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ハンドメイドで絨毯をつくる。“タフティングとは?”

はじめまして、つちやと申します。
「タフティング」と呼ばれるファブリック製造技法を軸に据えて、制作・調査・制作支援を行うことを目的としたNeutuft(ノイタフト)という活動を主宰しています。

本記事では、「タフティング」に興味を持っていただいた方向けに、基本的な技法の特徴と制作の流れ、その魅力と技法上のデメリットまで、一通りご紹介していこうと思います。


タフティングとは?

布に繊維を植え込むことで房(パイル)をつくるファブリック製造技法の一種です。
「タフティングガン」と呼ばれる手持ちミシンのような電動工具を使用して、専用の布に繊維を植え込むことでラグやカーペットのようなファブリックを製造することができます。

打ち込む繊維の色や素材を自在に組み合わせることで、絵画を描くように一点物のファブリックアートが制作できる点が魅力です。

「えびポセイドン」 50cm × 60cm/ November, 2021
「アニメの目」 50cm × 40cm/ April, 2022
https://www.instagram.com/p/Cdi4USUj5q_/
「へんたいラッチ」各 33cm × 33cm/ June, 2022

制作の流れ

タフティングの基本的な制作の流れは大きく分けて3つの工程にわかれます。それぞれの工程を簡単にご紹介します。

①グラフィックデザイン・下書き

デザインソフトなどで、ベースとなるグラフィックを用意します。用意したグラフィックをピンと貼った「タフティングクロス」と呼ばれる布に転写していきます。

転写にはプロジェクターを使用します。図柄は布の向こう側に出るので反転モードで写します。
タフティング専用クロス。目の細かさ、柔らかさが独特です。

②打ち込み作業

タフティングガンと呼ばれる手持ちのミシンのような電動工具で、繊維を打ち込んでいきます。
タフティングガンは先端にニードルがついていて、高速でピストン運動をすることで、繊維を布に植え込んでいきます。

打ち込み途中のようす
タフティングガン(カットパイルタイプ)

③裏地の仕上げ

繊維を打ち込んだままの状態だと、引っ張ると房部分が簡単に抜けてしまうため、裏地を接着剤でコーティングします。
また、用途に合わせて裏地を貼って、打ち込み面を保護します。

タフティングの魅力

わたしも、2021年の春ごろから実際にタフティングガンを使用してファブリック作品の制作を行っています。
制作を通して感じているタフティングの魅力は主に2点です。

1点目は、「実用性を持った絵画」を1点単位で制作できる楽しさです。

考えてみればファブリックアートって「実用性を持った絵画」という点で独特です。単純な2次元のイラストを、実用性を持ったラグやタペストリーにコンバートするのは楽しいですし、愛着もわきます。

2点目は、表現技法としてのとっつきやすさです。

例えば、タフティングでは繊維を布に植え込むことでグラフィックを再現していきますが、一度植え込んだ繊維も引っ張ることで抜くことができます。
つまり、失敗してもやり直しが効く表現技法なのです。(あまり繰り返すと材料の布に負担がかかるので限界はあるのですが)

また、多少のゆがみや失敗であっても味になりやすい、という特徴も、とっつきやすさにつながるひとつの要素だと思います。
作品の性質上、仕上がり面のコントロールが難しい一方で、ひょうげもの的な出たとこ勝負の魅力を楽しむ感性とは相性がよいと感じています。

一方で向き・不向きもあります

一方で、タフティングはだれかれかまわず手放しにおすすめできる表現技法、でもないとも感じています。

理由としては、まず第一に材料効率がとても悪いです。

タフティングでは繊維(主に毛糸)を材料として絵を描いていきます。タフティングをはじめられた方のほとんどが、まず材料消費の激しさに驚かれます。
他の表現技法と比較した際に割高な技法となってしまうため、「タフティングを入り口に創作活動をはじめる」といったクリエイティブの入り口としてはあまりおすすめしません。

次に、表現できることに制限があります。

タフティングは、繊維の集合によってグラフィックを再現していきます。
そのため、細かいデザインや、グラデーション、鋭角なエッジや一定の太さの線などの繊細な表現に向きません。
特に小さなサイズの作品ほど、下書き通りの仕上がりにならない場合が多く、細部にこだわる方にはおすすめしません。

「魅力」で挙げている「出たとこ勝負の良さ」の裏表だと思います。

おわりに

以上、本記事では、「タフティング」に興味を持っていただいた方向けに、基本的な技法の特徴と制作の流れ、その魅力と技法上のデメリットまで、一通りご紹介しました。これからタフティングをはじめたいという方に参考になれば幸いです。

なおNeutuft(ノイタフト)では、毎週末に都内のアトリエでタフティングワークショップを開催しています。
本記事で触れることができなかった、タフティングに必要な道具や材料、一通りの流れなどについてもご案内しています。

小規模な内容とはなりますが、ご興味を持たれた方はよろしければオンラインストアの方で受付を行っておりますのでこっそり覗いてみてください。

Neutuftとは?

Neutuft(ノイタフト)は、タフティングを中心に“DIYによる創作活動をより身近にできたらな”という思いで始めた「制作支援」を軸とした活動です。

タフティングについてもっと知りたい方は

自宅やワークスペースで“個人的に”タフティングを楽しむ、いわば“ホームタフティング”を行う人が増えてきました。実践にあたって必要な知識・情報を下記のマガジンで不定期投稿しています。
よろしければチェックしてみてください。


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