【雑感】2019年J2リーグ第37節 対ヴァンフォーレ甲府~位置的優位を取り主導権を握る~

東京ヴェルディ 2-1 ヴァンフォーレ甲府

 大勝を果たした前節、その勢いは本物なのか上位につける相手に試すには絶好の機会になった。開始早々から主導権を取り、ゴールラッシュで逃げ切り久々の連勝、甲府へシーズンダブルを飾ることが出来た。クロスバーに助けられることも何度もありヒヤヒヤすることもあったが、しっかりと相手をよく見てサッカーが出来た場面で結果を残した一戦を振り返ってみたい。

スタメン

 前節琉球戦に大勝したヴェルディはスタメン、システム継続する。ベンチには北朝鮮代表でW杯予選に召集されていた李栄直、怪我が癒えたレアンドロが復帰。安在は久しぶりにベンチ入りを果たす。対する甲府は前節栃木に試合終了間際の得点で辛うじて引き分けに持ち込んだ。武岡→小柳、宮崎→曽根田とスタメン変更あり、システムはお馴染みの13421でスタート。

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位置的優位を確保するビルドアップ

 前節の大勝の勢いそのままに攻撃を仕掛けるヴェルディが序盤から試合を支配した。ヴェルディボール保持時(甲府ボール非保持時)近藤、若狭を中心に4バック+梶川でビルドアップ形成するヴェルディに対して、甲府はWB田中と内田が最終ラインに入って1541システムに基本的にはなる。ヴェルデイ陣営にボールある時は佐藤と曽根田も前に出る形で15221のようになる。しかし最前線のウタカをはじめ、佐藤と曽根田もボールホルダーへ効果的なプレッシャーをかける場面が少なく、近藤、若狭、梶川はかなり自由にボールを持つことが出来た。また、中盤4→2になることでDH小椋と横谷の脇が空きそのスペースを井上潮音、クレビーニョもしくはサイドの澤井直人、奈良輪が立つことでボールを前進する。相手の弱点を突き積極的に攻めることが目立った。

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 立ち上がりからボールを握るヴェルディがすぐに先制点を挙げる。8分、近藤が左ワイドの小池とマッチアップする田中の背後を取るロングフィードを入れる。パスを受けた小池はドリブルで田中を交わしてPA内へ進入して速いクロスに飛び込んだジャイルトンパライバが押し込んで先制する。
 追加点も立て続けに入る。15分、小柳のパスをカットした小池が持ち上がり斜めに走るパライバへパス、一度はクリアされるもこぼれ球を拾った梶川がPA外からコースをつくミドルシュートを決めて2点目を挙げる。前半戦に続き、甲府のビルドアップを狙ってボール奪取からゴールまでもぎ取ることが出来た。得点者は偶然なのか、2戦ともに梶川であった。

 開始15分でリードを2点に広げて良い入りが出来たヴェルディ、その後も攻撃のリズムは継続する。甲府の前線からの守備をうまく剥がして右に左にボールを展開することでゴールへ迫る。特にリベロの位置に入る梶川は絶妙なポジショニングでマークを外してフリーでボールを貰い、テンポよくパスを回すことで攻撃のタクトを振るう。

エース・ウタカ中心に反撃に出る

 守備がハマらずに開始早々からビハインドの展開になった甲府は右サイドからの攻撃を仕掛ける。WB田中が幅を取ることで奈良輪を引き付けて、近藤との距離感を離す。空いたスペースを佐藤やウタカが使ったり、田中が個人技からクロスを上げてウタカが合わす場面でゴールを脅かす。

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 ヴェルディは守備時にSHになるクレビーニョと小池が最終ラインに吸収されないで4バックのままであることから甲府は右からの攻撃だけでなく左からもリマがオーバーラップして攻撃参加+内田からのクロスと分厚い攻撃を仕掛ける。またセットプレーから何度もチャンスを作るもののGK上福元の好守やクロスバーを叩く場面でゴールを奪えずに前半は2-0でヴェルディリードで折り返す。

守備を修正して流れを掴む

 後半開始から甲府はアラーノを投入する。全体的に前線から積極的にプレス行い、人につく守備でヴェルディにボールを持たす余裕を与えず、前半の攻撃キーマンだった梶川に対して小椋がしっかりとマークすることで攻撃の芽を摘む。守備をしっかりと修正することで甲府が試合の流れを掴む。ボランチの小椋と横谷が縦関係になり、アラーノ、横谷のどちらかがハーフスペースに入り内田が大外に位置取ることでフリーになる。そこからの精度の高いクロスボールでチャンスメイクする。

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 自陣に押し込まれることが増えたヴェルディは前半のようにボールポゼッションが出来なくなる。前がかりになり手薄になった甲府最終ライン目掛けてロングボールを入れてパライバ、小池の個人技からカウンターを仕掛けるオープンな展開になる。60分ごろ横谷→金園、森田晃樹→レアンドロと両チームメンバーを変える。ヴェルディはレアンドロがフリーマンになりカウンターから追加点を伺うが、アラーノ・金園・ウタカの3トップで前線に迫力を出す甲府の勢いが勝る。

システム変更で逃げ切りを図る

 劣勢の状況でたまらず、ヴェルディはエアバトラーの平を投入、直人と奈良輪がWBへ回り1352システム変更する。サイドを埋めて5バック、中央では空中戦に強い3CBで跳ね返す守備をする。レアンドロが下がり気味でボールを貰うことで再びヴェルディにもリズムが出てきて、両サイドに開くパライバとクレビーニョの個人技からシュートチャンスを作るが追加点を奪えない。78分、甲府は最終ラインのリマに代えて攻撃的な宮崎を入れてシステムを1442とする。前節栃木戦でもビハインド時に見せたオプションの一つである。

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 システム変更でよりサイド攻撃を明確にする甲府。なんとか耐えてきたヴェルディであったが、80分に内田のクロスからこぼれ球を拾った宮崎が佐藤へ繋ぎ、豪快にシュートを叩きこまれて、ついに失点を許す。そのあとも猛攻を受け続けるが上福元の好守もあり1点リードを逃げ切って7月以来の連勝を果たす。

まとめ

 4バック相手が続き5バックで守る甲府をどう攻め崩すのか注目した試合だった。最終ラインの5バックを崩すのではなくて中盤を崩して位置的優位を確保することで主導権を握り、ボールを前進して数的同数を作り攻撃を仕掛けていった。前でボールを動かすだけではなくて守備ラインが上がったと見るやその背後を突くロングボールを入れるなどバリエーションが増えてきたと感じる。甲府の守備陣形やビルドアップ技術をよく研究して前半戦同様にパスカットを狙い、そこから追加点を挙げるなど相手をよく分析して結果に繋がった。後半は2点ビハインドの甲府の反撃もあり、落ち着いてボールを支配することが出来ずにオープンな展開となってしまったが守備陣の頑張りもありリードを逃げ切った。劣勢を挽回するために攻撃で再び主導権を握るという次の課題を前向きに受け止めて連勝の喜びをかみしめたい。