【雑感】2023年J2リーグ 第35節 対ヴァンフォーレ甲府~待望されるラストピース~

東京ヴェルディ 1-1 ヴァンフォーレ甲府

 追いつくまではよかったものの勝ちきれず悔やまれる引き分け。お互いの攻撃志向を探りながら試合を振り返りたい。


スタメン

 前節・山口に2-0勝利で2連勝のヴェルディ。この日は平が出場停止で山越が代役を務める。それ以外の10名は同じで、ベンチには北島が久しぶりにメンバー入りをする。
 一方の甲府は前節・大分に3-2で逆転勝利。スタメン、ベンチメンバーいずれも同じ顔触れで臨む。

前半

 甲府がACL参戦することもあり金曜日開催となった一戦。ACLを控えてどういうメンバー構成になるか注目したが、前節のリーグ戦とまったく同じメンバーであった。2連勝中のヴェルディは直近の対戦5試合で甲府相手に無得点と相性の悪く、勢いでこれを打破できるか注目された。

 試合の入りからボールを握ったのはヴェルディであった。左CBを務める平が出場停止ということで昨季まで左CBを務めており、今季は平との組み合わせで右CBで起用されること多かった谷口栄斗が左CBに入って山越が右CBを務めた。アカデミー時代から左CBが主だったという栄斗は長年の慣れもあり左に入った時の方がスムーズにプレー出来ていたように見えた。2CBでボールを握り後方から組み立てをしていくヴェルディに対して甲府は1442で守る。ヴェルディが自陣低い位置でビルドアップする時にマテウスも関与していくと甲府はクリスティアーノがマテウスをみて、三平はアンカー森田晃樹を消すように立つ。2SH長谷川と宮崎が中へ向きながら2CB山越と谷口栄斗へプレスをかけ4名で積極的に前から守る。ビルドアップの出口になるSB宮原と加藤蓮には1列2列と縦スライドして三浦、松田が対応をすることになる。ここでどちらがボールを持つのかがカギとなった。

 宮原と加藤蓮はさほど高い位置を取らないため結局、三浦と松田は立ち上がりに少しだけプレスする場面が見られただけほとんど来ず、SH長谷川と宮崎が横スライド対応をすることになった。長谷川と宮崎が中へ絞りがちなためここを通り過ぎて中原と長谷川へボールが渡り仕掛ける場面が目立った。ここは三浦と松田が確りとマークに付き、マッチアップする。

 中盤4枚のうち2枚が前に出がちなこともあり2DH松本と中村の2枚が横幅を守るようなことになり広大なスペースをヴェルディに与えたことで山越と栄斗から鋭い縦パス、持ち上がりということもあった。

 甲府の守備陣形を上手く突いて敵陣に入り込む割合が多かったが最後のところで蓮川とマンシャが中を固めていることで決定機までは至らなかった。

 一方で甲府の攻撃、ビルドアップのひとつとしてDH中村が最終ラインに下りて2CBと3バックを形成。時間を作っているうちにSBは高い位置を取り、右の松田はトップ下のように振舞い、ボールの収め役になることもあった。群馬と同じようなビルドアップ陣形を取っている。

 または速い攻撃からクリスティアーノや三平がポストになり宮崎や長谷川が追い抜いていくものがあった。ここまで押し進めていたのはヴェルディであったが先制点は一瞬のチャンスから個人技で宮崎がモノにした。右サイドから切れ込むと加藤蓮を振り切りニア上で思いっきりよくシュートを叩き込み甲府が先制する。いつも宮崎にはいいようにやられている印象がある。そろそろ一つ上のカテゴリーで見たい選手のひとりだ。

 攻撃機会が多いものの先制点を献上したヴェルディは直後のカウンターからのチャンスに中原が抜け出すもシュートはマンシャにブロックされる。先制した甲府は攻撃に勢いが出てきて、ゴールへ攻め込む場面が続き、1点リードで折り返す。

後半

 ハーフタイム明け、ヴェルディは森田晃樹に代えて新井を投入。晃樹はコンディション不良または怪我を抱えていたようだ。新井は左サイドに入り、長谷川が中へ、齋藤がアンカーへ下がった。現代サッカーではアンカーにはボールを持ち運ぶ能力が要求され、そうすることで周囲の選手たちにも流動性が生まれる。森田の役割を齋藤が務めることになった。

 後半立ち上がりはロングボールも用いてクリスティアーノと三平に深さを取られてPA内に侵入する甲府が押し込んだ。

 主導権を握りながらもビハインドのヴェルディは後半も継続したプレーを心掛けた。すると、51分、ボールを持った栄斗が宮崎を引き付けながらサイドを向いて宮崎の体勢を崩す。これで中が開きパスコースが生まれるとハーフスペースに半身で構える新井へ縦パス。新井はそのスピードを殺すことなく前線の染野へ繋ぐ。抜け出した染野はGK渋谷との1対1を制して上手く流し込み同点に追いついた。前半に言及した甲府のDH周囲のスペースを上手く使うこともできた。それにしても染野は本当に後半に強い男だ。

 試合前の監督会見でも言及していたニアゾーンの崩し方。こだわりを持って取り組む中で結果が出たことは自信につながるものであるだろう。そのあと、綱島悠斗と河村を投入して高さ、パワーを前線に入れて逆転を目指す。
新井、中原の両サイドからの攻撃でチャンスを作ると個人技から中原がシュート、クロスから染野が頭で合わしゴールを脅かす。左からも新井と綱島悠斗が絡み、染野がシュート、河村や悠斗も積極果敢にシュートを放つも枠を捉えることが出来ず、何度もあったチャンスを最後まで活かすことが出来ずに1-1のままタイムアップ、痛み分けとなった。

まとめ

 自動昇格を目指す状況下では完全に取りこぼし、手痛い勝点1となってしまった。ビハインドからでも自分たちの形で同点に追いつき、そのあとも攻勢に出るもシュート精度に欠き勝ち越しには至らなかった。ここぞの場面で勝ち切る力を痛感させられた。トップ下でスタートし、アンカーへ移動と複数の役割をこなした齋藤や途中加入の長谷川は数字が出ていない面もあり、そろそろ得点がみたいところである。
 ACLを控える甲府は夏の移籍で加入した実力者も多く、手堅いチーム力がさらにアップしたように思えた。過密日程を強いられるもリーグ戦では勝点を積み重ねそうだ。ボール非保持時のDH守備負担はかなり大きいが縦に速い攻撃が嵌れば打ち勝つことも出てきそうだ。
 ヴェルディにとっては負けなかったことはよかったものの、勝ち切ることが求められる最終局面へ突入している。ニアゾーンの攻略に加えて得点を奪うラストピースが待望される。