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期待せずに観たアーティゾン美術館の「空間と作品」がとても良かった

言われてみれば、確かにそうです。何のことかというと、アーティゾン美術館で開催中の「空間と作品〜作品が見てきた景色をさぐる」の企画趣旨のことです。それは次のような内容です。

美術館の展示室に整然とならぶ美術品、それらは、今日誰もが鑑賞することのできる公共的なものとなっています。ですが、その美術品が生まれた時のことを振り返ると、それは邸宅の建具として作られたり、プライベートな部屋を飾るためにえがかれたりと、それを所有する人との関係によって生み出されたものであることが分かります。また、時を経る間に、何人もの手を渡り、受け継がれてきたものもあります。

アーティゾン美術館のサイトより

こう言っちゃあなんですが、10日(土)に都内で用事があり、午前中が空いていたので、ついでにアーティゾン美術館に立ち寄りました。つまり、それほど期待していませんでした。ところがこの展覧会が実に良かったのです。

展覧会には、石橋財団(企業家で文化事業にも取り組んだ石橋正二郎氏が創設)が所蔵するモネ、セザンヌ、藤田嗣治、岸田劉生、琳派による作品や抽象絵画まで、古今東西の幅広い分野の作品144点が展示されていました。

ただし、展示方法がちょっと変わっています。どのような状況で生まれ、どのように扱われ、受け継いでこられたのか、その時々の場を想像できるように展示されているのです。最近の展覧会のテーマはひと捻りしていますね。

6階で出迎えてくれたのは円空の仏像です。円空は修験僧として旅をしながら、神仏を彫り続け、寺や個人に寄贈したと言われています。円空仏をじっくりと観たのは初めて、荒削りのようでいて、繊細な表情ですね。

素朴な信仰の対象として村落のどこかに置かれるのが円空の願いでした

6階の展示室には、旧蔵者の邸宅内を模した空間や家具を設えた空間のなかに各作品が展示されています。文章ではうまく表現できませんが、所蔵していたコレクターの気持ちになって鑑賞できる展示方法です。

日本の木造建築を模したセットのなかに設置された円山応挙の襖絵

5階は展示空間自体は通常通りの白ベースなのですが、作品の並べ方にひと捻りした趣向が施されていました。作品に関わった画商やかつての持ち主のストーリーが添えられているのです。

ピアニストのホロヴィッツが所有していたピカソ の「腕を組んですわるサルタンバンク」

4階の展示室は「額縁」にスポットが当てられていました。額縁は作品の個性を引き出す役割を持っています。いままで深く考えたことはありませんでしたが、作品本体と額縁には深い意味があるんですね。何とも興味深い。

青木繁の「海の幸」の額には魚や波があしらわれています

うんざりするほど暑い夏季休暇の初日でしたが、この展覧会ですっかり気分がよくなりました。来館者もそれほど多くなく、ゆっくりと鑑賞できたのもうれしい。本展覧会の開催は10月14日(月・祝)までですよ。

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