【雑感】2019年J2リーグ第39節 対アビスパ福岡~術中にはまり予想通りの展開~

アビスパ福岡 2-0 東京ヴェルディ

 何度も見てきたこの光景をまたしても見せられることになった。攻めあぐねてボールを失いカウンターを許す。守りさえ固めるとミスを誘発させて仕留めるという分かりやすい戦術で予想したとおりの敗戦となった。ならばどうしたらよかったのかを試合経過を踏まえて自分なりに考えてみた。

スタメン

 前節横浜FCに敗れたことでJ1昇格の可能性がなくなったヴェルディ。残り試合は所謂”消化試合”になってしまったがこの日もメンバー構成はあまり変更なかった。出場停止明けのレアンドロがスタメン復帰、怪我の井上潮音に代わり佐藤優平がリベロ、クレビーニョががサイドアタッカーに起用され1442システム。対する福岡はJ2残留まであと少しという段階にきているが、前節柏に0-4と大敗。今節は主将で古巣対戦となる鈴木をはじめ、菊地、輪湖、木戸とメンバーを入れ替え13421システムで迎え撃つ。

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試合を支配するとは?

 前半戦で対戦した際は両者ともに前線に人数をかけて攻撃的な姿勢をみせていたが、この日の福岡はヴェルディの戦術をうまく分析して5-4のブロックを敷いてきた。試合立ち上がりから、基本的にはヴェルディがボールを持つ(ボールを敢えて持たせた)展開で進む。
 福岡はボール非保持時1541のシステムを敷く。1トップ城後がボールホルダーへのプレスとパスコースを限定する動きを積極的に行ない、敵陣にボールある時はSHになる松田と木戸もプレスに加わり3枚でヴェルディビルドアップに対抗する。ヴェルディはCB若狭と近藤が中心になりクレビーニョと奈良輪が斜めに位置、リベロの優平が城後の脇に位置してパスコースを作る。優平に対しては城後+鈴木、加藤でしっかりと挟み込みケアすることで自由にプレーさせず危険な場所へ進入させない。ボールを前進してゾーン2へ入っても、福岡の中盤4枚はコンパクトな陣形を維持したまま横スライドで対応していき、最終ライン5バックとの距離を近づけてかなり密集する守りを見せる。

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 プレッシャーなどからミスを誘発してボール奪取すると、手数をかけずに空いているスペースに松田、城後、木戸が走り込みサイドの石原と輪湖もフォローしてフィニッシュまで持ち込みゴールを脅かす場面を作る。特に守備が緩いパライバ、クレビーニョのサイドを突く攻撃が目立った。

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 ヴェルディはワイド小池とパライバが大外⇔ハーフスペースを行き来して、フロントボランチ梶川と晃樹がスペースを突き、サイドのクレビーニョと奈良輪がオーバーラップとする構図を描くが5-4で堅いブロックを敷き、寄せとスライドが早い福岡の守備に手こずる。
『ボール保持』はヴェルディがするが『チャンス』は福岡が多い状況でしたたかに戦う福岡が試合を支配していく。ボール奪取後に素早く攻撃へ転じる福岡がその後もチャンスを作ると、ヴェルディ陣地で優平に2人で挟み込んでボール奪取するとSBやその流れからCKを得る。24分、CKを鈴木がファーに蹴り實藤がヘディングで合わせて福岡が先制する。

逆効果を生み出す攻撃

 先制点を許したヴェルディ、プレースタイルはそのあとも変えずに取り組んでいく。CB近藤と若狭も敵陣に入るほど全体的にかなり押し込んでいきハーフコートになるが、パススピードやフリーランニングなど一向にプレースピードは上がらない。ゆっくりと押し込んでいくことがコンパクトに守る福岡守備陣形をさらに助長してしまい、ゴール前にバスを並べられたかのような3CB(實藤、菊地、篠原)を崩すことが難しくなる。選手が密集することでブロックの内側にスペースを見つけることが出来ず、外側でボールを回すことになるが縦と横のレーンを1列ずつ進むようなショートパスになる。守る側からすると目線を変える動きがなく守り易い状況になり、永井監督からは1列飛ばすかのようにサイドチェンジなど大きく動かす指示が飛んだ。しかし、チャンスらしいチャンスを作ることが出来ずに前半を折り返す。

