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「城中毒」が行く

 初めてのnote投稿ということで、ここ10年ほど(2020年現在)の私の趣味である城巡りについてちょっと書こうかなと思う。

 まず見て欲しいのはこの見出しの写真である。これは私がとある「城」へ行った時に撮影したものだが、皆さんにはいったい何に見えるだろうか?

 恐らく正常な思考を持つ人間なら、これはどこかの山林の斜面を適当に撮ったものにしか見えないだろう。しかし、何を隠そうこの写真のような風景(地形といった方が適切か)を見ると、私のテンションは尋常じゃない位にあがってしまうのだ。

 タネを明かすと、見出しの写真は神奈川県藤沢市にある「大庭城」の見事な「横堀」を撮影したものだ。「横堀」とは、要するに「お堀」のことで、外敵の侵入を防ぐために地面を掘って築かれた障害物だ。最もメジャーかつお手軽に見れる堀としては、江戸城のものが有名(?)だろう。

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 写真は昨年度々話題となった皇居の出入口付近の堀の写真である。テレビなどで何気なく見ている方も多いと思われるが、この池のようなものは決して見栄えを映えさせるために作られたものではない。城内への強襲を試みる武士達を足止め、殺傷し、粉砕するための防衛設備なのだ。

 江戸城などは現地に行ってみればとても分かりやすく「お城」の構造を観察できるが、日本にある多くの城ではそうはいかない。現状は見出しの写真のように山林と化しているものがほとんどで、言われなければほとんどの方は「城」を発見することはできないだろう。

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 そもそも「城」という漢字は「土」から「成る」と書く。日本に存在するほとんど…99.9パーセントの城は、山の斜面を削ったり、地面をせっせと掘って窪地をつくったりして構成されている。一般的にイメージされる、白亜の天守や壮麗な石垣を備えている城は、ほんの一握りにも満たない「SSR」な代物だ。

 そんな訳で私は雑木林なんだか竹林なんだかよく分からない「城」へ行って、縄張り図片手に窪地やこんもりした土塊を見て写真を撮ったり感慨にふけっているのである。

 もし「○○城跡公園」という名前の公園に入って、公園の隅っこの雑木林の周りを歩き回ったり、叢林をかき分けてガサガサとやっている不審な人を見かけたらそっとしておいて欲しい。恐らくその人は「城」を見にやってきたのだろう。

 しまいには住宅地の中にある雑木林や、神社の敷地内にある溝や土のマウントでさえ「城」に見えてくる。もうここまで来れば普通の人からしたら正気の沙汰ではない。

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 この写真に写っているのも「土塁」という立派な防衛施設だ。偶然神社の境内の中で発見したものだが、半信半疑で写真をパシャパシャと撮っていたら案内パンフレットに土塁と明記されているのを見つけて狂喜したのを覚えている。

 ここまでくると恐らく普通の方と見えている景色が違うようになってくる。これは同業者の方々なら分かってもらえると思うが、とにかく見えないものが見えるようになってくるのだ。

 これが更に極まると本当にこの世に存在しないはずの城が見えるようになってきてしまうのだが、この問題はまた別の機会に書こうかなと思う。

 まだまだ書きたいことはあるのだが、気長に少しずつ書いて記事にしていきたいと思う。はじめての記事でとっちらかった内容になってしまったが、とにかくここでは「城」がどんなものなのか、私が趣味でどんなことをやっているのか、ひいては私がどんな人間なのかを何となく感じて頂ければ幸いだと思う。

 ある城の研究者の方の言葉を借りれば、城というものは恐ろしい魅力を秘めた先人たちの「足搔きの跡」なのだ。

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