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押し付けってよくない(車輪の下でを読んで)

あらすじ

周囲の期待を一身に背負い猛勉強の末、神学校に合格したハンス。しかし厳しい学校生活に馴染めず、学業からも落ちこぼれ、故郷で機械工として新たな人生を始める。地方出身の1人の優等生が、思春期の孤独と苦しみの果てに破滅へと至る姿を描いたヘッセの自伝的物語。


この本を読んで驚いたのは主人公のハンスが死ぬことだった。私が読んできた物語の大半がハッピーエンドで終わるか、絶望の中に希望見出して歩き出す主人公がほとんどだった。だから、この物語はとても印象に残る小説の一つであると言っても過言ではなかった。

この本を読んだ後に、ある出来事を思い出した。私の代の高校受験の時、他校の同級生が受験に失敗し、志望校に受からなかったことが原因で自殺をした子がいた。その後に、自殺をした子の母親も子の後を追って自殺したらしい。

どうしてそんなことで死ぬのだろう。当時は理解ができなくて疑問を抱いた。けれど、今彼に思いを巡らすと一つの可能性が出てきた。彼は自分で自分のことが許せなかったのではないだろうか。

周囲の環境が彼にそう思わせたのだろう。ハンスは秀才故に、教師や父親、地域に住んでいる人が過剰な期待をしてしまったからだ。環境って恐ろしい。

まだ、15年しか生きていないのに親の期待に応えようとして頑張って、努力して、頑張って。けれど、応えられなかった自分自身が許せなくて自殺という選択を選んだ。

ハンスは酒に酔ったあと、原因は不明だが川に落ち亡くなった。
埋葬の時に、ハンスの勉強しすぎな姿を咎めた靴屋のおじさんがハンスの父にこう言った

「あそこに行く紳士(学校の先生たち)も、ハンスが破滅するのに手を貸したんですよ」
「あなたとわたし、我々も、あの子にいろいろとしてやれたことを怠ったのではありませんかな?」

教育って押し付けるものではなく、本人の自発的な好奇心が必要なんだとわかった。それに、その人にとっての最善はわからないから見守ることも一つの手ではないのかなと感じた1冊。


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