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リスク管理をどうするか

 後半立ち上がり、修正を図ったヴェルディがリズムを作る。最終ラインから早いタイミングでパスを入れて選手の距離感を広げる。そのことで密集していた福岡守備陣が広げてピッチを大きく使えるようになる。そしてパススピードを上げてテンポを速くすることでプレースピードに緩急を作る。同時に前半は深い位置まではいれなかった両サイドのクレビーニョと奈良輪を高い位置を取らせて福岡5バックの大外に入ることで前線の数的優位を形成する。何回か決定機をモノに出来ずにいると前半同様にピンチを招く。ボールを失うと鈴木や加藤はクレビーニョと奈良輪が上がったことでCB若狭と近藤の背後だけではなくて横にも出来たスペースめがけてロングボールを蹴り、城後などに走り込まれて何度も被カウンターの機会を与えた。
 2失点目も若狭のサイドへボールを蹴り込まれて、城後がボールキープ。一度は後ろへ戻そうとした際のスキを見て体勢を切り返してサイドを抉り、走り込んだ松田がクロスに合わせてゴールネットを揺らす。
 得点を奪おうと梶川、優平、晃樹の中盤3人も前がかりになって最前線との距離が近くなる。フィニッシュで終わればよいものの、中途半端にボールを奪われると、ネガトラ時のリスク管理が出来ていないことがよく分かるように中央にぽっかりと空いたスペースにヴェルディのファーストディフェンダーは居なくて、福岡のボールホルダーになった選手を容易に前を向かせてプレーさせてしまったことが引き金となった。

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 2点ビハインドのヴェルディは奈良輪に代えて山本理仁、セランテスと接触で負傷したパライバに代えて河野広貴を投入。優平と梶川がポジションを入れ替える。広貴は大外に張り、ボールを受けたらすぐにさばき速いテンポを作る。72分、ボールを受けた広貴はカットインしてクレビーニョとのワンツーからミドルシュートを放つもセランテスのセーブで得点を奪えない。直後にも晃樹が抜け出してPA内へ進入する場面、バイタルでボールを奪った梶川がレアンドロのポストプレーから抜け出してセランテスとの1対1の好機を作るも枠をとらえ切れずこの日最大の決定機をものに出来ない。

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 福岡も前線で献身的なプレーをする城後、木戸に代えて森本、田邊を投入してヴェルディDFラインの背後を取る動きを継続していき何度もカウンターからチャンスを作り追加点を狙っていったがスコア動かず0-2でヴェルディは連敗を喫した。

まとめ

 昇格の可能性が無くなりどんなメンバーで来るかと楽しみにしたが、蓋を開けてみるとこれまでの路線継続であった。『未来へ繋げるサッカー』のようで来季も既定路線とも取れるが、組織としての約束事が守備面では特に少なく個人能力に委ねられるため選手の成長や入れ替えで質を向上させていかなければ厳しいと感じる。前節横浜FC戦もネガトラから失点をしており、敢えてボールを持たすことやどこにスペースが生まれ易いと言った弱点が晒されている。
 攻撃面では良い立ち位置を取る、ショートパスを繋いで崩すという自らと格闘してしまったように見えた。視野が狭くなりサイドチェンジや斜め、浮き球のパス、ワンツー、ドリブル、裏を取る動きといったアイデアが乏しく単調なプレーばかりで迫力を欠いた。
 失うものがない消化試合だと思ったが、ノビノビとしたプレーは見られず自分自身と戦いに苦しむ姿を露呈してしまった。立ち位置からネガトラ管理、レーンを飛ばしてボールを運ぶという攻守の改善策を挙げてみた。あくまでも机上の空論にすぎないがピッチでどう表現されるのか見守りたい。