野口恒生

off timeは読書、映画・美術鑑賞、 詩作。本は「ブクログ」に、映画は「Film…

野口恒生

off timeは読書、映画・美術鑑賞、 詩作。本は「ブクログ」に、映画は「Filmarks」に。好きな絵:フラ・アンジェリコ『受胎告知』、バーン・ジョーンズ『黄金の階段』ホッパー、ワイエス、ラファエル前派、後期印象派の作品等。 #詩 #本 #映画 #美術 #野口恒生

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    各公募 の佳作、入選

最近の記事

笹舟

車内で女生徒が三人仲良く 英単語の暗記に余念がない それぞれ順に出題されては 懐かしい単語が発音される やがて指先がスペルを追う 淀みない草書が宙に顕れて 新体操のリボン演技のよう 混み始めて狭まった空間に カリグラフィーが絡まる頃 タイミング良く駅に着いて か細いスペルも彼女たちも ひとかたまりに流れて行く 清流に浮かべた笹舟に似て

    • マツバウンラン

      ま遠く オルガンの音(ね) 小学校舎から 運ばれてくる 子供たちの 歌唱(うたごえ) 腕のなかに 眠りから覚めて 彼女が微笑む ふたりきりで この部屋に 目覚めることの しあわせ ゆるやかに たわむ薄むらさき

      • お爺さんが孫と 歩いていく 緩やかな足取りで ともに少し覚束ない 補い合って そっと繋ぐ手 書き込みの多い手には 真新しい手が 眩しくて 忘れかけの 唱歌など 歌い出していく

        • 気圧

          ブラウスを 綺麗に隆起させている あなたの胸 その押し上げられて 高い先端部では 素材のシルクが 心なしか 薄く感じられる

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        記事

          庭園美術館

          人気だった美術展 ポストカードを買おうと 販売コーナーに寄ると 女性が多く詰め掛けていた 並んで待って漸く カウンター手前まで来た頃には 熱気で列も溶け 「知性」も「教養」もなんの いち早く買おうとヒッシ 横からお尻は割り込む 背中に胸は当たる 異性を意に介さない 販売する内側でも狭いなか 研修の一環なのか女性たちが お釣り銭に、ポスター補充にと 不慣れにしゃがんだり伸びたり 四苦八苦 上を下への懸命さで‐‐ 本棚に立て掛けてある その

          庭園美術館

          遠景の淡い色調のなかに あなたは立っている 黄水仙のように裸で 摘む人が誰かあるものか 届かぬ花のあなたを

          切符

          違反して 一方通行の道を 僕の手が北上 彼女に切符を切られてしまう

          青空

          フックを外し ジッパーを下ろし 抜き取るものは抜き取り 滑るものは滑らせ 一過の青空のように 澄んでかがやく あなたの身体 ただ ピアスだけ着けて

          歯科衛生士

          虫歯は1本も無い 歯科に掛かったことは 子供の頃のC―1 1回しかない、と 無邪気に口を開ける 衛生士の彼女 口許も唇も覗く白い歯も 健康的で色っぽくて 白い歯と打つかったとき 高い音がした

          歯科衛生士

          プリーツスカート

          kitchenに下着姿のまま立って あなたが葡萄を洗う

          プリーツスカート

          ソックス

          絨毯敷きで 天窓からは陽も注ぐ 明るく広い階段 踊り場にはオリジナルのリトグラフ 一人っ子で育った彼女 今は両親の遺産を継いで 悠々自適 時おり天気の良い日には ソックスだけの裸になって お気に入りの階段でぼんやりする 淋しさに泣き笑いしてた幼い頃が 愛しさに包まれる

          クライマックス

          車内で本は 佳境に差し掛かっていた いつから前に立っていたのか 読みさしの本の向こう 若そうな女性の脚もと 見上げれば美女だった 涼しく外の景色など眺めて 窓からの風をうけている 本に戻って読み進めると 背景のスカートの裾が やさしくなぶられ 当人の気にかけない高さまで 舞い上がり 午後の光線に 美しくも艶かしい シルエットを創り出す ローカル線の 天井に取り付けられた 扇風機の風 ヘッドがこちらへ向くたび 床から風を撥ねかえし 目の

          クライマックス

          かんせい

          翻るフレア・スカート 抑える指 寄せる波 かえし かきあげる髪

          あさ

          ねむりから いまさめた きみの やさしい しろい はだか あわい ブルーの タオルケットに つつまれて

          樫の巨木(き)が在る かつて この地に 独りの巨人(ひと)の 席捲(せき)したことを 偲ばせて 地に巨人(ひと)はあまり 立ち尽くし 時劫(とき)のかたへ

          正午

          音のない市街地を キリコを満載したトラックが 荷台に光を浴びて走り過ぎる