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晶析の強化書

【FC Books_NO.2】最終更新日:2020/5/19

はじめに
 今年、改訂出版されたばかりの最新刊「増補新版・晶析の強化書〜有機合成者でもわかる晶析操作と結晶品質の最適化〜」を紹介します。あわせて「分離プロセス工学の基礎」についても少しだけ紹介します。

晶析の強化書

1. 書誌情報(Amazon.co.jpより)

タイトル: 晶析の強化書【増補新版】〜有機合成者でもわかる晶析操作と結晶品質の最適化〜
著者: 滝山 博志
単行本: 147ページ
出版社: S&T出版 出版社サイト(目次あり)
言語: 日本語
ISBN-10: 4907002807
ISBN-13: 978-4907002800
発売日: 2020/1/10

2. 内容紹介(個人的な感想)

 晶析(再結晶)に関して、理論と具体的な装置について書かれています。
「晶析の強化書」としては2回目の改訂になりますが、今回「第6章 結晶粒子群の連続フロー製造」が新たに加わりました。そのタイトルのとおり、晶析(再結晶)を連続フローで行う内容が盛り込まれた訳です。

晶析分野では、3年に一度ISIC(International Symposium on Industrial Crystallization)の国際会議が開催される。その中で、連続晶析に関する話題が再燃している。 123ページより抜粋

 連続晶析に関する内容は(純粋)化学寄りの世界ではあまりお目にかかれませんし、特に有機合成の練習実験では、これまで使われることはほとんど無かったと思います。試しに、実験化学講座(第1〜5版)と有機合成実験法ハンドブック(第1〜2版)を見ましたが、連続晶析の記載を見つけられませんでした。
 しかし、化学工学寄りの世界では全く珍しくありませんし、汎用品を製造する工場を中心にどんどん使われている技術(例:MSMPR = Mixed Suspension Mixed Product Removal)です。さらに、最近では、医薬品の連続生産にも展開されようとしています(例:iFactory)。もちろん、一般の有機合成実験でも有効な手段ですので、知って得する情報だと思います。
 連続フロー合成と言っても、純粋に反応の操作だけでなく、前工程(例:試料調製、等)、後工程(クエンチ、抽出、濃縮、カラムクロマト、蒸留、再結晶、等)という付随する操作が必ずあり、この操作においても連続的に行えないのかと、読者の方々はきっと疑問に思われるでしょう。そう思われた読者の方は、その疑問をぜひ解決しましょう。

《one point》
MSMPR(Mixed Suspension Mixed Product Removal)
 生産現場(工場)で使われている連続晶析装置は多いが、特に撹拌槽をベースとしたものが多い。その最も単純なモデルがMSMPRである。速度論的解析は、50年以上前にRandolphとLarsonによって確立されている。

3. 図書館所蔵検索

《検索日: 2020/5/19》
3-1. 大学図書館(CiNii Booksによる)
 所蔵(2) 玉川大学、北海道大学
3-2. 国会図書館(NDL ONLINEによる)
 所蔵(1) 東京本館
 ただし、国立国会図書館サーチによれば、関西館にもありそうです。
3-3. 公立図書館(国立国会図書館サーチによる)
 所蔵(0)

4. 参考までに

4-1. 分離プロセス工学の基礎
 タイトルのとおり(化学工学分野の)基礎的な内容の本で、図や写真も多く記載され、それらを一見するだけでも価値があります。もちろん、数式をも理解すれば尚良しです。
 晶析(再結晶)のみならず、蒸留、抽出、吸着、濾過などについても、その連続操作が生産現場(工場)で使われています。今後、社会に出る前に「実験室と生産現場の両方の技術」を知っておくことが重要になると、筆者は考えており、その第一歩としてこの本を紹介します。

今回はこれまで。

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