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読書メモ:「中学校社会科歴史的分野と「歴史総合」をつなぐ」

飯塚真吾「中学校社会科歴史的分野と「歴史総合」をつなぐー「世界史探究」「日本史探究」ともつなぐー」『歴史地理教育』2022年3月増刊号(937号)、18~23ページ。

目次

1.問題提起ー配当時間から「歴史総合」を考える
2.学習指導要領における「中学歴史」、「探究科目」に求められている学び
(1)中学校社会科歴史的分野
(2)「日本史探究」・「世界史探究」
3.「探究」の基礎としての「歴史総合」
4.「問いを表現する」授業とは
5.「中学歴史」と「歴史総合」をつなぐ

本稿の概要

 著者の飯塚は、はじめに歴史総合がこれまでの世界史Aや日本史Aとどのように異なるのか、科目の構造の変化を確認する。中学校の社会科歴史分野が135時間配当されているのに対して、歴史総合は70時間の配当が標準とされており、歴史総合の内容はかなり精選される。歴史総合につづく探究科目は、従前の「世界史B」「日本史B」が四単位だったのに対して、三単位と減単されていて、生徒が「覚える」内容は変わらずに単位数だけが減ったと考えるべきであろうと、飯塚は述べている。

 中学校の歴史分野では、三年間歴史学習が継続されることが想定されている。中学1年生・2年生に指導する際には基本的な知識をわかりやすく教えること、歴史的思考力の基礎を身につける指導が求められ、中学3年生になると総合的・論理的な思考、批判的な思考をおこなえる生徒が増えてくる。中学校の歴史分野では、さまざまな角度から歴史を理解し、時代ごとに構造的な歴史認識を養うことが基本である。そして、その際に「課題を追求したり解決したりする活動を通して」と述べられていることにも留意したいと飯塚は述べる。

 また探究科目では、自ら問いを立て、適切な資料を選択しながら立論することが学習方法であるとされている。世界史探究では、各単元において「なぜ~なのか」「どうして~なのか」という、日本史探究と比べて、やや抽象度が高く全体的な流れを俯瞰するような問いが事例として示されている。

 ここまでの議論から、歴史総合の授業をどのように構成すべきだろうか、と飯塚は問いかける。新学習指導要領をもとにした新しい教科書では、史資料をふんだんに掲載し「資料から情報を読み取ったりまとめたりする技能の育成」の素材としている。また教科書にはさまざまな「問い」が掲載されている。中学歴史と歴史総合の相違点と接続を考えたとき、「問いを表現する学習」が重視されるべきであり、「問いを表現する」ことは探究学習の最も重要な点であると飯塚は述べている。この「問い」をつくることについて、飯塚は鳥山・松本の問題提起を提示する。そこでは「歴史的思考力」の育成のため、「意見を書く設問」が含まれた授業実践が紹介されている。また「意見を書く設問」は「過去への評価と解釈の是非を問う」「当時の状況にどう対応すべきだったかを問う」「現代の問題の理解に生かす」などと類型化されている。

 歴史総合では、単元のはじめに自ら「問いを表現する」ことが求められており、これは歴史教育におけるパラダイム転換であると飯塚は述べる。この活動をどれだけ具体的におこなえるかが、歴史総合を担当する教員の最も重要な働きかけであることを飯塚は確信している。生徒が何度も「問いを表現」して、次第に「探究のループ」を経験することこそが、歴史総合の目的や探究科目を学ぶための基礎となると飯塚は述べる。

 飯塚は本稿を以下のようにまとめる。中学校の歴史分野において、生徒は発達段階に応じて「課題を追求したり解決したりする活動」で時代のイメージを育んできた。歴史総合では、「問いを表現する」学習を単元の冒頭に置き、何度も「問い」を鍛え、「探究のループ」を繰り返し経験させることが求められる。そして「問い=課題設定」と「探究の方法」とを身につけた生徒たちが、探究科目に取り組んでいくことになる。 

感想など

・前回の「公共」についての論稿を読んでも思ったことだが、学習指導要領をきちんと読み込まないといけないなーと思った。
・歴史総合では、「問いを表現する」ことがその基本になるのかー。
・勤務校では、まだ歴史総合がはじまっていないが、ぼちぼち準備をはじめようと思う(本格的に始めるのは、おそらく次の春休みになるだろうが)。
・遅れてのスタートのメリット(先行実践がたくさんある)を存分に生かしていこう。

 

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