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水銀を使わないでゆっくり返る、連理からくり人形を制作した。

1. はじめに

江戸時代のからくり装置である、「連理返り人形」 をリデザインした。

少々からくりを知ってもらうために資料をお出しいたします。
連理返り人形に関する資料は、江戸時代に書かれた古書である 「機巧図彙」 である。 この書物の復刻版は、江戸時代科学古典叢書3 「璣訓蒙鏡草三巻 機巧図彙三巻」 として、 恒和出版から出版されている。

江戸時代科学古典叢書3 「璣訓蒙鏡草三巻 機巧図彙三巻」

この「連理返り」は図のように2つの人形を上二段に分け置くと、上の人形は下の人形の首の上を越し、 次第次第に下の踏板に着地して立つ。 何段踏板があっても変わることがない。 たいへん知的好奇心を擽られる。生きているようにも見える。

このからくり装置の面白い動作は2つの人形が共に肩に背負っている引合筒 (円柱形の筒のこと) 内に封入されている水銀の動きによるものである。 実は単純に引合筒内を水銀が移動することではなく、装置全体に渡って、動的な流体についての科学(流体静力学)の視点がみうけられ巧妙な工夫と優れた技術が凝らされているのである。

江戸時代は水銀を使用していましたが、水銀は現在毒物に指定され簡単につかえません。

この時代は水銀が毒であると認識されおらず白粉にも使われていた。その水銀の重さと流動性での動力で水銀からくりとして段返り人形や連理からくり人形が作られていました。

江戸水銀を使用していましたが、水銀は現在毒物に指定され、水銀による地球規模での環境汚染を防止するため、平成 25 年 10 月に水銀に関する水俣条約(以下「水俣条約」といいます。)が我が国で採択されました。

私は、危険な物質のため代用品を使用することにしました 金属玉で流れ調整機構を特徴とする構造を考案しました。

人形の横幅は両足で立つので、 安定性を求め 横幅は大きめにしました。 引合筒は単なる吹き抜けの筒ではないので、引合筒の構造に金属玉の流速を調整中であるが、 引合筒の中央部分には金属玉の流れ調整機構を設定すれば尚秀逸な動きが展開できると考えています。

この流れ調整機構は、 金属玉の流速度を調整する役割も果たします。 引合筒内に入っている金属玉が、 下方向に流れ落ちることで、 引合筒は回転する力を得る。 金属玉が多く流れれば、 回転速度の調整ができる。

もう1つの課題は、階段の踏板と蹴り上げの斜辺長の長さと角度である。 人形の上半長・下半身長・人形の全身長・人形間隔長のよって、引合筒等の寸法を合わせればよいのである。

従って、 本からくり装置の寸法の決め方には、階段の踏板の寸法を先に決めるか、 人形と引合筒の寸法を先に決めるかの2通りの方法があることがわかる。しかし、金属玉の流動性と摩擦係数と重量によっで角度が決まるなど、最適な金属玉の流れを安定化しなければならない。

2. 設計及び製作

連理返り人形に関する資料の連続図から、 人形が引合筒を両肩に掲げて、 上方に位置する人形が下方の人形の頭を飛び越し、下の踏み板に立ち、交互に踏み板を下りていく様子が理解できる。

人形の大きさ、 引合筒の長さ、踏み板の大きさの間には相関性があるため、 各部分の寸法を適当に設計し、 後から組み合わせればとは行かない。

人形は両肩で引合筒を支えている。 この両肩を回転中心として引合筒が回転する。 従って、 人形が踏板を何段でも滑らかに下り続けるためには、 前後の人形が支えている引合筒の2箇所の位置間隔(これを人形間隔長と呼ぶ) は踏板の1段分の斜辺長程度としなければならない。

人形間隔長が長すぎると踏板を下っていくうちに、 人形は慣性により次第に踏板の先端に出過ぎるようになり、 人形は着地の時、踏板を踏み外してしまう。 逆に、人形間隔長が短すぎると頭を通り越した上側の人形が下の人形と同じ踏板に当たり始めるようになる。

連理からくり技術的要件と考察

五段返り人形を作るには、踏板を3Dプリンター準備し、引合筒と人形を作りました。
引合筒は紙のストローを使用、内直径約12mm、全長180mm、2本の中心間隔約68mm、人形間隔長は77.00mmに設定し、重さは金属玉の引合筒+連理で約33.7gです。

人形は軽さが大切なので、不要な部分を削り取り、3Dプリンターで制作。和紙や折り紙で着物風を着せた場合は、動作に影響がないように調整しました。

組み立て後、引合筒に金属玉を挿入して動作を調整しました。挿入金属玉は引合筒1本当たり23.0gの範囲が適切で、27g前後が最適であった。
 

モデル中には金属玉の調整で重くしたものは、人形の重心が回転中心の肩より下にあり、引合筒の動きによって人形の足先が前方に振られてしまうために動きのバランスが崩れて落下するケースなどもあった。

この問題を解決するために、人形の重心調整用のおもりを上部に取り付けることで解決できました。調整用おもりの量と取り付け高さは試行錯誤が必要と思います。

面白そうでしょうか?。知的好奇心が動きましたか。
お子さんに見せてあげてください。
動力は金属玉だけの自由落下のエネルギーのみです。
SDGsの考え、紙とPLA(3Dプリンタ)と回転軸の素材は大きいゼムクリップの金属線のみで造られています。


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