鍛えて行く必要がありそうだ。

 ヴェルディがボールを握ることが続くと、左サイドで組み立てることが増えて行く。梶川、加藤蓮、森田晃樹が絡みボールサイドに選手を寄せると、対角でフリーの河村を狙う。河村の素晴らしいダイレクトプレーが出来たら良かったがそうは上手くならず、二見のスライド対応もあり決定機までには至らなかった。右SB深澤大輝のサポートももう少し欲しかった。

 対する長崎は、随所に顔を出すカイオセザールやエジガルが多少強引にもフィニッシュへ持ち込みゴールを脅かすも得点は挙げられずお互いにスコアレスで前半を折り返す。

後半

 両者メンバー変更なしで後半開始を迎える。ヴェルディがボールを持つ展開は変わらず。しかし、リトリートした相手に守備者の前でボールが回る状況が続き、なかなか崩すところまではいけない。左SHに入った梶川が上手くライン間でボールを貰い、SB加藤蓮との絡みから仕掛けるも、これまでサイドアタッカーとして個の力を発揮していた新井が移籍した穴を感じさせられることになる。手詰まりのように思えてきた60分、試合が動く。人数をかけた攻撃からPA内に多くの選手が入っていくと、クリアを拾った加藤蓮が左からのクロス。相手選手たちの間から上手く顔出した染野がニアでヘディングシュートを決めてヴェルディが先制に成功する。ここまで少なかった横からのクロスに染野が移籍後、初得点で結果を出した。

 1点ビハインドになった長崎は4枚替えをする。前線に山崎を投入して、前からの守備強度を上げてこれまで皆無に近かったヴェルディのビルドアップ陣にプレッシャーをかけて高い位置でボールを奪う意図があった。また、右にクリスティアーノを配置して個の力を活かした突破や高精度のクロスから反撃を目指す。この采配でリズムが生まれた長崎。押し込まれ始めたヴェルディはここで右SBに稲見、左SHに杉本竜士を投入。受け身にならないようにアグレッシブさを更にアップさせて対抗する。

 その後、染野に代えてバスケスバイロンを投入して河村をトップに回す。クリスティアーノに対してはSB加藤蓮とSH杉本竜士が捨て身の守備を見せて、特に杉本竜士のプレスバック対クリスティアーノは見応え十分のマッチアップだった。

 前線からの守備強度をアップさせて潰しにかかるヴェルディとカイオセザール、クリスティアーノ、クレイソンと個の力を存分に生かす交代をする長崎の構図になる。クロスボールのターゲットマンとして長身・都倉を投入して交代枠を使い切った長崎の猛攻を受けるヴェルディ。85分を過ぎてからヴェルディは加藤弘堅を最終ラインに投入して3CBとする。ここでも山越、ンドカと空中戦に強いCBがその力を発揮して跳ね返す。危ない場面を迎えても守護神マテウスの好守あり何とか耐える。

 前線へボールを持ち運び、追加点を取って楽にしたい展開であったものの重心を後ろにする選択をして逃げ切り4戦ぶりの勝利を手に入れた。

まとめ

 前節の記事で書いた選手の組み合わせや起用する順番に対して、1442のシステム変更とパワーやフィジカル溢れるメンバーを後から起用することで見事に完封勝利した。この日の城福監督の采配はとても上手く嵌り、冴えており何もストレス無くて文句無しであった。個の仕掛けで見劣りして苦労した事実もあるが、攻守のどちらに重きを置くかと天秤にかけて守備を選択したして勝点3を得た。試合全体でのハイライトは限られたものになり内容は単調な面が多かったが、監督の力が発揮された試合になった。
 攻守で同じシステムを採用して、動きをシンプルにしたことで守り易さや余計なスペースを与えないことが上手くできた。フィジカル面では劣りながらも複数名でボールを囲み、奪取することも見られた。DHで馬場晴也とコンビを組んだ森田晃樹は城福体制以降、長い時間起用され相当期待されているのだろう。実際に数字も残しているし、自分の間合いで攻守においてプレーが出来てる場面が増えてきており存在感が日に日に増している。
 新たなオプション、選手が成果を出して次節・水戸戦ではどう臨むのかが楽しみになってくる。